攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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氷魔法には氷魔法をぶつけるんだよ!

 打ち合わせも終えて、俺達はテントを出ていよいよ件の本拠地へと向かうことになった。先んじて迷宮攻略チームがすでに出発しており、俺達は彼らの後を追う形になる。

 採石場まで1km、てくてく歩いて現場入りだ。最終決戦を前にしてずいぶんのんびりした感じだけれど、俺たちの間に漂う空気はすでに戦場のそれだ。

 

 4時半頃、まだ薄暗い町中を抜けて郊外へ。

 市街地からは多少離れているけどちらほらと民家も並ぶ地域だ。戦火が町に及ぶことなんてあまりないだろうけど、万一のことがあったら大変だな。

 歩きつつも先頭を行くヴァールに問いかける。

 

「地上で戦うとなると近隣の方々が巻き込まれないか心配なんだけど、どうするんだ? 絶対に巻き込むわけにはいかないだろ」

「む? ……もちろんそこは抜かりない。迷宮攻略チームのなかには《防御結界》をはじめとする結界系スキルや防爆、防炎などの防御系スキルを持つ探査者を組み込んである。彼らには主に、戦場となる採石場を外部と分かつ遮断役をやってもらう」

「あとは戦場周辺にも予備の探査者と警察官を配置してるみたいよ、公平。万一外に出ようって輩がいたって突破は難しいんじゃないかしら」

「攻略チームのほうも相当な実力者揃いだからな……S級の最上さんや里見さんも向こうで網張ってるみたいだし」

 

 老婆心ながら周囲への被害に対するケアを問うたところ、きっちりとスキルで戦場を区切るというやり方で対応するとのこと。

 しかもアンジェさんと神奈川さんの補足も踏まえると、万一についてもしっかり考えていて、戦場となる採石場周辺は探査者と警察官で完全に包囲。かつ後詰めには認定式の日にもお会いした日本のS級探査者、最上和之介さんと里見悟さんも参加しているという。

 

 なるほど、万全と言って良い布陣だな。これを突破できるようならそんなやつ、サークルや過激派とは別口で単体で世界の脅威になり得るよ。

 さすがの対応に俺としても納得したし、安心する思いだ。何をおいても普通に生活している人達の、当たり前の日常だけは守らなきゃいけないからね。

 

 ただ、近くで話を聞いていたリーベはそれでも不安を覚えたみたいだった。

 軽く挙手しながらも、俺に続けて質問する。

 

「海方陸の《氷魔法》やマキシムとミレニアムとかもシャットアウトできますかね、それー? こないだのを見るに、結構洒落になってない範囲と威力でしたよー?」

「うむ。たしかにやつのAMWが増幅する《氷魔法》は、あたり一面を凍土化させるほどの異常な威力を持つ。油断はできん。だが……だからこそのロナルド・エミールなのだ、後釜」

 

 人はともかくモンスターはともかく、周辺そのものに対して無差別に影響を及ぼすスキルについてまではおそらく、今言った包囲網では対処しきれないのではないか。

 すなわち海方陸の《氷魔法》、そしてその威力と範囲を大きくブーストする二丁拳銃AMWマキシムとミレニアム。そのあたりについてリーベは特に、危惧しているようだった。

 

 たしかに、以前の決戦で見せたあの威力は驚異的だ。一瞬で湖畔一帯を氷獄へと変えたあのスキルは、時間をかければ対処は可能なものの即時封じ込めというのは難しいかも知れない。

 となると、間違いなく採石場周囲の町や民家、建造物にも影響してしまうだろう。

 

 けれどヴァールはそんな危惧にもすぐさま返答した。

 先ほど連絡を取り合っていた、S級探査者アイオーンことロナルド・エミールさん……彼こそが対海方陸におけるキーパーソンなのだ、と。

 

「彼こそは元々のマキシムとミレニアムの使い手、すなわち《氷魔法》保持者。S級探査者である今、練度は25年前よりはるかに高くかつ、海方の《氷魔法》への対抗策も持っている。これについては話を受けた本人が豪語していたことだがな」

「あー……! 同種同質にしてはるか上位互換のオペレータをカウンターとして持ち出すんですねー! さっすがの用意周到ぶりですねーヴァール!」

「褒めるならソフィアにしてやってくれ。海方にエミールをぶつけるべく話を持ちかけたのは、あの子なのだからな」

 

 ニヤリと、誇らしげにソフィアさんを自慢するように笑うヴァール。海方陸とマキシム・ミレニアムについて、エミールさんへと連絡する判断をしたのはたしかに彼女のほうだったな。

 S級探査者を、贅沢にもたった一人の能力犯罪者への対策として宛てがう判断。AMWという因縁があるにせよ、あまりにも大胆かつ豪勢な話だ。

 

 逆に言えば、WSO統括理事の目から見ても海方の危険度がそれだけ高いということを示唆してもいるわけなので、決して油断はできないけれども。

 それでも明確な対応策がある、というのはとても安心できるし心強いものであるのはたしかだった。

 

「……さあ、見えてきたぞ。未だ睨み合っているのか、まだ本格的なぶつかりはしていないようだが。アレこそはダンジョン聖教過激派の本拠地の入口。今やバリケードに塞がれ護られた、テロ組織の集う敵地だ」

 

 歩くこと10分と少し。いよいよ明確に見えてきたし感じてもきた、能力者同士の対峙と睨み合いの気配。

 未だ戦端は開いていないのか、戦っている様子もないものの一触即発。いつ何がきっかけで衝突するかも知れない、剣呑な状況だ。

 

 今からそこに、俺達も殴り込みをかけることになる。

 怖ぁ……とだけ内心でつぶやいて、俺は決戦の採石場に近づいていった。




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