攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ワームホールを抜けて、空間転移した先はテントの中だった。
長机とパイプ椅子がいくつか置いてあり、いくらか紙の束も雑多に乗っていたりする、なんだか作戦本部って感じの場所だ。
その長机の一番奥の席に、一人の女性が座っている。金の長髪をウェーフがからせた、ゴスロリ風のドレスを身に着けた美少女。けれどその表情は西洋人形よりも無表情で冷淡だ。
WSO統括理事ソフィア・チェーホワの裏人格、精霊知能ヴァール。今回も最終決戦の指揮を執るだろう大ダンジョン時代の守護者が、俺達を待ち構えていた。
「よく来てくれた、山形公平。後釜にシャーリヒッタにミュトスも」
「ヴァールもお疲れ様。どうだ状況は、なんか緊急事態とかあった?」
「あればこのようなところで寛いではいないさ。一々ホテルに出入りするのも手間ということで現場捜査組の詰所として用意したこのテント……度々私も使うが、空間転移先としてもそれなりに有用だな」
淡々と話すヴァール。どうやらこのテント、現地捜査班の詰所らしい。
たしかに空間転移用にワームホールを繋げる先としては便利だね。ホテル内だと出入りする時、許可は取ってるみたいだけどホテルの従業員さんに見咎められないか気まずいし。
さておき彼女に連れられてテントを出る。首都圏中心にある駅のすぐ近くの公園に設置されているテントで、周辺はおまわりさんや探査者の人達が結構いて、いずれも忙しなく動き回っている。
緊急事態こそ起きてないみたいだけれど、やっぱり犯罪組織との最終決戦間近ってことでいろいろ段取りを組むのに大変みたいだ。
その中を悠々と歩くヴァールに誰もが敬礼を返す。WSO統括理事である彼女を、誰もが畏怖して敬慕しているかのように。
やっぱすごいな、永遠の探査者少女は……と内心で感心していると、そのヴァールが歩きがてら話を始めた。
今日と、それから明日の決戦までの流れについての説明だ。
「ホテルにチェックインしてもらった後は、予定通り大会議室での作戦会議を執り行う。WSOエージェント、能力者犯罪捜査官および日本警察と個人協力の探査者による合同会議だ。そしてそこで、明朝に行う敵本拠地への突入についての段取りを説明する手筈だ」
「いよいよだな……敵に変わった動きとかも見られないのか? こちらの情報が漏れているとか」
「今のところは特にないな。いやむしろ連中の活動はここ半月ほど確認できていない。いくつかアジトにも踏み込んだが、まったくのもぬけの殻だった。サークル残党も、過激派の構成員も一人とて見つかっていない」
「不気味だなァ、おい……何考えてんだ、まさか今頃になって尻尾巻いて逃げたってわけでもねえだろうによォ」
ここに来て鳴りを潜めているらしい、プレーローマ・アンドヴァリ以下過激派とサークル残党の不気味さが怖い。シャーリヒッタも眉をひそめて疑問を呈している。
サークル壊滅後も継続して連中の拠点については捜査が行われており、何人か構成員を逮捕できたりしているとは聞いていたんだけど、ここに来て一気にもぬけの殻が増えたってのはいかにも不穏だな。
まさか逃げたなんてことはないだろう、さすがに。
日本国だってここまでやられた以上、絶対に逃亡なんて許さないし何がなんでも捕まえる腹積もりでいるはずだ。
何より、今回の件どころか倶楽部案件の黒幕でさえあるプレーローマ・アンドヴァリが絶対に逃げるはずがない。
力を得て有頂天になっているだろうし、しかも恨み骨髄のエリスさんや俺が相手だからね。
……いや俺とばっちりすぎん? エリスさんも大概逆恨みの被害者だけど、俺なんて完全に無関係ゾーンにいるのに殺意持たれてるじゃん。
俺なんかしちゃいました? どころじゃないよ、俺なんもしてないんですけど!? と盛大に言いたい。切に。
歩くこと10分ほどして見えてきた、首都圏ではすっかり馴染み感が出てきた高級ホテルに入り、チェックインする。
認定式の頃は各国のお偉いさんも宿泊していたこのホテルだけど、今や完全にWSO関係者による貸切状態となっている。相当お金を払っているんだろうね、さすがは世界最大の国際組織だやることが違うよ。
エレベータに乗る。
シャーリヒッタの話を引き継いで、ヴァールが思うところを述べた。
「むしろ向こう方も、戦力を集結させているのは間違いないだろうな……認定式の時点で勝負はついていたが、それでも引くに引けないならば総力戦を行うしかない」
「連中も次が最終決戦のつもりってことですね! ……あの、明朝本拠地に向かったら待ち構えられていた、なんてことありますかね?」
「無いとは言い切れまい。アレクサンドラの頭脳と性格を考えれば、こちらの策を読み切った上で逆手に取るくらいはしてきてもおかしくない」
「話を聞く限り、認めるのは癪ですけど敵ながら優秀みたいですしねー。公平さんから二度も逃げきってる時点で分かりきってましたけど、厄介ですねー」
こちらの動きを気取られている、なんてことも普通にありえるから今度の敵、アレクサンドラは厄介極まる。
用意周到にして執念深く頭脳明晰、そして何より悪辣な性格と権能。味方だったらさぞかし頼れただろうけど、敵ともなるとこんなに面倒な相手もなかなかいないよ。
リーベをして厄介だと言わせるあの女のことだから、すでに総力を挙げての最終決戦フェーズだというのは察しているだろうしな。
明け方に寝込みを襲う、なんてのはさすがに望み薄かもしれない。似たようなことをヴァールも苦々しく呟いていた。
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