攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
いよいよ明確に見えてきた、ダンジョン聖教過激派のサークル残党の混成集団との決戦。
舞台はおそらく首都近郊の採石場、やつらの本拠地と思われる地点。プレーローマ・アンドヴァリはもちろんのこと、ウーロゴスやスレイブモンスター、サークル幹部勢の海方陸や瀬川聡太も出張ってくることが予想された。
で、そうなると地味に厄介なのがAMWだ。特に海方のマキシムとミレニアムは、地形を一時的にでも変質させるほどの威力を持つ。
瀬川も瀬川で御自慢の無敵バリアに加えて速度に大幅なブーストをかけるノイエヴァルキリーを持っているから、乱戦になるとやりたい放題し始める可能性さえある。
プレーローマ・アンドヴァリやウーロゴスの相手を主に俺やシステム側の存在が受け持つつもりでいることもあり、やつらの相手は主にアンジェさんチームがすることになるだろう。
味方の強さを信じてはいるものの、やはり一抹の不安が過って俺は、顎に手を当て呻くようにつぶやいた。
「せめてAMWさえなかったらな……悪魔憑きの上にさらに上乗せで凶悪な武器を持ってるってのが厄介極まりないですね」
「あたり一面を凍りつかせる出力の《氷魔導》の銃弾を放つマキシムとミレニアム……保持者の身体能力を向上させるだけのノイエヴァルキリーに比べてもやはり、海方のほうが数段厄介でしょう。さすが、かつてはアイオーンことロナルド・エミールくんが愛用したAMWです」
「ああ、言ってましたねたしか。第七次モンスターハザードの英雄の愛用品だったとか」
昔からの縁もあってか、ソフィアさんとしては特にマキシムとミレニアムを危険視しているみたいだ。まあ、知り合いが使っていたって武器が今度は敵の手に渡ってるんだものな。
味方だった頃はさぞかし頼れる性能だったろう、瞬時にあたり一面を凍りつかせるなんて並大抵の威力じゃない。
海方でそれなんだから、S級探査者のエミールさんが使えばもっととんでもない事象を引き起こしているだろうことは間違いない。
第七次モンスターハザードにおいて仲間だったらしいその人を懐かしむようにしつつも、翻って今この状況を危険視しているソフィアさんが俺をじっと見つめてくる。
真剣な眼差しだ。
「プレーローマ・アンドヴァリやウーロゴスを山形様はじめシステム領域におまかせする以上、我々人類側は我々の力だけでAMWを突破し、悪魔憑きの幹部達をも打倒するつもりでいます。みなさまのお力添えにばかり頼っているようでは、大ダンジョン時代の100年が泣きます」
「泣きはしないと思いますが、そう言ってくださるのは心強いです。やはり人間同士の戦いであるなら、システム領域は関与を最低限とするに越したことはありませんからね」
「ええ……ですが現状、やはりAMWがどこまで我々に影響してくるかが不明瞭なところはあります。ですのでこちらも、マキシムとミレニアムに対する切り札を切ることにしました」
唐突な宣言。この人をして切り札と言わしめる人材なり要素なりが、このタイミングで戦線に投入されるのか?
それだけAMWを恐れているってのも少し驚きなんだけど、だからこそ打てる手を打とうってことなんだろう。
けれど一体、その切り札とは何を指しているのか。
気になる俺に、続けてWSO統括理事は告げた──二丁拳銃マキシムとミレニアムへのカウンター。すなわち海方陸を制するだけの力を持つ、とても強力な探査者の名前を。
「先程申しましたそのロナルド・エミール……S級探査者アイオーンの名でも知られる太平洋の英雄を招集し、マキシムとミレニアムを持つ海方陸の相手を任せます」
「た、太平洋からS級探査者を呼び寄せるんですか!?」
「ノイエヴァルキリーの瀬川聡太についてはアンジェリーナ・フランソワやシェン・ランレイ、そして神奈川千尋に任せますが、マキシムとミレニアムについては専門家に任せるべきと判断しました。何しろかつて使っていた愛銃なのですから、彼以上に対処に適した探査者はいません」
「実力的にも、ベナウィさんに匹敵するS級最強クラス……海方一人に相当な大盤振る舞いですけど、それだけあのAMWは脅威的なわけですね」
驚きつつも確認する俺に、ソフィアさんは静かにうなずく。
ロナルド・エミール。ベナウィさんの世代の代表とも言うべきS級探査者で、なんでもサウダーデさん同様に太平洋ダンジョンの探査に取り組んでいらっしゃるという世界屈指の実力者と聞く。
そして何よりかつては第七次モンスターハザードの折、マキシムとミレニアムの所持者だった彼であるなら、なるほど今現在の使用者である海方にぶつけるにはこれ以上ない方ではあるんだろう。
いやでもだいぶ大盤振る舞いじゃないかな!?
怖ぁ……日本のワルをピンポイントでとっちめに、わざわざ太平洋からS級が来るよ。それだけのことをやらかしてるとはいえ、海方に合掌する思いを禁じ得ないよ。
サウダーデさん、ベナウィさんに続き海の向こうからやってくるS級の気配に、俺は敵ながらサークル残党のトップだろう男に心のなかで南無南無と唱えた。
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