攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ワールドプロセッサ「武器はあなたに似合わない」(白々しい笑顔)

 梨沙さんとのやり取りもそこそこに、俺は関口くんの殺陣を少しばかり見学する。

 と言って、何か口出しできるわけでもないんだけどなあ……俺、剣っていうか武器全般が使えないし。

 

「実のところ俺、称号効果で武器全般の習熟が禁じられてるから。剣とか槍とか持ったって門外漢も良いところなんだよね」

「え!? ……ああー。なんか春先にちらっと聞いたなそう言えば。お前のなんだっけ、ぼっちスキルに並んで話題になってたわ、素手でしか戦えない新米探査者ってさ」

「ぼっちスキル言うなようー」

 

 関口くんにカミングアウトしたところ、すでに聞いたことがあるのか微妙な反応と謂れなき誹謗中傷が返ってきた。今はもうぼっち違いますし!

 春先、つまりは俺のデビューしたての頃。《風さえ吹かない荒野を行くよ》と並んで話題になったのが実のところ、その武器使用禁止称号だったりするのだ。

 

 

 称号 武器はあなたに似合わない

 解説 心得よ。あなたの戦いは、傷つけ殺すためにあらず

 効果 武器使用時、熟練度上昇停止

 

 

 こういうやつね。今見るとあまりに露骨すぎてふざけんなお前とワールドプロセッサに言いたくなるやつだこれ。

 名前から解説から効果に至るまで、何がなんでも俺に武器で戦わせたくない、素手でモンスターと戦わせたいという強い意志をひしひしと感じるよ。

 

 今となっては分かるんだけどこれっていうのがつまり、アドミニストレータとしての俺の使命を十全に果たさせるための措置だったんだよね。

 すなわちモンスターに宿る、異世界の魂達の浄化……それこそは武器に依らず素手でしか行えないからこその、武器使用禁止なわけだ。

 

 当時の俺はまたしても何も知らない一般新人探査者山形公平15歳くんだったので、そのへん一々説明するには何もかもが足りなかった。

 結局、そのへんの事情が詳らかにされたのが夏前、リーベから真相を明かされたあたりだからね。そこからはさほど間を置かず、邪悪なる思念との最終決戦からの俺ちゃんコマンドプロンプトへの覚醒とノンステップだったな、割と。

 

 ともかく、そんなわけで俺に武器は使えないし扱えない。持つことはできるし振るうこともできるけど、いつまで経っても素人同然なのだ。

 それを踏まえた上で俺は、だったらと関口くんに告げる。

 

「剣の扱いについてはアレだけど、体捌きや足捌きはちょっとくらいは意見出しはできるかも。さっきの型、ちょっとステップが小刻み過ぎた気はするかなーって」

「アレか? せっかくだしモンスター相手想定ってことで、いつも使いの勇者剣を使うイメージだったんだけど」

「分かる。インパクトカウンターとインパルスカウンターだっけ、動きだけだけど使ってたよね」

「さすがに分かるか……」

 

 剣周りはともかく、体術に関係した足の動きなどには口出しできる。先程の殺陣、関口くんは完全にモンスターを仮想的に見立てた動きをしていた。

 彼が使う技はカウンター特化だ──威力重視のインパクトカウンターと、速度重視のインパルスカウンター。いずれも重要なのが敵の攻撃に合わせるタイミングで、それだけに足捌きは重要になってくる。

 

 モンスターとの間合い、攻撃に対する位置取り。あとタイミングを合わせてのステップなどなど。

 カウンター戦法がそもそも相手の動きを前提とする技術を要するわけなので、即応できるだけの身体能力と体捌きが必要不可欠なわけだね。

 

 今さっきの関口くんの殺陣はそれを意識していたものの、若干小刻みにステップを踏みすぎていてタイミングが取りづらそうに見えた。

 なので俺が思う、より適した足の動きを再現してみようか……彼の代わりに立ち、足元を指しながら示す。

 

「カウンターを取るんならもう少しゆるいペースで、このくらいかな? とん、とん、とーん、と。攻撃を引き付けつつ対応するイメージで」

「ん……さっきのはとんとん、とんとんって感じにしてたけど、そっちだときついか?」

「やってみようか。とんとん、とんとん、とんとん──っと。細かく刻むことで小回りは利くけど、体勢取りづらそうに見えたよ」

 

 モンスターがニ回攻撃してくると仮定してステップを踏む。普段の俺ならまずしない、敵を引き付けつつ攻撃のタイミングを探る足踏みだ。

 一歩目下がり、ニ歩目横に跳び、三歩目で踏み込む。このうちニ歩目と三歩目は状況次第だけれど、カウンターを取るという性質上、一歩目はまず確実に後ろに下がる形になるかな。

 

 ついでとばかりにさっきの関口くんのも再現してみる。

 ステップ多めにして角度やタイミングの微調整を図れるようにしてるんだろうけど、シンプルに工数が増えているから姿勢制御に手間を食って、逆にタイミングが取りづらいように俺には思えた。

 そこを指摘すると顎に手を当てた関口くんが、なるほど……とうなずく。

 

「そうか、それか。探査中も微妙にタイミングズレることがあるんだよな。なんでかと思ってたんだが、足数が最適化されてないから無駄な動きになってるんだな」

「たぶん理想的な形でカウンターを取りたいって心理からだと思うけど、戦闘中にそんな理想形なんてなかなか実現しないんだし妥協はしても良いかもだよ。むしろどんな体勢からでも放てるような技を作るほうが値打あるかもだし」

「なるほどなあ……こうか? とん、とん、とーん、っと。ふむふむ」

 

 理解を示してくれたようで、俺の言葉を取り入れていくらかステップを改良してみる関口くん。

 前より格段に良くなっていく彼の立ち回りを、その後しばらくの間俺とクラスメイト、あと関口くんファンのガールズ達は眺めていた。




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