攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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愛にすべてを─できる限りを尽くして─

 聖剣の管理権を、ステラから神奈川さんへと移譲する。言うのは簡単だけど行うのはとにかく難しいと言うか前例のないことだ。

 何しろ神奈川さんは非能力者だからね。能力者だったらスキル《聖剣》を継承させれば良いのだ──といってもこれもまた難易度の高い処理だ──けれど、そもそもステータスを持たない神奈川さんにポンと渡すわけにもいかない。

 

 しかしてステラはそれを、とんでもない方法でクリアしようとしている。

 俺やアルマをして絶句させるほどに覚悟の決まったそのやり方を、彼女は愛する神奈川さんへとしっかりと説明していった。

 

『つまりね、千尋。────、そうすればあなたはオペレータとして覚醒できる』

「ちょ、ちょっと待て……! それ、お前はどうなるんだステラ? さらっと言ってるけどとんでもないことじゃないのか、それは!?」

『大丈夫。要は────────だけだから。ただ、そうなるとあなたは、今まで通りのあなたとは違うモノになってしまうけれど……』

「そんなことはどうでも良いんだ。ステラ……俺の傍にいてくれるよな? 俺とともに、生きていってくれるんだよな?」

 

 何度聞いても、その手があったか! とはならずにそこまでするのか……と若干、背筋を寒くしてしまうようなやり方だ。

 ここまでのことをするなんて、神奈川さんという愛する人がいるステラくらいしかしない気もするほどだよ、現状。

 

 ただ、精霊知能が非能力者を能力者として覚醒させるやり方としてはこれが一番手っ取り早く、そして確実だろう。

 一体につき一人にしかできないという制限はあるけどそこは瑣末な話だ、そもそもやりたくない子のほうが間違いなく大多数だろうからね。

 つまりはステラは特例中の特例、やはりある意味、異端な精霊知能だという証拠といえよう。

 

 話を聞いた神奈川さんが、自身がどうなるというところについては大した反応も示さずただ、ステラの行く末を案じている。

 こちらもこちらで大概だ……"そう"なってしまうと間違いなく自身の今後も変わるだろうに、一切頓着せず彼女のことだけを心配している。

 

 なるほど、ベストパートナーだ。お互いにお互いしか目に入ってない。神奈川さんは表面上こそ周囲を見れているけれど、本質のところではステラと大差なく一途で情熱的ってわけだ。

 そんな彼の心配に、瞳を潤ませながらうなずくステラ。けれどやはり不安げな神奈川さんに、俺からもフォローは入れておくか。

 

「ステラについては大丈夫、心配は無用です」

「や、山形さん」

「そのやり方はたしかにステラの存在そのものを変質させますが、本質的なところは変わりありません。もちろん、あなたの目の前からいなくなることや、話せなくなるようなこともない。ただ、あなたの身に起きる変化は大きいですが……」

「それはいいんだ。ステラと出会って拾った命、開けた人生と運命だ。ステラに寄り添いともに生きられるなら、俺は……この世のどんなものだって構わない」

 

 やはり自分のことについては無頓着というか、とにかくステラを失いさえしなければそれで良い、と断言する。

 この人の来歴からすれば無理もないことなのかも知れないな……家族もなく、借金まみれで危うく殺されそうになっていたところを、ステラと出会って救われた経緯はまさしく運命的だ。

 

 そんな成り行きだからこそ、ステラがやると決めたことが、ステラを失わない範疇でのことならこの人は何であれ構わないんだろう。

 たとえ自分自身が大きく変質しても。これまでのすべてを脱ぎ捨て、新たな存在に変わるとしても。ステラを愛する神奈川千尋という本質だけは、変わらないのだと知っているから。

 

 瞳を閉じて、彼が語る。

 

「世のこと、すべて上手くいかない……だからこそできる限りを尽くすんだ。それはどんな命、敵だろうが味方だろうが一緒だと信じている。ステラもそうだ。この提案は彼女に今、できる限りのすべてだと思う」

「そう、ですね。彼女に打てる手の中でも最高の、そして最善の一手かもしれません」

「だったら俺も、できる限りを尽くすよ。そしてステラと添い遂げる。この胸に宿るもの、愛にすべてを捧げたい」

 

 愛を胸に。愛を信じて、愛に殉じる。力強く宣言した彼の、強さが眩しくて俺は目を細める。

 強い……心が、本当に強い。艱難辛苦の人生を歩み、なおもって絶望せずに運命を切り拓いたヒトの、逞しさを感じる。

 

 この人なら聖剣を託せるし、ステラのこともお願いできる。

 最終確認のつもりで尋ねた俺に、予想をも超えた応えが返ってきた。もはや俺にも迷いはない、きっと今ここを見ているワールドプロセッサもそうだろう。

 神奈川千尋には、ステラと聖剣を担う資格があるんだ。

 

「ありがとうございます、神奈川さん。今のお言葉を聞き、あなたになら聖剣を任せられると確信しました。たとえどんな結果が待ち受けていようと、俺は最後まで見届けましょう」

『千尋……ありがとう、私を信じて愛してくれて。私も同じ気持ちだよ、愛してるよ、千尋……!!』

「こっちのセリフだ、ステラ。愛してる……!!」

 

 互いに愛を叫ぶ神奈川さんとステラ。

 きっと、俺はこの瞬間をずっと覚えているだろう。コマンドプロンプトたる私をして、互いを想い合うことの素晴らしさを感じさせてくれたこの二人の、この姿をな。




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