攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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幼き日々に、さよなら

 衝撃波さえ、彼女が動いてから少しして発生するほどの超高速。音の壁を超えた轟音が響く頃にはすでに、必殺の技は振るわれていた。

 

 完成したスキル《トリニタス・ヴェリタス・ウニヴェルシタス》によって三界機構すべてを纏いし、ミュトス・トリニティ。

 これまでにない力を発揮してウーロゴスに接近したその存在は、持てる力の極地を存分に振るっていた。

 

「ウルティマ・ミュトス・マキシマム────喰らえぇぇぇぇぇっ!!」

「あえいえお、あ──」

 

 災海の触手を纏わせさらなる威力を加算させて放つ、断獄の両拳。魔天の翼による超スピードの勢いをもすべて載せて叩き込むその技の威力はもはや想像を絶するものがある。

 

 これは……この威力なら、もしかしたら極限倍率状態の俺の防御さえ、わずかにでも貫通し得るかもしれない。

 少なくとも《イミタティオ・トリニタス・コスモス》時のミュトス相手にしたような、片腕で受け止めきるなんてのは絶対に無理な威力だ。

 

 ワールドプロセッサ、よくぞここまで思い切ったな。世界維持機構としては、精霊知能にこれほどの力を持たせるなんて考えられないリスクだったろうに。

 ……だが、そう判断した理由も分かる。魔天、断獄、災海それぞれのワールドプロセッサに向けての手向けというか、慰めであり癒やし、労いの意図さえ込めているんだろう。

 

 邪悪なる思念に食われさえしなければ。いつの日にか彼らの世界にて発生したメインプレイヤー達が巣立ちの時を迎える時が来ていたはずだ。

 どういった形での巣立ちになるのか、それは誰にも分からないけれど。ミュトス・トリニティの姿と力こそ、その可能性の、分岐の一つの終着点をイメージしたものなのはコマンドプロンプトたる私にも分かる。

 

 異世界から来たりし女神ミュトスの、巣立ちの姿をもって彼ら三柱を慰撫する。この世界のワールドプロセッサにとっても他人事ではなかった末路を遂げた、かのモノ達に示す。

 ──あなた達の力を受け継いだ存在はたしかにこの世界にいて、そして今、一つの答えに辿り着いたのだと。

 それをもって擬似的な巣立ちとし、あるはずだった三つの世界の意義と価値をここに遺す、レガシーとするのだ。

 

 

『……感傷的なことを……ッ!』

 

 

 さしものアルマも、自らが喰らったモノ達への手向けとして顕現したミュトスの姿には短く呻くしかできないか。

 反省などしていないだろうし罪悪感すら未だ、持ちえていないだろう。ただ、さすがにこいつ自身もワールドプロセッサだったがゆえに気持ちは理解しているようだな。

 

 今はそれでいい。万年の時の果てに振り返った時、自分の行いを顧みる日がきっと訪れるだろうから。

 だから俺も何も言わない。ただ、ミュトス・トリニティとその中に宿る三界機構へと想いを馳せながら……すべての決着を見守るのみだ。

 

「ウーロゴス、いいえ我が権能。今まで迎えに行けなくてごめんなさい、でももう大丈夫ですよ」

「ああ、うう……」

「還りなさい、戻りなさい私の中へ──チャイルドフッド・エンド!!」

 

 自らの半身へ呼びかけ、最後に彼女は両腕を大きく左右に広げた。半壊のウーロゴスの眼前にて、災海のボディを晒す。

 ──メサイア・ディスペンセーション。災海の胴体から放つ大熱量の光線こそがウルティマ・ミュトス・マキシマムの締めの一撃だった。

 

 《極限極光魔法》さえ比較にならないほどの威力でビームが突き刺さる。ウーロゴスの身体と権能が、崩れていく。

 眩さが俺達の視界を一杯に埋め尽くして十秒ほど。爆音でもはや聴覚すら機能しなくなるほどの、カオスめいた煌めきと輝きが発光とともに収まれば。

 そこには。

 

「…………ふぃー、終わった! あーしんど、疲れますねこのスキル、もう指一本動かせましぇーん!」

 

 ウーロゴスが消え果て、床に大の字になって寝転がるミュトス。《トリニタス・ヴェリタス・ウニヴェルシタス》は解除されている。

 まったく平時通りの、ただ消耗しているだけの彼女が平穏無事に披露しきって寝そべっていたのであった。

 

 異世界の神の権能……すべて取り戻せているのが視える。まさしく精霊知能として完成しきった姿だ。今は疲労困憊して倒れ伏しているけれど。

 そしてそれはつまり、ウーロゴスがこの世からすべて、一つ残さず消滅したことをも意味している。

 

 倶楽部、サークル、ダンジョン聖教過激派。委員会に連なる三つの組織が概念存在とつるんでまで拘っていた力が、今ようやく消滅したんだ。

 そしてアレクサンドラの野望も、また。意識なくぐったりと倒れている、魂の欠けた彼女を見やる。

 

 これから先、この女にはこれまでのツケを支払うように艱難辛苦が待ち受けているだろう。

 だけど、それでも、自我を損ねながら永遠に生き続ける苦痛よりは救いがあるのだと信じたい。

 

 事情や経緯がどうであれ、彼女の夢を踏み躙った張本人たる者として……火野アレクサンドラにはきちんとした法の裁きと償い、そして更生を望むよ。

 俺は静かに、この哀れな女性の行く末に救いのあらんことを祈った。




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