攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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忘れられがちですが、探査者のメインストリームはやはりA級です

 A級探査者になったこともあり、明確に見えてきたのだろうS級への道を強く意識しているらしいリンちゃん。

 逸る気持ちとかもあってかなんとか少しでも早く昇級できる道がないかと模索しているみたいだけれど、さすがにちょっと急ぎすぎだ。

 

 俺どころか香苗さん、愛知さんという若くしてS級に至った本物の天才二人からもそんな感じのことを言われ、さすがにクールダウンしたみたいで今は落ち着いている。

 気持ちはわかるんだけどね、と三人、俺達は顔を見合わせて苦笑いして、しゅんとなる愛らしい少女へと優しく話しかけた。

 

「お気を悪くしたのならすみません。ですが、私ばかりか愛知さん、何より公平くんも同じ意見なのです。一旦落ち着いて、己の足下を固める時期としてしばらくは活動方針を見直したほうが良いと思いますよ、フェイリンさん」

「足下を、固める……」

「A級ともなれば、それまでの級とはまったく別の世界が見えてくる。ダンジョンの規模が桁違いに広く、大きくなるしモンスターの強さや厄介さも増す。君はもう、A級ダンジョンには?」

「何度か潜りました。たしかに、数日かけての長期探査は当たり前。モンスターも、B級までのとはまるで強さ違う、数も半端じゃなくなりました……探査自体は問題ないですけど、感覚は別物。それは間違いない、です」

「そ、そうなんだ。話には聞いてたけど、そんなに変わるのかぁ」

 

 A級ダンジョンとA級モンスターについて所見を述べるリンちゃんに、未だB級の俺ちゃんとしてはそれこそ目から鱗というか新鮮な気持ちでいっぱいだ。

 探査者界隈ってのは実のところ、比率的に見てもA級とそれ以下の級とでまったくの別物だってのは以前にも触れた気がする。メインストリームっていうか、一般に探査者って職業が持たれているイメージの大部分は実際、A級探査者の層に由来してたりするのだ。

 

 何しろ一番数が多いし、一番目立つ人達が多いからね。

 S級までいくと今度は逆に、個性の方ではともかく活躍面ではあまり目立たなくなるんだよ──頂点層は逆に世界に50人程度と数が少なく、その活動も自由気ままというか、それぞれ別方面すぎてメディアの露出等が極端に減るからね。

 だからA級トップランカーだった頃の香苗さんが、現代大ダンジョン時代を代表する時の人みたいに言われていたわけだ。

 

 で、そんなだからA級ともなるとやはりダンジョンにしろモンスターにしろ、危険度やそもそものスタイルがそれまでとはまったく別物になるようだ。

 一回、俺もA級ダンジョンには潜ったことあるけどたしかに規模も大きかったな。最小規模クラスでも部屋数は50を超え、階層も地下10階とかそんな感じなのだ。

 現地での野宿を伴う長期探査……A級ダンジョンの規模になると、そういうのが当たり前になってくるんだね。

 

「さすがに学生やってるうちは、A級ダンジョンにコンスタントに潜るなんてのは難しいですよね。リンちゃんだってそうじゃない? 学校通ってるんでしょ」

「あ、うん。シェン一族は文武両道、さすがに探査ばかりで学校そっちのけ、できないです。なので基本はB級ダンジョンか、A級でもスポット参戦だけばかり」

「スポット参戦?」

「うん、いわゆる助っ人。手に負えないタイプのモンスターがいる階層の探査だけついて行って、そいつを倒したら私だけまた地上まで逆戻り。A級モンスター、強さもピンキリなので」

 

 A級探査者としてのライフスタイルを語るリンちゃん。彼女もまだ14歳だし、当然学校に通う現役の学生さんだ。

 とてもじゃないけど一回の探査に何日も、いや下手すると何ヶ月にも及びかねないらしいA級ダンジョン探査にガッツリ取り組むわけにもいかない。

 

 なのでスポット参戦とかいう、用心棒みたいな立ち位置で一部モンスターの相手だけするようなスタイルに移行しているようだ。

 そういう手法自体、初めて聞くわけなんだけど……これって普通なのかな? と香苗さんと愛知さんを見る。

 二人は至極当然のようにうなずき、説明してくれた。

 

「A級ダンジョンのみならず、たまに取られる手法ですね。その時のパーティだけでは倒せないモンスターがいる場合、一旦引き上げて助っ人的に用心棒を雇って一時的なメンバーとして同行してもらう」

「新人から駆け出しあたりのパーティによる探査でも時折あるやり方だし、A級探査者でも長期の探査が難しいタイプの人がよく用心棒の受け付けをするんだよ、山形さん。みんながみんな、穴蔵の中で長いことキャンプしたいわけじゃないからね」

「な、なるほど。いろんなやり方があるんですねー……」

 

 さすがS級だ、いろいろよく知っているなあ。

 用心棒めいた一時的なパーティ参加。新人さんにとっては助っ人みたいな制度なんだけど、A級探査者のなかでは今度はまさしく臨時の追加戦力としての需要があるみたいだ。

 

 学生さんとか、生活の事情とかで長期間の探査が難しいA級探査者はそっち方面で活躍している方も多いみたいだし、さしあたってはリンちゃんもそういう方向性で頑張ってみても良いんじゃないかなあ。

 そうして実績を積み重ねていく中で己の実力、まさしくすでにS級探査者にも届きかねないほどに極まった星界拳の腕前を世界に刻みつけて認めさせていく。そういう方針だって悪くないはずだ。

 

「……なーんて俺は思うんだけど、どうかな、リンちゃん的には」

「世界に、星界拳の技と私の名を刻みつける……! 実績を積み重ねる中で! なるほど!!」

「さすが公平くん、日々の積み重ねこそが大事だと心得ていらっしゃいますね。そう、何事も一息にやり切ることはできません。コツコツとやらなければ、必ず何処かで脆さを露呈します」

「生き急いでも、時間も結果も早回しになるわけじゃないですからね。とにかく今、目の前のことに注力する。そういうのも大事だよ、フェイリンさん」

 

 ただでさえとんでもない速度で昇級してきたリンちゃんだ、ここらでじっくりと腰を据え、A級というメインストリームの中で探査者としての活動を積み重ねてみるのも良いんじゃないかな。

 そう語る俺達三人の言葉に、リンちゃんは迷いもそれなりに吹っ切れたのか花咲く笑みでうなずいてくれた。

 

 ……まあ、ぶっちゃけ。

 この子くらいの実力となるとたぶん、そう焦らずとも世界のほうが放っておかないと思うから悩むだけ損な気もするんだけどねー。

 なんて、内心ではそうも考える俺ちゃんでした。




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