攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
いろんな料理を少しずつ味わうようなイメージで、フルコースを隅から隅まで楽しむ俺。
テーブルマナーについてはあまり詳しくないので織田には相当お目溢ししてもらっていたとは思うんだけど、お互いカジュアルな雰囲気で雑談にも花が咲き、意外なまでに楽しい会食の場となっていた。
「ほう……それではその、アイとやらがそろそろWSOのマスコットとして全世界に公開されると。元々モンスターであることを考えると、かなりの英断ですね」
「まあね。でもアイは今はもう無害な生物だし、俺のスキルによって再構成されたことで寿命も相当長いからさ。俺が生きている間に、少しでもあの子の居場所を作ってあげたいかなーって思って」
魚料理の、なんかソテーみたいなやつを美味しくいただいて次、肉料理のステーキを味わいながら語るのは我が家の真なるマスコット、ミニチュアドラゴンのアイのことだ。
夏休みに入った頃から予定されていた、WSOの公式マスコットとしてのデビューがいよいよ近づいてきており、そのことについて織田と軽く話している。
ぶっちゃけ、そんな話もあったねーみたいなノリで、今日に至るまでに倶楽部やらサークルやらダンジョン聖教過激派やらの問題もあってすっかり忘れていたんだけれど、ソフィアさんとヴァールは普通に覚えていて手続きなんかも済ませていたらしく。
そろそろ話を詰めたいのでアイを連れて来てくれと、ヴァール直々のメッセージが届いたわけである。
ドラゴンという、紛うことなきモンスターであるアイを社会に示すことによる反響がどんなことになるかは正直、微妙なところだ。
邪悪なる思念が消えて数ヶ月。モンスターが穏やかに、というか敵意はあれど殺意がなくなっているという報告は各地の探査者から続々報告が上がっているようで、ニュースやワイドショーなんかでも異変として取り沙汰されたりしている。
中にはモンスターと親しくってほどじゃないけど多少の意思疎通を交わす者さえいるらしく、ちょくちょくモンスターとツーショット写真をネットに晒してバズったり炎上したりしている光景も目に映るようになってきた。
どうあれ探査者の使命はモンスターを倒すことなので最終的には敵対しているんだけど、それはそれとしてバズる道具として利用しだす人達がちょっとずつ出現しているみたいなんだよね。
「モンスターと探査者の関係が、少しずつ変化していくかも知れない……いやまあ、それでも最終的には探査者がモンスターを倒すってのは変わりないけど。そこにプラスアルファが生まれてくるかも知れない。そんなこれからの社会の象徴として、アイは活躍してくれるかもなあ」
「ふむ? ある種の共存関係にまで至ることもありえますかね、果たして」
「さすがにそれはないよ。殺意がなくなったと言っても、基本的にモンスターの根底にあるのは邪悪なる思念だ。宿痾とも言うべき敵意が彼らの中に根ざしている限り、どうしたって相容れないモノだからね」
『この世界のあらゆるものを喰らい尽くす、それそのものを存在意義として生成プログラムを組んだ以上仲良しこよしなんてあり得ない。あのチビドラゴンが特殊極まるだけだからねえ』
織田の問いかけに答える俺の、脳内ですべての張本人たるアルマさんも見解を独り言としてぼやいた。
こいつが、邪悪なる思念がその魂のみを残して綺麗さっぱりこの世から消えたあとでも、名残は呪いめいて世界に存在している。
モンスター生成プログラム……大ダンジョン時代の根幹を成す、異世界の魂を変質変生させて現出させるシステム・アプリケーションもその一つだ。
今なお秒単位で世界の何処かに生成されるダンジョン。元を糺せばそれは、自動生成され続けるモンスターをそこに閉じ込めてオペレータに討たせるためのある種の檻のような役割を持っている。
ぶっちゃけダンジョンのほうはともかく、モンスターについてはシステム領域でも完全制御しきれてないんだよ。
邪悪なる思念が遺した生成プログラムがデータ領域内に存在していて、しかもワールドプロセッサでも干渉できないほどに高度に複雑かつ独自のコードが組まれているから手が出せないんだ。
仮に干渉できたなら、一息にモンスター生成じゃなくて浄化と輪廻転生へ導くプログラムに改変するものを。複数の世界を喰らったリソースをきっちり注ぎ込んでいるから、この世界の存在では太刀打ちできないのが質が悪い。
いや、厳密にはやろうと思えばできるかもなんだけど……罷り間違ってバグとか起きたら、マジで洒落にならないことになるから迂闊なことができないのだ。
うっかり現世地上に毎秒スタンピードが発生する不具合が起きちゃいましたー、なんてなったらもう目も当てられないし。
一応それでも精霊知能達によるスクリプト解読と解析は行われているけど、はっきり言って作業が終わるまでに異世界の魂すべてがオペレータの手で浄化されて輪廻に受け入れられるだろうペースだ。
精霊知能達のスペックをもってしてもそうなってしまうくらい、今俺の脳内にいる馬鹿野郎は全力で件のプログラムを構築していたのである。
『アレばかりは今のお前らにもどうにもできないだろうし、気分は少しだけ晴れるよね! 精々チマチマと数百年かけて回りくどい方法で僕が喰らってきたすべてを浄化するといいさ、へへん!!』
当の本人はこれだ、まるで反省の色がないんだからな、まったく。
ま、ともあれそういう次第で今後数百年続くだろう現世の後始末の時代において、変遷する社会の中でアイのマスコット化はもしかしたら重要な意味を持つかも知れないということだった。
「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー
【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!
コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
pash-up!様
( https://pash-up.jp/content/00001924 )
はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
よろしくお願いしますー!