攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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なんだかんだ言ったって、やっぱり家のカレーが一番美味しい

 結局その日のその後はほぼ一日、会議という名の勝利宣言会とそれを受けての簡易打ち上げ会みたいなのを関係者全員で行って無事に一段落をつけることができた。

 高級ホテルの最高の料理なんかも出てきて、なんなら大人の人達はお酒なんかも呑むような普通の宴会へとそのままスライドして、どんちゃん騒ぎの中でようやっと訪れた平和を思う存分に味わったわけである。

 

 そうして次の日、後始末やら溜まった仕事やらの処理で奔走するみなさんを尻目に俺とかリーベ、シャーリヒッタやミュトスは一足先に空間転移で実家に戻ったのだ。

 そりゃそうだよね、学校あるし。精霊知能達もシステム領域のほうで用事があるみたいだしで、さすがにいつまでも首都圏にばかりいられないのだ。

 

「……って言っても、捕まえた連中の取り調べとかその後の捜査とかを検証するのに、また呼ばれたりはするだろうから週末になるとやっぱり向こうに行くこともあるとは思うけど。でもまあ、基本的には日常が帰ってきたって感じだよ」

 

 なーんてことをね。家に帰ったその夕方、晩御飯時に世間話がてら家族に報告とかしているのが今だ。

 俺の正体とかシステム領域についても知ってる人達だけど、それでも心配とかはどうしてもしてくれてるからね。機密関係で詳しいことは話せないものの、大まかに悪は滅びた! くらいのざっくり説明をしているのである。

 

 今日の晩御飯はカレー、しかもチキンカレーだ。ちょっと辛めのルーに鶏肉の柔らかさがご飯にマッチするのなんのって!

 お高いホテルの素敵な料理に舌鼓を打つのも素晴らしい体験だけれども、やっぱり庶民派山形くんとしてはおうちのカレーはホッとするよなーとか思いながらもスプーン片手に美味しくいただく。

 

「んー! スパイシーで美味しーですー!」

「カレーも奥が深いよなァ……っつうか食事がマジで楽しいぜ。そりゃ受肉してェって言い出す精霊知能も後を絶たないよなァ」

「ぷはー! カレーにビールも合いますねえ! 大仕事が終わった後だと達成感もあって余計に五臓六腑に染み渡ります!」

『んー、相変わらず素朴だけれど良い味だ。君の生物学上の母親はいい仕事をするね、すっかり僕にとっても馴染んだ味だよ。美味しい!』

 

 リーベやシャーリヒッタ、ミュトスはもちろんのこと、脳内のアルマでさえも。

 久々ってほどじゃないけど数日ぶりの母ちゃんの味にはそれなりに満足感を覚えているみたいで、みんなふむふむ言いながらご満悦の様子。

 

 こちらもこちらで平和で何よりと思いながらも俺は、今しがたの説明でなるほどとうなずいた家族のみんなの話に耳を傾けた。

 そもそもそこまで深く突っ込んだ事情には関わる気もない家族達だから、ざっくりした説明でもざっくり理解してざっくりした返事をしてくれる。そういうスタンスがむしろありがたいよね、話せないこともいろいろ抱える立場としてはさ。

 

「そうなのねえ……なんだか大変そうだけど、それもひとまず落ち着きそうなのは分かったわ。お疲れ様、公平、リーベちゃんにシャーリヒッタちゃん。それにミュトスさんも」

「夏休みからこっち、なんだかんだ忙しい感じだったけどやっと一段落しそうなんだな。いや良かった良かった!」

「ほんと、兄ちゃん働きすぎだってー。そろそろ春先までのグータラ兄ちゃんに戻ってよ、私だけ怠けすぎって言われるのキツイんだってばー」

「えぇ……?」

 

 母ちゃん父ちゃんは真っ当に安堵というか、落ち着いた様子なんだけれど妹ちゃんがひどい。

 たしかに探査者になるまでは概ね言われる通りだったけど、自分に矛先が向くからってだけでリバイバルグータラ山形くんを望むんじゃあないよ!

 

 ……と、言っといてなんだけど軽口を叩く様子に内心、安堵する。何しろこの子ってばこないだ、とうとう割とマジな感じに叱られちゃってるんだよね。

 夏休みボケが10月を迎えても残っていて遅寝遅起き寝坊遅刻寸前が定常化しちゃってたもんだから、とうとう両親揃ってのガチ説教を食らったんだ。

 

 俺や精霊知能達はそのタイミングで首都圏に行ってたもんだから、まあ幸いというべきか気まずい現場に居合わせずに済んだものの。

 その後しばらく、優子ちゃんが目に見えて落ち込んだりしてたもんだからリーベやシャーリヒッタが慰めつつ生活リズムの改善に協力してたりしたなあ。

 

 俺やミュトスも、父ちゃん母ちゃんにまあまあほどほどに……とかってやんわりフォローを入れたりはして、その甲斐あってあまり深刻な方向に行きすぎないうちに双方のケアを行ったわけ。

 そこから半月ほどが経つ今、10月中旬。優子ちゃんの生活リズムもすっかり治り、こうして茶化すくらいにはメンタルも持ち直したのである。

 

「アンタねえ、散々お兄ちゃんやリーベちゃんシャーリヒッタちゃんに迷惑かけといてよく言うわよ。大体ね、もう公平はグータラじゃないのよ。ねえ、公平?」

「テレビとかネットでも大人気の救世主だしな。こないだグェンさんも褒めてたぞ、公平は間違いなくこれから先の大ダンジョン時代の中核になっていくって。まだ15歳だってのに、なんか大変そうだなあ……」

「怖ぁ……」

 

 いや、言うて今でも俺ちゃん、大概グータラが本性ですけど。500年モノの引きこもりを舐めないでいただけますか、やろうと思えば桁違いのグータラぶりをお見せできますよ?

 というかさらっとサン・スーンさんも過剰なご期待を伝えてくるのは止めていただきたい。大ダンジョン時代の中核とか一体何を期待してるんだ、そういうのはやりたい人がやれば良いんじゃないかなあ。

 

 カレーを頬張りつつも、相変わらず賑やかな山形家の食卓。

 いろいろあってもこれが俺のホームなのであった。




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