攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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それが"世界"の選択か……!!

 アレクサンドラという人間の最奥、身体そのものに宿る魂の領域へとアクセスする。

 あらゆる権能を封印していた、俺自身の権能をも解除してだ……コマンドプロンプトとしての力なくば、魂への干渉は叶わない。

 

「それなりに侵食されているが……! まだ人間の部分は健在だ! アレクサンドラ、お前をそこから掬い上げる!!」

「あああおおおいいいえええ────」

『さすがに神の権能だけあってか、寄生先を取られそうだと本能的に抵抗もするようだなあ。因果を持たない力のみの存在からの攻撃。さてどうする、コマンドプロンプト?』

 

 俺からの感覚では、3割ほどがウーロゴスに乗っ取られてマーブルになっている魂の残り7割に手を付ける。間違っても侵食されていない部分に傷をつけないように、ギリギリの境界線を切り取り、保護するのだ。

 言うまでもなく超高難易度な作業だ。概念存在であっても魂に干渉できるけど、ここまで繊細に一つの魂を切り分けるなんてのは普通、不可能だからね。

 

 精霊知能であっても数体がかりでの大作業。しかし俺なら問題なく一人でもそれは成せる。

 ……乗っ取ろうとしていた魂が切り離されることを察知した、ウーロゴスの抵抗があろうともだ。脳内のアルマが呑気な警告を発するのを妙に頼もしく思いつつ、答える。

 

「大丈夫だ、問題ない。俺だけでもどうにかできるけど、今回はさすがに直接出張ってくるやつがいるからな」

『……うん? 何の話をしてる?』

「今回の件、ウーロゴスとミュトスについて誰よりも心を痛めて手を尽くしていたのはやはり、世界維持機構ってことだよ。なあ、ワールドプロセッサ」

 

 確信とともに呼びかける。夏休み中の倶楽部案件から始まっての今、サークルやダンジョン聖教過激派など委員会関係の騒動の根幹に位置するもの、ウーロゴス。

 その正体と来歴を踏まえて、この局面になれば必ず出張ってくるだろうと俺は……私は最初から思っていたよ。

 

 たった二つきり、この世に一つずつの対となる存在だからな、我々は。だから分かる。我がことのように、いいやそれ以上に。

 ミュトスに権能を返還する。そのためにあらゆる手を講じ、この場面を創り出したのだな。最後には自らの手で責任を果たすために。

 

 そら、来るぞ。

 この世界にて最初で最後となるかもしれない、真なる造物主の直接介入だ。

 

 

『────異界より来たりし神の、権能を精算する時がきました』

『さあ、ウーロゴスと名付けられし異界の神の権能よ。あるべき姿に立ち戻り、あるべき所へ還るのです』

 

 

 俺の言葉に応じるように、迷宮内に声が響いた。誰の声!? とみんなが驚く中、俺と精霊知能達だけは当然その正体を知っていた。

 ワールドプロセッサ。システム領域の最も深いところにいる、この世界すべてを司る真なる創造主……私、コマンドプロンプトと対を成すモノ。

 とうとうソレが現世に直接介入を果たしたのだ。

 

 迷宮の天井を貫いて降り注ぐ、一筋の光柱。

 それはアレクサンドラとウーロゴス、そしてその頭部を掴む俺を照らして。

 

 ────次の瞬間、俺とアレクサンドラはウーロゴスのみを遺して強制的に後退させられていた。

 少し離れた地点、香苗さん達がいるところまで転移したのだ。そして元の地点には光に照らされた、人型サイズのウーロゴスが残るのみ。

 

 なんなら倒れ伏しているほうのアレクサンドラも、プレーローマ・アンドヴァリから火野アレクサンドラへ、カミもどきからヒトへ戻っている。

 

「こ、公平くん!?」

「い、いきなり転移した!? っていうかこの声! す、ステータスやスキルを授けてくる時に聞く、あの声……!!」

「聞き覚えのある声もだが、一体なんの光だ……!? こ、この全身を貫く震え、どうしようもない畏怖の感情は!?」

 

 急に移動した俺とアレクサンドラに、驚く香苗さんやエリスさん、愛知さんだが周囲はそれどころじゃない。

 いきなりどこからともなく聞こえる声が、能力者にとって誰もが一度は聞いたことのあるもんでざわめきが広がっている。

 

 そうなんだよ、何しろアイツは"システムさん"だからなあ。

 オペレータがステータスを初めて獲得した時に始まり、スキル獲得や称号更新などでも使われているシステムボイスはすべてワールドプロセッサによるものだ。

 

 あ、もちろんリアルタイムでなくあらかじめ録音しておいた音声を精霊知能側で使用しているんだけどね。

 どうあれそんなわけで、探査者の誰もが聞き覚えのあるアナウンス音声が急に、しかも自分の脳内でなく誰しもに聞こえる形で響いてきたんだからそりゃあビビるよね。

 

「直接介入してきた!? ま、マジかよ、とんでもねーリスクだろうにそれすら無視して!?」

「…………それだけ、あの方にとってもウーロゴスとは解決すべき事柄だった、ということなのだろう。紛れもなくこれは、この世界そのものが動く案件だったのだな」

「アレクサンドラとウーロゴス、キッチリ分離されてますねー。元から公平さんが手を加えていたところを後押ししたわけですし、完璧じゃないはずもないですかー」

 

 一方で精霊知能三姉妹も泡を食って3人集まり、ヒソヒソとこぼし合っている。

 この子達からしても寝耳に水ではあったんだろう。秘密主義といえば聞こえは良いかもしれないけど、実際のところは単なる他者不信な腹黒のやることだし、一々演算できないだろうから仕方ないよね。

 

 ま、要はヴァールの言う通り。今回の件、特にウーロゴスについてはワールドプロセッサさえ直接動く案件であったということだ。

 過程は俺はじめ現世の存在がどうにか場を整えるものと決め打ちして、最初からこの瞬間での登場を考えていたんだろうね……肝心要のところの責任を、自らの手で取るために。




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