攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ロナルド・エミールさんの急遽来日の報せと彼の来歴、そして特殊能力についてソフィアさんと話をしてから数日後。
東クォーツ高校の放課後、俺は文化祭の準備ってことで演劇で扱う小道具の製作に取り組んでいた。
すなわち演目"勇者関口物語"の作中で扱う、なんかこう背景とかの草とか森とかああいうやつを作っているのだ。
調達してきた段ボールをハサミで切って成形し、絵の具やらで色を塗りたくって整えるわけだね。
「段ボールに色を塗るのって、なんか不思議な感じするよね」
「普段しねえもんなー、こんなこと。そもそも絵の具とか自体そんな使わんし」
「それな」
俺と松田くんと片岡くん、要はいつもの仲良し男子三人で駄弁りながら作業する。
何から何までめったにしないような作業だもんで、おっかなびっくり感はつきまとうもののおおむねスムーズに作れてるんじゃないかと思うね。
この演目、タイトルからして分かる通り主役は関口くんで、彼の探査者としての活躍を描いた内容の完全オリジナル脚本だ。
まあ、内容はひたすらダンジョンを潜ってモンスターを倒す関口くんというもので、何故かダンジョンの最奥に魔王的なボスが待ち構えているというものではあるんだけど……総じて娯楽に特化したものになるんじゃないかなって思うかな。
そんなだから今、作っているのもダンジョンの中身を意識したものだ。
土塊イメージの茶色をベースに、地形情報を読み取ったダンジョンってのも想定して草や木のような緑色のも作っている。おおむね裏方の、気楽なポジションでの作業だね。なおも話しつつペンキを塗り塗り。
「実際、ダンジョンってどんな感じなんだよ山形。探査者ドラマにあるようなのって実はレアだって前、聞いた覚えがあるけど」
「レア……ってほどでもないかな? まあ割合としては少ないかも。大半は特になにもない、坑道みたいな土の床と壁がずーっと続くばかりだよ」
「夏休みのプールの時も言ってたなあ。暗くて狭いところだったら俺は無理かも」
ダンジョン関係の小道具を作っているってこともあり、話の内容はもっぱらダンジョンについてだ。
一応俺なんかは本職の探査者だからね。興味津々に聞いてくる松田くんと片岡くんに併せて、周囲で作業しているクラスメイトの何人かも好奇心からこちらに目を向けている。
世間一般のダンジョンのイメージは実のところ、地形情報を読み取っているものに偏っていたりする。
探査者を主題にしたドラマでの印象が強いんだけど、画的に映えるからってことで個性的なダンジョンを探査する映像ばかりがお茶の間に浸透しているんだね。
もちろん実際は大半がただの土だ。地形情報を読み取る現象も割合としてはなくもない、レアとまでは言わないかもくらいにはあるんだけど、それでも俺くらいの頻度でも週に二つ三つその手のダンジョンに出くわすかな? ってレベルだ。
だから薄暗がりだったりするし、灯りなんかを常備しているのはそれでだよーって話をするとみんな、へぇーって感嘆の息を漏らしてくれた。
「やっぱ本当のところはそんな感じなんだなあ……ドラマだと毎度毎回、厳しい環境のなかで現れるモンスターをみんなでギリギリ切り抜けていくみたいな話が多いんだけど。そこんとこもどうなのかな」
「厳しい環境はともかく……モンスターについても、毎度毎回苦戦するようなギリギリのダンジョンには入らなくても良い制度だからねえ。探査者とダンジョン、モンスターにそれぞれ級による区分があるのもそのためだよ」
「あ、それは分かるぜ! F級探査者がA級ダンジョンに入ったりはできなくて、自分の級に合わせたダンジョンに潜ってるんだろ?」
「そう。探査者とモンスターはF級からS級まで、ダンジョンはA級までって設定されてるよ」
等級による探査者やモンスター、そしてダンジョンの区分。これについては新規探査者教育の時に受けた説明そのまんまなんだけど、個人的にもよくここまで整備したなって感心する制度だ。
ヴァールやソフィアさん、マリーさんやエリスさんから以前に少しだけ話を聞かせてもらったんだけど、これっていうのが50年前に作られたものだという。
それまでの半世紀の間はそのへんの査定がいい加減だったため、いわゆるミスマッチングによる不幸が結構な数あったらしく、そうした状況を改善するために導入されたらしいんだね。
まあ、これによって探査者のなかで明確な上下意識が生まれたって批判する声もあるみたいだけれど……でもまあ、それ以前にも年功序列によるハラスメントが横行してたって話だし、そこまで影響してない気もするから難しいところだ。
「S級ダンジョンがないのは、S級モンスターってのが地上に出て被害を及ぼす大規模なやつで、基本ダンジョン内にいることがないからってことだね」
「そしてそのS級モンスターをやっつけられる強さを持つのがS級探査者! ってわけだな。すげえよなあ、中二心が疼くぜ」
「なんならそのS級探査者と何人も知り合いな山形もすごいわ。やっぱサインとかもらったのか」
「もち。めでたく我が家の家宝です」
S級探査者とS級モンスターという、これこそ特殊な枠組みだろうところまで説明した上でピースして人脈をアピールしちゃう。へへへ、もちろんサインはもらってますよ。
マリーさん、ベナウィさん、サウダーデさん、エリスさん、香苗さんも。後はS級ではないけどソフィアさんやリンちゃん、アンジェさんにランレイさんからもいただいてるね。
やっぱりそのへんの有名どころになるとサインもちゃんとサインなんだよな、感心するわマジで。
なんならリンちゃんなんて"いずれ世界が私に気づくから"って理由で探査者になる前からサインの練習をしてたとか。怖ぁ……でもさすがだよね。
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