攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「──かくかくしかじかこしたんたん、と。まあそんな感じだよ、探査者としての生活はもちろんのこと、学生としての生活もしっかり謳歌できてるとは思うかな、自分でも」
「なるほど、なるほど。当世の人間の子らの生活というのもなかなか愉しげなもののようで何よりですね」
週末の土曜日。俺の家からはいくらか離れた繁華街を抜けた先にある、大きなマンションの最上階層は最も見晴らしの良い部屋。
謁見の間と呼ばれる広々したリビングのテーブルに着席している俺は、キッチンから持ってきたコップにジュースを注いで俺に渡してくる彼と語らっていた。
部屋を、いいや最上階層そのものをまるっと買い取って君臨しているアロハシャツ姿のダンディな男だ。
SNSでは結構な頻度でやり取りしていたものの直に会うのは久しぶりで、挨拶もそこそこに日頃の生活について尋ねられたため、当たり障りのないところだけだが話していたのである。
織田と名乗るその男は、実のところ北欧神話圏の大神オーディンだ。戦神でもあり嵐の神でもあり、本来は現世に現れるはずもないような押しも押されもせぬ最高神。
そんな彼は大ダンジョン時代、とりわけ俺を目当てにアバターを駆りやって来た。そして俺と何度かの接触と交渉の末、システム領域と概念領域を橋渡しする役目を担ってくれているのだった。
渋いおじさんアバターながら、アロハシャツがド派手だからか茶目っ気をも感じさせる。控えめに言ってモテる中年って感じの彼は、俺からの話を受けて満足そうに鷹揚にうなずいた。
「この宇宙、いえありとあらゆるすべての真の造物主とも言えるコマンドプロンプト。その転生体たるあなたが人間としてどのように暮らしているのか、予てより知りたくはありましたが……クククッ。何やら聞いていて面映ゆい気持ちになりますね」
「え。そ、そうかな」
「上位存在どころでない、完全なる至高存在がまるで人がましく人の暮らしを、営みを楽しみ過ごしている。しかも人間らしさを備えながらも、決定的に本質的なところではやはり造物主としての視点を備えつつです。興味深くて仕方ありませんよ、あなたはまさしく"向こう"と"こちら"の境界線、そのちょうど真上に立っているのですから」
ずいぶん大袈裟なことを言って、肩を揺らして笑う。この最高神、何かにつけて今の俺をはじめとするシステム領域の在り方に興味を抱いては面白がってるなあ。
神話上において智慧に貪欲というだけのことはあり、なんでも知りたがりなのがこの大神の良いところであり悪いところでもある。
まあ、そのおかげでこちらとしては概念存在側に心強い味方を作ることができたわけだし、一概にどうこう言えたことじゃないんだけどね。
そんな彼からしてみれば、俺の現状は大層興味深いみたいでしきりに笑みを浮かべている。
なんでも良いんだけど、そろそろ本題に入りたいところだなあ……そんな苦笑いを浮かべると察してきたのか、織田はやんわりと俺を手で制してきた。
穏やかな声で告げる。
「ククク、いえ失礼。取り留めもなくなるので雑談はこのあたりでお開きとしましょう。今日は何しろ、いろいろ話さなければならないことがありますからね」
「うん、そうだな……俺からはプレーローマ・アンドヴァリについてと委員会、それと捕縛した悪魔オノスケリスの保護について。そちらからは」
「サークルとダンジョン聖教過激派を巡る騒動を受けての概念存在の現状、動きについてですね。とはいえ、あなたからは事前にメールでいろいろお教えいただいていますから、議論というより確認に近い話し合いになりましょうが」
お互いに今日は情報共有するべきことがあってのこの話し合いの場だ。多少の雑談は、先にやることやってからするべきだろう。
織田もそこはもちろん承知で、俺に語りかけてくる。オーシャンビューならぬレイクビュー。うちの県が誇る湖を臨む素晴らしい景色を楽しめるこの謁見の間のテーブル、俺の対面に織田は座った。
彼にはすでに、認定式からこちらに至るまでに起きたことは概ね説明済みだ。ウーロゴスはもちろんのこと、サークルの顛末と残党の存在、悪魔との対話。
そして何よりプレーローマ・アンドヴァリ──火野アレクサンドラについてまで。さすがの織田もアレクサンドラの正体と目的については驚きを禁じ得なかったようで、今もワインを軽く飲んでから、好奇心を顕にしてやつについて語ろうとしていた。
「他についてはどうあれ、アレクサンドラ・ハイネンの正体と目的、そして変生については驚きましたね。プレーローマ・アンドヴァリ──プレーローマとはまた、おかしなネーミングをしたものです」
「ああ、なんかあれだろ? 神の力全般を指すグノーシス主義の語句だとかなんとか。俺も調べたけど、なんでそんな言葉を使うんだろうな?」
「かの思想はある種、既存の神の否定と真なる上位存在についてを示唆したものです。そこに彼女がなんらかのインスピレーション、またはシンパシーを感じているのかもしれませんね。何しろ、神の力を取り込んで自らが神になろうというのですから」
プレーローマ・アンドヴァリという名前からも、織田はアレクサンドラの思うところを見出そうとしているみたいだ。
俺も軽くながら調べたんだけど、プレーローマってのが元々、キリスト教から派生した思想に由来する言葉みたいなんだよね。
その意味は"神の力"そのものらしく、元々のアンドヴァリにウーロゴスという神の権能が合わさったことからそういうネーミングになったんだろうなーってざっくりした解釈をしていたんだけど。
ただ、織田はそこからさらに踏み込んでアレクサンドラの思想について考察しているみたいだ。神の否定と真の上位存在への想い──自らを神たらんとするあの女の行動には、神という存在への思惑もあるのかも知れないわけだね。
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