攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ショートカットできるラストダンジョンとかないから(正論)

 待つこと数分、すぐに仲間達も俺達の後を追って地下迷宮──とは名ばかりの概念領域へと足を踏み入れて再集結した。

 この間、周囲を警戒していたが特に異変らしきものはない。やはり遠くにて戦闘している音が聞こえるくらいで、モンスターはおろか人の影も、概念存在の気配さえもなかったのだ。

 

「ここ、なんだか寒気がするわね……体感気温とかでなく、ホラーな感じというか」

「生きた人間が来ていい場所じゃないですからね、本来ー。まあ領域の外側も外側ですから、普通に活動する分には問題ないと思いますよー」

「ここが、概念領域……概念存在の住まう世界。スレイプニルやラファエルさんも、この迷宮の外に出ればどこかにいるのだろうか」

 

 アンジェさんや愛知さんが口々に、初めて訪れる概念領域の空気、雰囲気について言及する。彼女達だけでなく他の面々もみんな、そこはかとなく走る背筋の寒気やら悪寒に身体を震わせているね。

 これについてはリーベも言ってるけど、本来なら生きた人間がそのまま来てはいけない領域なんだよね。シンプルに異物として入り込んだもんだから、身体が拒否反応を示しているのだ。

 

 魂が、その命を終わらせることで到達できる領域。概念領域。

 死んだ存在はすべてそこに向かい、各人の望むひとときの安寧を得てしばらくしたらまた、魂が輪廻へと向かう。

 生と死のサイクル、その最前線とも言える場所なわけだね。

 

 あまり、長居していていい場所ではない。

 かつては邪悪なる思念との決戦の際、ここよりもっとヤバイところに行った経験があるベナウィさんはそのことを重々承知していたようだった。さっそく足元、地面に向けて手を添えて構えている。

 やる気だな。

 

 俺達も察して多少の距離を取る。さて、ショートカットができるか否か。

 固唾を呑んで見守る。

 

「それでは、いきなりですがやらせてもらいましょうか。《極限極光魔法》──ライトレイ・ピアッシングマグナム!!」

 

 放たれるスキル。ベナウィさんの《極限極光魔法》が、すさまじい光を放ち迷宮を穿つ!!

 相変わらず威力は絶大だ、普通の物質であればなんら問題なく床をぶち抜き、壁を崩し、目論見通りショートカット作成はなっているはず。

 

 …………だが。やはりここは概念領域。

 放った攻撃は一切通じず床は床のまま、変わらずその姿を保っていたのだ。

 傷一つすらつかない有様に、さしものベナウィさんも目を丸くして呻いた。

 

「これは……!」

「もしもを期待していたがやはり、無理か……ベナウィの力に問題があるわけではない。だがやはり概念領域のモノに、現世が干渉するのは難しいのだ。それが分かっただけでも儲けものだ、助かったぞ」

 

 悔しがることすら許さないほどの、一切の無反応。ベナウィさんさえも唖然とするその強度は、そもそも単なる耐久力とかって話ですらない。

 概念領域に在るものはすべてが精神的な、概念的なモノだ。ゆえにそれを突き崩すには、概念的なモノへの攻撃を可能にせねばならない。

 

 つまりは現世よろしく単純武力で突き崩す、なんてのは難しいのだ。

 魔天戦時のマリーさんや先程のアンジェさんの一撃ならばいけたかもだけど、アレ程の力をそう容易く出せるわけでもないからね。

 

 まあ一応、じゃあ俺がやるべと軽く山形くんビームを放つ。俺なら概念領域だろうがシステム領域だろうがそんなもん関係ないからね。

 問題なくビームを当てた壁が一部、崩落したものの……すぐ、瞬きすらできないままに修復してしまった。

 

 ああ、こりゃ無理だわ。

 みんなに説明する。

 

「俺やリーベ、ヴァールにシャーリヒッタやミュトスなら破壊までならできますけど、その後が無理ですね。権能を使って超再生能力が付与されてます」

「権能による再生か。山形公平にならばそれも無効化できるだろうが……悪手だな。その力はプレーローマ・アンドヴァリのスキル封印権能を封じるために使ってもらわなければならない」

「ていうかアンタ、軽々とやったわね今の……コーデリアさんで無理だったのに、あんなあっさりと」

「力の有無じゃなく、概念的なものへの理解があるかどうかですからね。それに結局打ち崩せないんじゃ意味はないですし」

 

 サクッと壁破壊をしてみせた俺を、アンジェさんがギョッとした目で見てくるけど正直ね、こればかりは力の強弱とは別の、感覚的な差になってくるから仕方ない。

 だから俺のほうが上ですとかって話には絶対にならない方面だ。そもそも、結局ショートカットに成功してない以上はどうあれ同じことだし。

 

 ヴァールの言うように全力の俺、すなわちコマンドプロンプトとしての因果操作までフルパワーで使った状態の俺ならどうとでもできるんだけど、それだと別の問題が浮上する。

 プレーローマ・アンドヴァリの持つ一番厄介な権能、ウーロゴスの力を用いてのスキル封印の権能への対策が取れなくなるのだ。

 

 そうなると俺と精霊知能以外の全員、S級探査者の人達まで含めてマジでほとんど全員が無力化されてしまう。

 だから俺の因果操作はやつの権能封印に備えて温存しておかないと、せっかくショートカットしたとて意味がなくなるのだった。




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