攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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火野老人はジャンル的にはサイコホラーっすよね

 翌朝……というにはいささか早すぎる秋の深夜2時。きっちり目が覚めた俺は軽くシャワーを浴びてさっぱりした心地で、準備を整えてホテルのフロントにまで向かった。

 しんと静まり返った丑の刻のホテル内がめちゃくちゃ怖い。いや気配から察するに探査者のみなさんも普通に起きて集結しつつあるんだけどね? それはそれとして薄暗い通路って光景にはゾッとするものを感じるんだよ。

 

「和製ホラーで見たことあるやつだこれ、怖ぁ……」

『ホラーねえ……現世からすればシステム領域の存在が一番のホラーだろうに何を情けなく震えてるんだか。ていうか君ならよく分からん思念体とか出てきたって秒殺できるだろ、一々怖がるなよ』

「そういう実際問題とは無関係なんだよっ。お前人の心とかないのか……?」

『ワールドプロセッサ捕まえて人の心を説くやつ初めて見た。あるわけないだろ、そんなもの』

 

 脳内のアルマさんの茶化しに結構本気で反論する。

 あのね、実際に幽霊とかゾンビとか肉塊の化物が出てきたってどうとでもできるのはそれはそうなんだけど、そういう問題じゃないんだよなあ心ってのは!

 

 たとえ害がないし実際起きたら秒で返り討ちにするけど、映像作品として怖いものは怖いの。だからホラー映画とかは怖いの。

 そういうことを語って言い聞かせるんだけど、アルマさんときたらてんでどこ吹く風で呆れ返った様子だ。ワールドプロセッサですしおすしってのはまあ、言われたらそうですよねーとしか返せなくはあるけども。

 

 さておき、なんか出てきそうな通路をおっかなびっくりそそくさ抜けてエレベータに乗って一階へ。

 こういうシチュエーションもなんか出てきそうでやだなー、早く見知った顔に出会いたいよ。そう思っていたら途中の階でエレベータが止まった。誰か乗るみたいだね、気配を感じるのでオペレータみたいだ。

 ドアが開く。そして、現れたのは。

 

「……む? 山形公平、あなたも一階へ向かうのか。ご一緒させてもらうぞ」

「おおっヴァール! よく来てくれた、もうこれで何も怖くない!」

「何の話だ!?」

 

 ウェーブがかった金の長髪。西洋人形さながらの整った、けれど無表情な顔つきの美少女。

 WSO統括理事ソフィア・チェーホワの裏人格。精霊知能ヴァールがいて、そして挨拶しながら入ってきたのだ。

 

 深夜の薄暗いホテルで心強い味方を得たぞ! 思わずテンション高めに迎え入れると、びっくりした彼女が目を丸くしている。

 ごめんね驚かせちゃってと謝りつつかくかくしかじかぐーてんもるげんと説明すると、ヴァールは納得半分呆れ半分で降りていくエレベータのなか、話しかけてくる。

 

「ホラーか。以前にも後釜やシャーリヒッタと見たが、たしかになかなかの迫力だったな。とはいえあなたがそうまで慄くものでないのは間違いないが」

「生理的な、本能的なものなんだよう。お前だってなんかあるだろ? こう、見たり想像したりするだけで鳥肌が立つとかそういうの」

「ふむ? そうだな、エリスにとっての火野のようなものか。そういうのであればワタシにもいくらかある気はするな。実害はないものの、想起するだけで嫌悪感を催すモノ、か。人の心とは複雑だな」

「ひ、火野老人かあ」

 

 生理的嫌悪感を感じさせるもの、で即座に思い浮かぶのがエリスさんと火野の関係性ってのがなんともはや、あの爺さん改めて相当ヤバかったなあと思わせる。

 若い頃に見初めたエリスさんを求めて、それこそ一生かけて犯罪行為に手を染めてきた外道のなかの外道。そこまでしてけれど結局は想い叶わず、当のエリスさん本人に断罪されて笑って法の裁きを受けることになったあの老人は……たしかに、考えるだけでそこはかとなく嫌な気分になるかもだ。

 

 でもちょっと、俺の言ってるホラー的なものとは違う気がするんだよなあー。

 なんてことを言っているうちにエレベータは一階に到着。フロントまで出ると、さすがに深夜でも明るくてかつ大勢のお巡りさんや探査者さんが集結していた。

 良かった、ここまで来ればもう一安心だね!

 

「お? お揃いでおはようございます公平さん、ヴァールさん。エリスさんは今日も今日とてバッチリ元気な御目覚めですよーハッハッハー」

「あ、おはようございますー……」

「おはよう。うむ……元気そうで何よりだ、エリス」

「ハッハッハー。あれ? なんか微妙な反応?」

 

 噂をすればなんとやら。たまたま一番近くにいた知り合い、まさかの今しがた話をしていたエリス・モリガナさんがにこやかな笑みとともに挨拶してきてくれて、俺とヴァールは顔を見合わせてちょっぴりぎこちなくそれに応えた。

 首を傾げる彼女のすぐそばには、マリーさんと神谷さん、加えてシャルロットさんがいて次々会釈してくる。

 

 葵さんがいないのがちょっと意外かな? と、考えていたのがエリスさんにも伝わったのだろう。にこやかな笑顔のまま、少し離れた場所を指さしながら言ってくる。

 

「ちなみに葵はあっち、同年代の子達と友情を深めてるよー。ハッハッハー、あの子もそろそろちょっとずつ、師匠離れしないとねー」

「──今日は張り切って頑張るわよ葵! お婆ちゃんの先輩の弟子にしてあの早瀬光太郎さんの孫娘の実力、きっちり当てにさせてもらうからね!」

「はっはっはー! もちろん任せてくださいよー師匠の顔にもお爺ちゃんの名にも泥なんて塗りません! あ、でもトップランカーほどの力は期待されても困りますので悪しからず」

「ぴ、ぴぃぃぃぃ……陽気なリア充女の子がふ、増えたぁぁぁ……アンジェちゃんタイプは一人だけでもうお腹いっぱいぃぃぃ……」

「えぇ……?」

 

 示された先、いるのはたしかに葵さん。

 同年代……アンジェさんやランレイさんと話をしていた。




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