攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

1482 / 2050
永遠は、ないよ。少なくともそこには、ないよ

 プレーローマ・アンドヴァリへの警戒を滲ませる俺に、織田もそれ相応に危機感を抱いたようで、先程よりはいくぶん、笑顔を引っ込めてこちらを伺っている。

 仮にやつが、自身の願う永遠なる存在になった場合。いつかは確実に概念領域にまで影響を及ぼしにかかるわけなので、他人事と笑ってもいられないからだろうな。

 

 永遠の命──それをもってこの星の、宇宙の、世界の終わりを見届けること。それこそが自身の願いであり野望であり目的であると言ったアレクサンドラ。

 その一念でここまでのことをしてのけたのはもはや、一周回って感嘆すらしてしまいそうになるけれど。残念ながらどうあがいてもやつの願いは、どこかで挫折することになるだろう。

 いや、変質か。

 

「永遠の命なんてものを得て、人を捨てて。そこまでやって自分が変わらずにいられるとでも思っているんでしょうかね。そのアレクサンドラなるヒトの娘は」

「実感がないうちはどうしても、な……気付いた時にはもうどうにもならない。100年か1000年か、万年でも億年でも関係ない。見たがっているモノを見る前のどこかの段階で、あの女は必ずそれを忘れてしまうだろうな」

 

 呆れの色濃い織田のつぶやきを肯定する。まあ、つまりはそういうことだ。

 死ねない命。終わりない魂でもその質は必ず変わる。精神性を人間のままにこの世の終わりまで生きていけるようには、心ってものはできちゃいないんだ。

 

 言ってしまえばエリスさんやソフィアさんだって、このまま現世を彷徨く生き方が億年と続けば、確実にいくらでも精神を変質させるだろう。

 それは自然の摂理だし、ある種の防衛本能の為せるものと思えば悪いことでもない。そもそも、普通に生きて死ぬ人間だってその生のうちにいくらでも変わるんだからね。

 

 だからこそ、プレーローマ・アンドヴァリに対してもこう言うしかない……どうして自分だけ、そういう変化が訪れないと断言できるんだと。

 概念存在になったから、なんてなんの理由にもならない。そもそも人間から別のナニカに変わったんなら、それこそ心だって変わっていくだろう。

 

 あいつは自信たっぷりに今の自分なら夢の果てに辿り着ける気でいたけれど、俺達からすればそんなわけあるかよって話でしかなかった。

 織田が、肩をすくめて語る。

 

「概念存在をずいぶん高く見積もっているようですね、その女は。イメージに引っ張られる胡乱な存在でもある我々とて、結局永遠などには程遠いというものを」

「一切変わらない精神性、在り方。そういうものは現状、やはりシステム領域にしかあり得ないだろうさ……真実を知らないプレーローマ・アンドヴァリに、そこまで理解しろと言うのはあまりに酷だけど」

「そこまでいかずとも、気付くべきではあったでしょう。永遠などどこにもないとね。クククク」

 

 結局のところ、永遠なんてどこにもないってことなんだろう。

 現世の命も概念存在も、意思の変化は避けようがない。それが生きるということだし、そうすることで世界は少しずつ前に進んでいくのだから。

 

 アレクサンドラはそこを分かっていない。そして理解せぬまま子供の頃の夢を求めて、そして半ば辿り着いてしまったんだ。

 幻想の永遠を、幻想と気付かず手にしてしまった幼子。それがプレーローマ・アンドヴァリこと火野アレクサンドラの正体かもしれなかった。

 

 

『永遠なんてないとかって物言いは断固として否定するけど、あのバカ女の愚行については同意するよ公平。あれほどの馬鹿はなかなかいない。傑作だよ、嗤う気にもならないくらいにどうしようもないね』

 

 

 脳内のアルマさんもコメントをしてくるけれど、いつもならそれなりに面白そうにしてそうなのが今はいかにも真顔って感じだ。こりゃ、マジで面白くなさそうだな。

 こいつこそ、真の意味で完璧を求める過程で永遠さえ求めたやつだしな。そのために出した犠牲、やらかした規模なんて今回の事件がミジンコに思えるレベルだ。

 

 終わりなどない自分を求めたのは両者同じながら、アレクサンドラにはまったく共感してないようだ。

 そこにどのくらい同族嫌悪が混じってるのかは知らないけれど、やはりかつてワールドプロセッサだったこいつの目から見ても、あの女がやったことは愚行でしかないってことだな。

 

 織田にも、アルマにも、俺にも。

 否定されるしかないアレクサンドラに、俺はため息混じりに言及する。

 

「はあ……まあ、そういう観点からもさ。できる限りやつの取り込んだウーロゴスは取り除きたいって俺は考えてる。ミュトスのためだけじゃなく、アレクサンドラ自身のためにも」

「お人好しですねえ。あなた個人の感覚としては、あれが永遠の中でどうなろうかどうでもいいのでは?」

「コマンドプロンプトとしてはね。山形公平としてはやっぱり、それでも助けられるうちは助けたい。人として、人の法に則った償いをしてほしくもあるから」

 

 願いのままにヒトを止めたやつを、そのまま好き放題させたままにさせておくものか。

 ウーロゴスとミュトスのことはもちろん、シャルロットさんの件もあるし、少しならずの憐憫なんかもある。だから何がなんでもやつには人間に戻ってもらわなければならないのだ。




本日コミカライズ版スキルがポエミー更新!
下記URLよりご覧いただけますのでよろしくお願いしますー

「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー

【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!

コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 pash-up!様
 ( https://pash-up.jp/content/00001924 )
 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
 
 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
 よろしくお願いしますー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。