攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
急に弟子入り志願……と言って良いのか、とにかく俺から戦闘について学びたいと前のめりに頼み込んできたイヴさん。
根底にあるのはやはり先日の、悪魔アガレスの一件らしいんだけれど。ぶっちゃけそのへんの話になると俺としても判断に迷うところはあった。
要は時間停止への対策法を教えて欲しいってのが話の肝だと解釈できるんだけど、権能の仕様上、そこはもうどうしようもない。
気合やら技術やらで防げるようなものでない領分だし、できるならできる、できないならできないですっぱり分かれてる分野なんだよね。
たとえば純粋な戦闘力とか戦い方についてなら、多少は俺からもアドバイスなりなんなりで力になれるところはあるかも知れない。
けれどさすがに、時間停止の権能を破る方法だとか言われてもなあ。特定の手順を踏めば破れます、みたいなノウハウがあるわけじゃなく純粋な魂の格が物を言う部分だから、そこについてはなんとも教えがたいのだ。
そのへんの事情、対時間停止の方法を教えて欲しいとかならさすがに無理だよと言うのを先んじて伝えてみる。
織田もなるほどとうなずく中、それでもイヴさんは食い下がるような必死さを纏わせて俺に言うのだった。
「時間停止のみならず。戦乙女として、己を超える強さを持つ戦士を見た以上は何もしないではいられません。思い立ったならば即座に動くべしと、この心に従い動いた次第です。ですのでどうか、私に教えをくださいませ」
「えぇ……?」
「ワルキューレとしての性が出たか……すみません山形公平。戦乙女とはこれこの通り、ひとたび見込んだ戦士となると大体の場合、前のめりになるものでして。ここは一つ、軽くアドバイス程度でいいので応じてやってはもらえませんか?」
「織田まで!? いやまあ、俺としては困ってそうなら力になるけど……」
あまりの必死さに見かねたか、織田まで苦笑いして頼んでくる始末。
どうもワルキューレ、戦乙女としての性質によるものらしいから仕方ないのだろうけど、ずいぶん思い切ったな。
イヴさんは現状、織田の現世生活を支える使用人さん達のトップでありかつ、彼の身の安全を護る実質的なボディーガードでもある。
そんな人に、わざわざ北欧神話とは無関係の盟約関係ってだけな俺に弟子入りするのを後押しするとは……
困惑していると、彼はむしろあっけらかんと続けて語る。
「私はもちろんのこと、受肉した以上はレギンレイヴはじめ我が従者達も当然、今この時ばかりは現世の一員です。であれば、現世の影響を積極的に受けに行くことも善い行いと言えましょう……それに何より、戦乙女がより強くなるのは願ってもないことですから」
「元より私は織田様の命を受け、現世に干渉する概念存在を相手取る任務にも就いております。ゆえに私は今以上、これ以上に強さを磨き使命を果たすべく努力していく義務があります。山形様に教えを乞うのも、そのためとお思いいただければ幸いです」
「そ、そうなんだ……まあ、俺としてもイヴさんには、この町の概念存在を見張ってもらってるし。日頃世話になってるとは言えるからなあ」
ある意味、現世での生活のために強さを求めるってのは理解できる。
なんならその結果俺としても、この町に変なのがちょっかいを出してくるのを防げるってんなら決して悪い話でもない。
今日のことも含め、織田以下北欧神話の方々には世話になってるしなあ。
師匠とか弟子ってのはどうも上下っぽくて嫌だからあくまでアドバイザーみたいな形にしたいけど、それで良いなら多少は話を聞いても良い気がしてくる。
しかも織田としては、さらにもう一手思惑があるようでやたらと含み笑いを漏らしている。
イヴさんと俺を見比べての、どこかこう、下世話な感じの視線だ。なんかイヤーな予感がするぞ。
「……加えてレギンレイヴとあなたの師弟関係が成立すれば、それは畢竟"あなた方"と我々との同盟関係もより強固なものになるでしょう。ああ、ともすればあなたのハーレムに加わることもあるやもしれません。実にめでたいことです」
「えっ……いや、ハーレム? あの、織田さん?」
「力ある戦士の愛妾となるは戦乙女の本懐の一つです。私としましても望むところ、いかなるご期待にも全身全霊をもってお応えいたしましょう」
「イヴさん!? いやちょっと待って誤解ですけど! なんで急にハーレム!?」
ほら見ろ、なんかとんでもないこと言い出した! 未成年相手に不埒なこと言うのやめろや!
なんならイヴさんもクールながら妙に鼻息荒いし。なんかふんすふんす言ってるし。なんで乗り気なんだよおかしいだろ普通に考えて!
またしても出てくるハーレム救世主疑惑、よもやのオーディンにまで認知されてるんですけど怖ぁ……
自分の従者さえ躊躇なく差し出す姿は、なんともはや老獪すぎて恐ろしいよねこの最高神。俺は必死に身振り手振りでそれちゃう誤解! とアピールした。
「どっからそんなデタラメ吹き込まれた!? ハーレムとか嘘だし愛妾とかもいらないよ、イヴさんにちょっとアドバイスすれば良いんだろ!? やるよやりますよ!」
「いやはや失敬。あなたのことが書かれたゴシップ記事はなかなか読み応えがありますからね。クククク……ありがとうございます山形公平、レギンレイヴをよろしく頼みます」
「ありがとうございます、山形様。あなた様の内弟子として、粉骨砕身努力いたします」
「だから弟子でもないですよ……えぇ……?」
織田は口振りからもジョークだってのは分かるんだけど、なまじ冷淡だからイヴさんの機嫌が読めない。
結局内弟子とか自称しだしてるし、ちょっと不思議なワルキューレだなあいろいろ。
なし崩し的に弟子、ではなくあくまでちょっとアドバイスするだけの方を迎え入れることになってしまった。
これ、リーベあたりが聞いたらまた変な反応するんだろうなあ……
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