攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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そして舞台は整った

 本来、絶対にありえないことが今、この場で起きていた。

 世界維持機構ワールドプロセッサ──世界の理、その真実の片割れそのものが直接的に事態に介入してきたのだ。

 アレクサンドラの魂を、侵食と暴走から完全に切り離して隔離。神の権能だけの部分を剥き出しにしたウーロゴスは、完全なる形で俺達の前に引きずり出されていた。

 

「えおおおおおあううおおおおあえええええ────」

 

 姿こそはプレーローマ・アンドヴァリと瓜二つだが、決定的にその立ち姿、表情に言動が異様なものだ。

 意味を成さない音をただ発するだけ、虚ろな目と表情でホラー映画のゾンビか幽霊だかみたく、だらんとした四肢をビクビク震わせている。

 

 見覚えのない姿、けれど見覚えのある在り方だ。

 香苗さんやエリスさん、葵さんが目を凝らしつつ困惑とともにつぶやいた。

 

「あ、アレクサンドラが二人……? いえ、あちらで呻いているほうは、以前にもどこかで感じたことがあるおぞましさを放っていますが」

「たしか、偽りの神の器? だっけ、アレを思い出したよ。アイツを見た時に覚えた気色悪さと同じだ。そういえばアレこそ、倶楽部が本来用意していたウーロゴスの器だったっけねー」

「っていうか、どういう状況なんだかいまいちピンと来ませんよ、はっはっはー! ……今山形くんのほうにいるのが本物のアレクサンドラ、なんですよね? なんか死んだみたいにぐったりしてますけど」

 

 この三人も以前、倶楽部案件で俺と同じものを見聞きしているから理解が早いな。

 そう、そっくりなんだ。アレクサンドラから切り離されたウーロゴスは、かつて倶楽部が用意していた自身の器そっくりの挙動をしている。

 

 倶楽部側は本来、アレクサンドラがアレを体内に取り込むなんて事態を想定していなかった。ウーロゴスに現世活動用の肉体を与えて、それを運用しようとしていたみたいだね。

 それゆえに拵えられたのが、現世降臨用のボディとしての偽りの神の器だった。

 

 もっともあっちは見た目も中身も、ひどいものだったけどね。モンスターよりおぞましい外観に、スキルブーストジェネレータを三基も内蔵した中身してたんだもの。

 まともな内部構造をしていたわけもない。

 

 それで言うと見た目自体はあくまでアレクサンドラな今のウーロゴスのほうが、まあ見栄えはしていると言えよう。

 中身はもちろんグッチャグチャだろうけどね。一部しか侵食できずに切り離されたからか、ガワだけプレーローマ・アンドヴァリの体裁は整えているが……薄皮一枚めくれば、おそらくは権能と魂が無理矢理混ざりあったカオスな空間を拝めることだろうさ。

 肩をすくめながら、葵さんの不安に答える。

 

「大丈夫です、アレクサンドラは生きてますし人間のカタチを取り戻しました。後のことは適任者に任せましょう」

「……事態が飲め込めませんが、とにかくアレクサンドラはヒトに戻ったのですね。気を失っているようですが、念のため捕縛しておきたいところです」

「それは任せろ、シャルロット。《鎖法》、鉄鎖束縛」

「ミスター・神奈川は目もくれずに瀬川と戦闘ですか。素晴らしい集中してますねえ彼、伸びますよあれは」

 

 こちら側の、ヒトの魂を取り戻したアレクサンドラのひとまずの生存を告げれば、シャルロットさんが注意深く彼女の顔を見ていく。狸寝入りの可能性を疑っているのかな。

 なんなら身動きできなくしておきたいって提案も当然のもので、そこはヴァールが気を利かせた。すかさず鎖でアレクサンドラを縛り付けて拘束したのだ。

 

 一方で隣並んでベナウィさんは、渦中にあるアレクサンドラよりも離れたところで未だ、斬り合いをしている神奈川さんと瀬川にまで言及する。

 特に神奈川さんの一心不乱さは、ベナウィさんほどの探査者でさえ太鼓判を押すほどだ。

 

 来歴から来るメンタルの強さは、それがステラの存在が近くにあればゆえのこととは言え、システム領域側の視点で見ても大したものだと感心するよ。

 S級に至るかどうかは知らんけど、将来的には神奈川さんもまた、大成しそうな気がする。

 

 もっとも、今日この日をもって変化を迎える彼に対して、そんなお墨付きももしかしたら不要なのかもだけど。

 ちらりと一瞥だけして、俺はまたウーロゴスとやつに差す光柱、そしてミュトスに対して聞こえるように呼びかけた。

 

「後はアイツと、ミュトスがどうにかしてくれます! ……そうだな? 二人とも」

『────さあ、ミュトスよ。今こそあなたの真なる力を見せる時。"そのスキル"を用い、速やかにこの存在との決着をつけるのです』

「は、はいっ!! ……こ、こんな展開き、聞いてないですけど頑張ルンバ……なんちてっ!!」

 

 案の定ながら、ミュトスにもろくに説明してなかったんかいお前。しれっとした声を響かせるワールドプロセッサに呆れる俺ちゃん。

 あからさまに動揺しつつもガクブル震えて、それでも頑張ると意志を表明したミュトスになんかごめん、ほんとごめんって想いになりながらも……俺は、彼女をじっと見た。

 

 ここからがミュトスの、真の力の発露だ。




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