攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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探査者ができるまで

「俺の……先代、アドミニストレータ!? 馬鹿な、リーベは150年前にあなたがいたと、そんな風にさっき……!」

「リーベ様、と仰るのね? 素敵なお名前。ふふ、私までの歴代アドミニストレータを担当していた精霊知能様の知識も、引き継いでいらっしゃるのね」

 

 ありえない言葉、ありえない成り行き──ありえない、目の前の妙齢の美女。

 先代アドミニストレータを名乗ったこの人は、リーベの発言からすれば150年前に存命だった人物だ。それが現代、まるで齢を感じさせない若々しい、香苗さんや望月さんより少し年上くらいの見た目でいるのだ。

 何から何まで理解できない。混乱したリーベの気持ちが、今ならよく分かる。

 

「驚かせて、そして混乱させてしまってごめんなさい。ですが事実です、山形様。私は、あなたの前の代のアドミニストレータ。ソフィア・チェーホワです」

「そ、んなこと……でも、何があって、そんな」

「ちょ、ちょっと待ってください公平くん、ソフィアさん!」

 

 重ねて名乗るソフィアさんと、驚きつつ、どうにか平静を取り戻そうと必死な俺。

 そこに香苗さんが割って入った。そうだ、俺でさえ混乱してるんだから他の人にはちんぷんかんぷんも良いところだろう。

 ああ、リンちゃんが船を漕いでる! それはそれで図太いな、君!

 

「うつら、うつら」

「二人だけで話を進めないでいただけますか!? 我々にも、アドミニストレータとは何であるかお教え願います!」

「左様。WSO統括理事として動かれた以上、これは探査者に関わる話のはず。秘密主義の徹底も、時と場合でしょう」

 

 烏丸さんもさすがに問い質してくる。うん、今のは俺たちがせっかちすぎた。呼ばれてここにいるんだから、香苗さんたちにだって知る必要はあるはずだ。

 リンちゃんの頭を軽く何度か触る。途端、びくっと目を覚ましてあたりをきょろきょろ見渡す姿がかわいい。落ち着く〜。

 さておき、ソフィアさんは一つ頷いた。

 

「失礼、逸りすぎましたね。そう、ですね。あなた方、特に御堂様は知っておいても損はないのでしょう。ダンジョンを管理していた者──アドミニストレータについては」

「ダンジョンを、管理していた者?」

「ええ。ですが150年前、私が邪悪なる思念との戦いにて敗北したことにより、不在になった存在でもあります。代わりにダンジョン管理者として据えられたのが、オペレータ。あなた方、探査者ですね」

「わ、我々の本来の呼び名は、オペレータ……?」

 

 混乱する一同に、そしてアドミニストレータとオペレータの関係は語られた。

 ダンジョンと、そこに生息するモンスターを管理し、今で言う探査者のように踏破を行い続けてきた。それがアドミニストレータだ。

 遡ること500年近くも前に初代が生まれ、以後、150年前に最終継承者たるソフィアさんが生まれるまで、連綿と受け継がれてきたシステム側の人間。

 

「……しかし、アドミニストレータは敗れ、その権限を失いました。そこでワールドプロセッサ様、あなた方の言うシステムさんですね。御方は一計を案じました。アドミニストレータでない普通の人間に、ダンジョン管理を委譲したのです」

「それが、オペレータ──我々探査者、なのですか」

「元々、アドミニストレータ用に作られていたダンジョン管理用のデバッグアプリケーションを、普通の人にも使えるように様々にダウングレードさせたもの。それが、スキルの正体です。それを人々に与え、探査者は始まりました」

 

 色々と、俺にとっても初見な話があるな。

 アドミニストレータの歴史が500年も前から始まっていることとか、アドミニストレータ用スキルがダンジョン管理用の、デバッグアプリケーション? だとか。

 香苗さんや烏丸さんにとっても驚きの連続みたいで、もはや唖然としている。まあ、自分たちの職種の起源をいきなり聞かされたんだ、さもありなん。

 

 リンちゃんに至ってはもうなんか、ちんぷんかんぷんすぎるので最初から聞いてすらいない。小さな手でスマホを操り、可愛らしい絵柄のパズルゲームをしている。

 うん、君はそのままでいてほしい。あとで課金用ギフトカード買ってあげるね。

 

「つ、つまり公平くんは、探査者のオリジナルに相当する、と……!?」

「そうなりますね。もっとも、話を聞く限りではアドミニストレータですらない何か、別の力があるようですが」

「えぇ……? 何ですかそれ、怖ぁ」

「詳しくは精霊知能、リーベ様にお聞きくださいませ。もう、顕現は近いのでしょう?」

 

 興奮して──唯一無二のアドミニストレータという存在である特別性に、何やら見出しているんだろうなあ──詰め寄る香苗さんに、微笑ましそうに笑って応えるソフィアさん。

 俺としてはそれより、アドミニストレータですらないとかいうところが不気味で仕方ない。どういうことか問えば、ここでまさかのリーベに丸投げ。おーい!

 

「え、ええまあ。あと30くらい上げれば、レベル300です」

「でしたらなおのことです。私とて、私が務めていたアドミニストレータ周りのことについてはご説明できますけど……それ以外のことについてはほぼ、又聞きになりますもの。人に講釈できるだけのものは、ありませんわ」

 

 きっぱり告げられてしまった。まあ、そこに関してはなあ……俺も同じ理由から、香苗さんはじめ他の誰にもアドミニストレータについて言わなかったし。理解できるよ。

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