攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
フルコースに舌鼓を打ち、腹も結構満腹になって満足しきりの午後を迎えて。さすがに話すべきことも話し終えたし、俺はそろそろ帰ろうかと織田に別れの挨拶を告げていた。
さすがにこれ以上長居するのも悪いしね、こんなご馳走までいただいといて今さらなんだよって話ではあるけどもさ。
「今日も有意義な話し合いができたよ。ありがとう織田……オーディン。オノスケリスのこと、まあほどほどによろしく頼むよ」
「ええ、お任せください。こちらこそ楽しい話し合いでした、繰り返しになりますがあなたとの語らいは知的好奇心を刺激されて実に心地よい」
「そう言ってもらえて助かる。みなさんも今日は、ありがとうございました」
エレベータの前、織田と握手を交わす。イヴさんや従者の方々もわざわざ引き連れて、みなさんで盛大にお見送りだ。至れり尽くせりだなあ。
食事も本当に美味しかったし、脳内のアルマも量はともかくクオリティは文句なしと言ってるし。
定期的に織田とはこうして会談することになってるけど、その度にグルメを楽しめるなら日々の楽しみが一つ増えたかもしれないね。
ちょっとしたウキウキ気分でイヴさん達にも礼をする。
従者のみなさんともちょっとした顔見知りみたいになってきているし、結構気さくな方々が多いもんで気圧されつつも、多少は仲良くさせてもらってると思う。
また、ノリはあんまり合わないけども。
主君の盟約相手ってことで下にも置かない扱いではあるものの、元々荒ぶる戦士だって方が多いようで根本的なところのノリがバリバリ体育会系なんだよね。
正直ウェーイ系よりも怖いまである。良い人達なのは分かってるけども、どうにも魂にまで染み付いた陰キャぼっち気質がががが!
と、内心戯けたことを言っている間に一人、メイド服の戦乙女イヴさんが一歩前に出た。
クールで冷淡な無表情だけど、どこか熱を帯びた視線で俺を見てくる。なんだなんだ?
「もったいない御言葉です山形様。先日には私の不手際から大変なご迷惑をおかけしましたこと、改めて心よりお詫び申し上げます。申しわけありませんでした」
「先日……悪魔アガレスの時間停止のことですよね? あんなの、対応できるほうがおかしいんですからどうか気になさらないでください。いつもこの周辺を警備してくださっていること、一住民としてこちらこそ感謝しています」
どうやら先日の、時間停止をしてまで俺に直接仕掛けてきた悪魔アガレスの一件がいろいろ、イヴさんにとってはターニングポイントだったらしい。
戦乙女として、時間を止められたとはいえ容易く防衛網を突破されたってところを相当気にしているみたいだね。
正直な話、アガレスについては別にイヴさんが力不足だったってわけでもないから本当に気にしないでほしいよなあ。
時間停止の権能なんて使われたら、そりゃ普通突破されるに決まってる。たまたま俺がコマンドプロンプトだったから容易く対処できたってだけで、概念存在ならそのほとんどが同じようにやられてたと思うんだよね。
それでもやはり、本人的にはどうしても悔しい思いがあるのかも知れない。
冷淡な感じの顔つきに後悔や、忸怩たる想いさえ覗かせる憂いを乗せて……彼女は俺をまっすぐ見て、言うのだった。
「そう言っていただけるならば光栄です……ですが、すみません。不躾ながらこの機会にぜひ、お頼みしたいことがあります」
「? ええと、なんでしょうか」
「……もしよければでしたら、定期的に私に稽古をつけてくださいませんか? 時間停止の悪魔を退けた手腕、ぜひともご教授願いたいのですが」
「えっ」
「レギンレイヴ……?」
ずずい! と。いきなり突然な提案を持ちかけてきながらさらに一歩詰め寄ってくるメイドさん。え、何これ怖ぁ……
唐突な話に目を白黒させる俺。他の従者さんはなんか目を丸くしたり納得してたり、はたまた笑顔を浮かべていたりと様々だ。彼らも知らなかったのか、この提案?
なんなら織田すら少しばかり驚いてる様子で、おそらく彼にすら事前に知らされていなかったんだろう。
なんの脈絡もない提案に、眉をひそめて彼はイヴさんを窘め始めた。怒っているわけでもなく困惑しているだけなあたり、度量が広いというかさすがに寛容なところあるよねー。
「控えよレギンレイヴ。なんのつもりだ、お前がなぜ彼に師事を乞う……いかなる心境ゆえか、答えよ」
「畏れ多くも偉大なる大神オーディンにお答えするならば、すべては我が戦乙女としての名誉と尊厳のためにございます。先般、この地の守護を仰せつかっていたにも関わらず悪魔ごときの権能に容易く突破され、あまつさえ山形様のお手を煩わせる始末……これではヴァルキリー・レギンレイヴの名が泣きます」
「それで、件の悪魔を直接仕留めた彼からものを教わりたいと言うのか。せめて事前に私に言うべきとは考えなかったのか?」
「……申しわけありません。瀬戸際まで悩み、迷っていたのです」
アガレスを直接制圧した俺に師事したいのだと、クールな顔つきとは裏腹に熱の篭った口振りで彼女は事情を話してくる。
自身にとって造物主に近い存在ですらあるオーディンの詰問に対してもなお、申しわけなさげにしつつも凛とした表情で強い意志を示しているほどだ。
生半可な思いじゃないぞ、これは……
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