攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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残る二つの一騎討ち。ミュトスとアレクサンドラ、そして──

 本来ではあり得ない挙動。複数の魔導スキルを同時に発動し、かつそれぞれのスキルの中でも二つの技を並行して使う器用すぎる手際に、こればかりは舌を巻く想いの俺。

 S級探査者だっただけのことはある……この力を素直に世のため人のために使ってくれなかったことへの残念さが、正直なところ沸々と湧き上がってくるよ。

 

 これでシャーリヒッタが出力を半減させてくれていなかったら、さしものミュトスでももっと手こずっていたかもしれない。

 だがそれは裏を返せば、半減されている現状ではここまでやってもなお、アレクサンドラはミュトスの敵にはなり得ないということだ。

 

 容赦なく、災海の力が存分に振るわれる。八本の触手がそれぞれ一本ずつ、《土魔導》の触手を十数本まとめて粉砕して破壊していった。

 

「まさかの触手対決とは驚きましたがここまでです! そもそもの力の差があるんですよっと! あらほらえいさっさー!!」

「っ! どういう威力、私のジオロジカルボイジャー・フェイナーが、フルに防護してなお一撃で粉砕される……!?」

「そのスキル、技がどれだけのものかは分かりませんけど! まあ力尽きるまでやっちゃえば変わりっこないですよね、火野アレクサンドラッ!!」

 

 どこまで行っても結局、スキルはスキルだ。オペレータの力の範疇はどうしたって超えはしない。

 であるならば、断片とは言え三界機構の力の化身とまともにぶつかって勝てるはずがないのだ。天地開闢結界なくとも、かつてのあの三体は紛れもなくワールドプロセッサが変質させられた姿だったのだから。

 

 肉弾戦では断獄に負け、遠距離戦では災海に負け。なんなら空中戦だろうが魔天相手に勝てるわけもなく。アレクサンドラの手札が少しずつ、しかし致命的なまでに確実に削られているのは明白だ。

 この調子なら問題なくミュトスによる制圧は叶うな……油断することはないにせよ見通しの明るさに内心でホッとしつつも、俺は周囲を見回した。

 

「プリズムコール・アークディザスターッ!! ……これでこちらの分身体は終わりです! そちらは!?」

「オーロラ・死なない程度に加減したビーム! ──こちらも問題はありません。うっかりと何人か人間に当てた気もしますが加減はしてますし。ええ、ええ」

「しれっと怖いこと言いましたねー。い、一応《医療光粉》で最低限の治療はしておきますかー」

 

 香苗さんとベナウィさんの二人による広範囲殲滅。

 こちらは恙無く終わったようで、周囲から前方にかけて無数にいたアレクサンドラ分身体は一体とて一欠片とて存在していない。

 

 ただ悪魔憑きも数人巻き込んだようで、命に別状はないもののぐったりしてるのも二人いるな。そっちにはリーベがすっ飛んでいってスキルによる応急措置を施しているね。

 後遺症とかがない程度に、けれど再度抵抗することのない程度の塩梅だ。

 

「はっはっはー! こっちも問題なしでーす! シャーリヒッタさん、お見事な腕前でした!」

「お前さんもなァ、葵! エリスが言うだけあるぜ、頼れる仕事ぶりだ!」

「ハッハッハー、でしょでしょー? なんてったって私の誇りだからね。まだまだ上を目指せるけれど、今でも頼れる私の弟子だよハッハッハー」

 

 雷を纏ったフーロイータで分身体を薙ぎ払った葵さんが、同じく鎌で周囲を一掃したシャーリヒッタ、操ったナイフで的確に敵の数を減らしたエリスさんと健闘を称え合う。

 主に葵さんが活躍していたようだね。今回の件では敵側にもいくつかあったAMWだけど、正義のために使う人だってこっち側にいるんだ。

 

 それはきっと、これから先の世にあってとても意義と価値のある、素晴らしいことだと思う。

 早瀬葵という正義の人がフーロイータを持っていること、俺からしても嬉しく思うよ……師匠のエリスさんもさぞや誇らしいだろうさ。

 

「…………よし、殲滅したな。愛知九葉、助力に感謝する」

「光栄です、統括理事。これで残すは後二人」

「うむ。瀬川聡太と火野アレクサンドラだけだな」

 

 そしてヴァールと愛知さんの二人もまた、それぞれ鎖と喚び出した概念存在を駆使して周辺の敵を倒しきっていた。

 悪魔憑きも分身体もこれにて全滅。残すところは未だ戦いを続ける二組だけになるな。

 

 すなわちミュトスとアレクサンドラ、そして……神奈川さんと瀬川。

 二つの因縁、二つの一騎打ち。シャルロットさんが俺の近くにやってきて、なんでもないように話しかけてきた。

 

「お疲れ様です。取り巻きは瀬川聡太を除き、倒しきったようですね。いよいよ大詰めですか」

「ええ、みたいです。シャルロットさん……アレクサンドラの、スキルじゃないほうの触手はどうなりましたか?」

「今しがたすべてを撃ち落としました。やつもミュトスさんとの戦いにすべてを注力せざるを得ないようで、途中からあきらかにこちらに割くリソースが減っていたように思います。滑稽なまでに必死ですね、ふふ」

「そ、そうですか……」

 

 怖ぁ……冷たく微笑むシャルロットさんから漏れ出る圧がすごい。恨み骨髄な相手が追い詰められてるんだし、分からなくもないけどね。

 一騎打ちの中でダイレクトに追い詰められている以上、他のことにかまけている余裕もないか。つまりアレクサンドラは着実に追い詰められているってことの、明確な証拠だな。

 

 そしてもう一組の一騎打ちも、また。

 神奈川さんと瀬川の戦いに、俺は意識を向けた。




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