攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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登場!ロナルド・エミール

 向けられた銃口。マキシムとミレニアムの引き金が引かれようとしていたまさにそのタイミングで、上空からさらなるナニカがやってきた。

 見覚えのある姿と声だ。同時にすさまじい権能の力を持った巨大生物が、俺達とサークル残党の間に割って入る。

 

「ちいっ!? ……《氷魔法》、氷魔結界壁!!」

 

 俺へと狙いを定めていたのを、即座に自分達を護るための行動に転換させる海方の姿を刹那に垣間見る。地面、自らの足下に向けて増幅されているスキルを発動したんだ。

 《氷魔法》。マキシムとミレニアムに充填されており、内蔵ジェネレータに対応しているスキルだな。

 

 放たれたそれはすぐさま効果を発揮する。海方以下サークルの周辺に、ドーム型の分厚い氷の壁を形成したのだ。

 これは……強いな。しかも悪魔の権能をも感じる。スキルブーストジェネレータで増幅させたスキルを、さらに悪魔憑きとしての力でパワーアップさせたのか。

 

 さながら《防御結界》の氷版みたいなドーム状バリア。物理攻撃でこれを突破するには、たとえA級探査者だとしてもそれなりに手間を食うかもしれない。

 だが、それよりと今は眼前に割って入ったモノだ。8本足の軍馬、けたたましい嘶きとともに現われた巨大概念存在。認定式の日に見たその存在の名を、近くにいたシャルロットさんがつぶやいた。

 

「たしか、スレイプニルでしたか。北欧神話は大神オーディンの軍馬。認定式の日にも見た、これほどの存在を喚べる召喚スキルを持つ探査者と言えばただ一人しかいませんね──」

「どうにか間に合ったか! すみません、遅れました……S級探査者愛知九葉、助っ人を連れてただいまより参戦します!!」

「────やはり、愛知九葉でしたか」

「愛知さん!」

 

 現れた軍馬、スレイプニルの背中から、姿を見せる一人の探査者。

 ライダースーツに胸元を開けた大胆な格好の、赤い髪の女性だ。年の頃俺より一つ二つ歳上くらいで、凛とした眼差しでこちらに向かって参戦を表明している。

 

 S級探査者、愛知九葉。

 史上最年少で探査者の頂点層にまで至った本物の天才が、ここに来て間に合ってくれたのだ。

 

 そして。スレイプニルの背中にはさらにオペレータの気配が四つ。

 愛知さんはたしか、この決戦に際して急遽来日したとあるS級探査者を迎えに行っていたんだったな。となると、その人も一緒に乗っているのは道理だろう。

 だけどさらにもう三人、オペレータも同行しているみたいだ。ここからだと微妙に見えないが、誰だ?

 

 ……答えはすぐに分かった。その人達もよく見知った仲だからだ。

 信じられないサプライズゲスト。聞けば誰もが一瞬で悟るだろう雄々しい叫びとに、俺は気づいて目を見開くこととなった。

 

「────サァウダァァァァァァデェェェッ! バトォォォォォォル・ファァァァァァイトォォォォォォッ!!」

「────星界ッ轟竜拳ッ!! しぃぃぃぃぃぃっ! ぃやぁぁぁぁぁぁっ!!」

「っ……!? さ、サウダーデさん!? リンちゃん!?」

「あ、お久しぶりですミスター・公平。私もいますよ、どうもうっかりベナウィです」

 

 全身に燃え盛る焔を纏い、スレイプニルから飛び降りてサークルの氷壁に殴りかかる巨漢。

 蒼炎を放つ脚でもって、同じく氷の分厚い壁に蹴りを放ち続ける、カンフー少女。

 なんなら驚く俺に、ひょこっと馬から顔を出して気軽な挨拶をする長身でスーツ姿のアフリカ系アメリカ人男性。

 いずれも見知った、心強い俺の仲間達だ。

 

 なんでここに?

 8月末、認定式での戦いを終えた後にそれぞれの地元へと帰っていった彼らが、どうしてまた来日してきているんだ?

 

 ……その答えはすぐに分かった。

 スレイプニルから飛び降りて声をかけてくる、その人の言葉によって。

 

「最初は俺だけの予定だったんだけどさ……君とまた肩を並べられるならって、サウダーデさんがいつになく前のめりになってね。しかもベナウィくんやシェンさんにまで、同じ気持ちだろうからって連絡して集まったんだよ。すごい人徳だな、さすが救世主」

「あ、あなたは……」

「っていうか、本当にシャイニングなんだなあ。その上、一目で分かるめちゃくちゃな力だ……変な寒気と暖かみを感じるんだけど、どうやら俺の中にある"因子"はよほど君のことを意識しているみたいだ」

 

 20代前半くらいの見た目をした、若い、けれど白髪の男だ。整った顔立ちにちょっと強気な表情を浮かべたヨーロッパ系の青年。

 けれど漂わせる気配はまったくチグハグなものだ。歴戦の古強者って感じの老成さに、溌剌とした生命力。もっと言うならその奥には何か、ヒトならざるものをも感じさせる。

 いや……はっきり言えばモンスターの気配を強く、匂わせているのが俺には分かった。

 

 おそらくは彼が、ソフィアさんとヴァールが呼び出した助っ人その人なんだろう。

 太平洋ダンジョンを根城にするS級探査者。サウダーデさんの戦友にして、ベナウィさんの世代を代表する大探査者。

 そして四半世紀前には第七次モンスターハザードを解決に導いた、英雄的探査者。

 

「はじめまして、山形公平くん。ソフィア・チェーホワ統括理事とマリアベール・フランソワ特別理事に呼ばれてちょこっとだけ手伝いに来た、S級探査者のロナルド・エミールだ。よろしくな」

 

 その名を、ロナルド・エミール。

 またの名を"アイオーン"と呼ばれているらしいその人は、気さくな笑みを浮かべて俺に挨拶をしてきていた。




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