攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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大ダンジョン時代もそれ相応に闇が深い……!

「実のところ、今回の招集については向こう……ロナルドくんのほうから打診があったんです」

 

 まさかのS級探査者ロナルド・エミールさんの来日。ピンポイントに海方陸のみを狙い撃っての投入に驚くほかない俺へと、ソフィアさんはことの経緯を説明してくれた。

 そもそもソフィアさんからの話ではなくどこからか事態を聞きつけたエミールさんのほうから、彼女に協力したいという連絡があったらしい。

 

「太平洋客船都市も情報通はいますから。マキシムとミレニアムが犯罪者の手に渡っていると知った彼が、サウダーデさんやベナウィさんからも話を聞きつつ、それなら自分が相手をしたい、と連絡してきまして」

「アグレッシブですね、ずいぶん……」

「"自分と妻を繋げてくれた絆を悪用する輩を赦せない"、と……彼のパートナー、エマ・エミールさんは元々ウラノス社員なんですよ。少年時代の彼にマキシムとミレニアムを渡した縁で付き合い始め、今では太平洋でも有数のおしどり夫婦ですとか」

「そ、そうなんですか。それは動くのも分かります」

 

 怖ぁ……参戦理由が思ったよりガチじゃん。自分と、自分の愛する人を繋げてくれた武器を悪事に利用しているやつがいるなんて人によってはそりゃ、直接出向いて叩きのめそうとするよね。

 元より倶楽部案件から8月いっぱいまで参戦していてくれたサウダーデさんやベナウィさんともつながりがあるならなおのことだ。詳しい話だってあのお二人から聞けるだろうし、そうでなくとも意外に太平洋客船都市の情報網はすごいみたいだし。

 

 ともあれS級探査者が一人、やって来て俺達に加勢してくれるわけだね。

 これは極めて心強い。個人的にも現代探査者界の頂点の一人を生で見られるかもしれないわけだし、ミーハー心が疼く疼く。

 

 サインとかもらえそうならもらっちゃおー! なんてことを考えていると、ソフィアさんがちなみに、と言ってきた。

 エミールさんについて、なんでもない軽い調子でだけどとんでもないことを告げてきたのだ。

 

「そのロナルドくんなのですが、驚かせると良くないですし山形様にはあらかじめお伝えしておきますね……彼は元々、委員会関連の人体実験組織だったノインノア・ジェネシスの被害者です」

「……え?」

「第七次モンスターハザードの際に壊滅したその組織によって、彼は体内にモンスターの因子を組み込まれました。"改造兵器人間"製造実験の成功例……ゆえに彼は、身体の一部分をモンスターのものに変化させる能力を持っています」

「な…………ん、ですって!?」

 

 驚くべき情報。エミールさんの来歴というか、正体というか。その人もまた、青樹さん同様に委員会関連組織による人体実験の被験者だったのか!?

 改造兵器人間……字面だけでも吐き気がするほどにおぞましいソレの影響で、彼はモンスターの因子を埋め込まれた、と?

 

 そんな馬鹿な。モンスターの因子を取り出すなんて技術自体も無茶苦茶なのに、あまつさえそれを人間に埋め込んだなんて。

 寝耳に水も良いところな話に、思わず血の気が引く思いでソフィアさんを見る。もちろん彼女は真剣で、ジョークを言っている様子でもない。

 

「そんな、ことが。どうやって、そんなことを」

「25年前の時点では、技術の出所は終ぞ分かりませんでしたが今なら察せます……やはり委員会の概念存在達による入れ知恵かもしれないと。ダンジョンコアを加工改変したり、人造能力者関連の計画を行ったりしているあのモノ達ならば、あるいはモンスターの要素を人間に埋め込むことすらできるかもしれません」

「委員会……どこまでも悪辣なことを。本当にどこのどういう連中なんだ、やつらは」

 

 歴史のなかで繰り返される悪意の所業。

 大ダンジョン時代特有の現象を、どうにかあらゆる方向から悪用せんとする委員会であればなるほど、どんなことをしでかしていたって不思議じゃない。

 

 ないけれど……あまりに惨い話だ。エミールさんの味わった艱難辛苦を想い、やるせなさを抱く。

 青樹さんといい、シャルロットさんといいエミールさんといい。人の悪意によって翻弄される人達には正直、かける言葉が見つからないよ。

 短く、けれど深いため息を吐いて俺は静かに瞑想した。称号効果で気持ちを落ち着かせて、気分をどうにか切り替える。

 

「……ふぅ。ありがとうございます、ソフィアさん。事前に聞いていなかったら、もしかしたらエミールさんに対して知らず知らず大変な失礼を働いていたかもしれません」

「ロナルドくんも今はそうした自分の来歴や性質を、肯定的とまでは言いませんがコンプレックスには思っていないようですから。このような話をしておいてなんですが山形様も、あまり気にしすぎないであげてください」

「そう、ですね。ご本人がそう望まれるのであれば、俺としてもそのように振る舞いますよ」

 

 極めてセンシティブな事情。誰彼話すことでないにせよ、立場上俺なりシステム領域の者達は知っておいてもいいかも知れないことかもしれない。

 だから先んじて教えてくれたソフィアさんには感謝だ……ちなみに他の精霊知能やワールドプロセッサは、エミールさんについて知ってるのかな?

 

「あの、このことについてシステム領域はどこまで把握してるか御存知ですか? 報告とか、したりしてました?」

「ええ、はいヴァールのほうから一応。ただ、ワールドプロセッサ様的にはシステム管理上、特段問題視する話でもないとは聞いております」

「あー……まあ、システム面の観点からいくとねえ……」

 

 身も蓋もない話に閉口する。

 ワールドプロセッサの物言いはこの際、言っちゃうと正しいところはあるんだよなあ。

 

 モンスターの因子を人間に埋め込む実験があるとかないとか、たしかに人間基準で言うと大事もいいところだし、概念存在達が眼をつけるのもわからなくもないんだけれど……

 邪悪なる思念へ対抗するのに必死だったシステム領域としては、さすがに気にしてられなかったところはあるだろうからね。

 捨て置くとまではいかずとも、問題視するほどでもないって判断するのは至極当然と言えるのが辛いところではあるよ。




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