攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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蛙化現象(最悪)

 決着がついた。

 プレーローマ・アンドヴァリからアレクサンドラのみを抜き取った状態で残されたウーロゴスを、ミュトスが回収したことにより事実上、異世界の神の権能は消滅したのだ。

 つまりはこれをもってダンジョン聖教過激派首魁、火野アレクサンドラの野望や夢は潰えたことになり……彼女を支援していただろう委員会の目的もまた、未達に終わったことを示していた。

 

 倶楽部から始まる一連の戦いにもこれで一つの区切りがついたと言えるだろう。

 未だ謎の多い委員会については今後も何かしかけてくる可能性はあるし、その度にこうした騒動にもなり得るのだろうが。それでもひとまずは世に平穏が訪れるのだろうと、俺としては信じたいところだ。

 

 ────だけど、まだあと一つ。

 あと一戦だけ残っている。もはや本筋から離れているけれど、ごく個人的だけど、それでもきっと大切な戦いが。

 神奈川千尋と瀬川聡太の、最終決戦はまだ続いているんだ。

 

「くそっ!! くそ、くそ、くそぉっ!! 神奈川千尋ッ!! お前だけは、貴様だけはッ!!」

「まだやるってのかよ、テメェ! アレクサンドラも倒れたってのに!!」

 

 猛烈な勢いで斬撃を放つ瀬川。その瞳には光が戻り、肉眼で神奈川さんを捉えているのが分かる。

 あいつに憑依する形で過剰に強化し、結果視力を奪い未来を閉ざしていた四体の悪魔。やつらが抜けたことで強化も剥がれ、弱体化したのと引き換えに視力が復活したんだな。

 

 本来ならばそもそも、瀬川の中に入り込んで直接強化なんてのは契約上のことにしたってする必要はなかったろうに。

 それをした悪魔どもの思惑は……ひとえに先程の奇襲がすべてだったんだろう。やつの中に隠れ潜み、暴走したアレクサンドラに注力した瞬間の俺を一刺しする。ただそれだけのため。

 

 たったそのためだけに、やつらは瀬川を隠れ蓑にしたんだ。そしておそらくは瀬川もまた、それを承知で強化を受け入れた。

 すべて、藤近とセーレのために。盲信による自己犠牲の為せる、まさしく業だった。

 

「このまま何もかも失うだけで終われるもんかっ! せめてお前も道連れだ神奈川千尋!」

「な、んだと、てめぇ……!」

「僕がセーレさんを手にできないように、お前もステラを手にできないまま終われ!! 僕だけが何も手にできず終いなわけがあるかぁっ!!」

『この男、力はなくなったけど心眼は健在だよ千尋! 避けて、袈裟懸けが来る!』

「ちいいっ!!」

 

 弱体化した、というよりは強化が解除された本来の瀬川。しかして一度開眼した超能力、心眼は据え置きのようで明らかに神奈川さんの動きを尋常ならざる感覚で読み切っている。

 ステラによるナビゲートがなければすでにやられているだろう。やっとの思いで猛攻を凌ぐ神奈川さんの焦りが、こちらにも伝わってくるよ。

 

 瀬川とて悪魔による強化の際に負荷がかかり過ぎていて、すでに満身創痍だ。なのにここまで動けるのは、もはや肉体をも凌駕する精神的なはたらきによるものか。

 自分だけがこのまま負けて失うものかと。せめて神奈川さんだけでも道連れにしてやろうという邪念、執念。それが今の瀬川に、信じがたいほどのタフさと動きのキレをもたらしていた。

 

「千尋! ……浅ましいったらないのよ瀬川! アンタは人を道連れにしないと、自分一人じゃ満足に失うことすらできないの!?」

「憐れですらなくなったな、瀬川聡太……愚かだ、ただひたすらに。やはりお前は、我が斬鉄脚の露となるにも値せぬ男だった」

「知ったことか、何もかもッ!! ああそうさ、せめてこの男だけは地獄に落とさないと、僕だけが地獄だなんて納得できるもんかーっ!!」

 

 ここに至るまで、決戦をひたすらに見定めていたアンジェさんとランレイさんが苦言を呈した。

 この期に及んでなお他者を地獄に引きずり込もうとする瀬川の姿は、二人の目からすると浅ましく愚かなものでしかない。

 

 開き直って叫ぶやつを見ると、そうした感想を抱くのも無理ないとは思うよね。もう勝ち負け以前の問題だもの。

 瀬川にはもう、勝つ気も負ける気もない。ただ神奈川さんもろとも終わろうという、不幸にしてやろうという悪意しか感じられないんだから。

 

 俺の背後、やはりじっとりとした目で瀬川を見ていたセーレをチラリと見る。

 悪魔らしくこの様も喜んでいるのかなと思いきや……意外にもこいつ、スンッと急に真顔になっていた。

 なんだ?

 

『まあ、こんなところですか。結果がどうあれ走り抜けよう、そう足掻きに足掻く姿は尊いものでしたが今の姿は見るに堪えませんね。私はすべて失ってそれでもやり抜き、その末に敗れ去る者を愛しているのですが。瀬川聡太、あなたの限界も結局はそこ止まりでしたか』

「えぇ……? お前、お前さぁ……」

 

 いいかげんにしろよコイツ。

 そういうとこだぞ悪魔お前、マジで。

 

 ここに来て解釈違いかなんだか知らんけど、瀬川の姿が自分の理想と離れたからか、一気にトーンを落として蟻でも見るみたいな目になりやがった悪魔セーレ。

 悪魔らしい身勝手な感性と振る舞いだ。納得も理解もするしそれが悪いとは言わんけど……個人的にはもういいから還れよお前、と言いたくなるよね、こんなやつ。




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