【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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女子たちの特に理由のない言葉が山形を襲う!

 新しく獲得したスキル《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》と、それに付随して来た称号《魂を救う者》。その二つについて、ステータスで示されたところを伝えたら、御堂さんもさっきまでの俺同様、フリーズしてしまった。

 無理もない。もはやこの数日で恒例になっちゃった感じはあるけど、こんな話聞いたことないってことの連続だからな。

 

 冷静に考えると、《魂を救う者》の効果は分からなくもない。何かしらの技術についての習熟速度が上昇する効果ってのは割合、よくあるやつだ。

 ただなあ……格闘技術のそれってなるとたしか、こんな、何の脈絡もない名称やら解説やらではなかったと思うんだよね。

 とはいえまあ、そんなわけでこっちはまだ納得はいかなくもない。

 

 問題はスキルの方だ。《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》。

 こっちはもう、何もかもおかしい。何一つ理解できない。

 

「『モンスターおよび邪悪なる思念への特効付与』って何ぃ……」

「──読んで字の如し、なのかもしれません」

「あっ、御堂さんが復活した」

「失礼しました、あまりにも衝撃的すぎまして」

 

 分かるよ……こんなん想定の範囲外だ。

 どうにか再起動した御堂さんと、ひとまず落ち着くべく俺たちは歩き出す。とりあえずダンジョン出て、喫茶店ででも話しすっべとなったのだ。

 

 帰り道は急ぎゆえ、無駄話もなく静かなもんだ。

 でも俺の隣、なんでか手を握っている御堂さんの、瞳が爛々と輝いている。ヒーローショーを見る子供の目と言えばオブラートに包めているだろうか? 率直に言うとね、狂信者が神を見つけた目。

 顔も真っ赤にして俺をチラチラ見てるし、手汗すげえし、興奮してんのか熱気でいい匂いがムワッてくるし。さっさと娑婆に出て清らかな空気を吸わないと俺まで変な気分になりそう。

 

 そんなわけでダンジョンを出ました。途端、消える穴ぼこ。

 不思議な現象だわ本当。ダンジョンって何なんだろうね、自然現象にしては不自然さのすごいことすごいこと。

 もしかしたらシステムさんはその辺のことについて、俺に何かをさせたがっている可能性もあるのかな。嫌だな……面倒事は。

 もう既に面倒の中心に据えられている感すごいんだもんよ、これ以上は勘弁してほしい。そんなことを思いつつ、御堂さんと手を離す。

 

「あっ……」

「えーっと。とりあえず商店街に喫茶店あったと思いますし、そこに行きましょうか。新スキルのよく分からない効果についても、ちょっと相談したいですし」

「は、はい。もちろんですけど公平くん、手を繋ぎましょう?」

「なんで……?」

 

 さすがに往来で年上のリクルートスーツ美女とお手々繋いで練り歩くのは無理。家も学校も近いんだし、誰かに見つかったらマジで洒落にならん。

 どうにか言い包めて喫茶店へ向かう。ダンジョン踏破後のあれやこれや事務的な手続きは、報告さえすれば後は組合の方で諸々やってくれるので、俺としては後腐れなくその場を立ち去れる。

 時刻は昼過ぎ15時頃。サクッとダンジョンに入ってサクッと踏破したことになるな。

 

「あれ、山形くん?」

「んー?」

 

 ふと呼び止められる。見ると、クラスメイトの女子たちがいた。制服姿のまま、集団でゾロゾロいる。

 今日は半ドンだったし、親睦も兼ねて女子会でもしてたんかね? 男子はそういうのなさそうだからアレだけど、仲良いよね女子って。

 立ち止まり会釈する。

 

「や、お揃いで。男子もいるの?」

「いないよ〜。女子会、女子会!」

「山形くんは? 何してんの? そっちの美人さん誰?」

「もしかして彼女とか!?」

「キャーッ! 嘘、年の差ぁーっ!」

「違うよ、違う。あー、ダンジョン探査でちょっとね。この人は俺の先輩探査者さんなの」

 

 連れ立っている俺と御堂さんに何かを感じたのか、女子の何人かが囃し立ててくる。3人どころか10人以上もいたらそりゃあ、姦しいよなあ。

 何人か昼前、俺と御堂さんと関口くんのやり取りを見ていた周囲に混じっていた顔がいる。どうせもうバレるのも時間の問題なので、ここは一つ恥を被る気持ちでカミングアウトがてら御堂さんとの間柄を説明しよう。

 御堂さんも俺の意を汲んで、自己紹介してくれるみたいだ。

 

「A級探査者、御堂香苗です。公平……失敬、山形くんとは先輩後輩の関係にはなりますが、私としてはそのようなことは気にせず、一人の人間として接してほしいと思いますね」

「えっ……御堂香苗さんって、あの?」

「テレビで見たことある! うわうわ、ゆーめーじーん?!」

「ていうか山形、マジで探査者なんだな」

「関口くんと比べるとちょっと、頼りなさそうじゃない?」

「あは、それな」

 

 やっぱり御堂さんは有名人みたいで、気付いた女子を皮切りにどよめきと黄色い声が上がる。俺が探査者だってことは二の次、三の次くらいの扱いになって助かる。変に持ち上げられるのはもう、御堂さんだけでいいかなって。

 ああでも陰で頼りないとか言うの止めて? せめて俺が去ってからにして?

 女の子怖ぁ。そう思う俺なのでした。


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