攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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文化祭でメイド喫茶をやるクラスも最近なくはないらしい(ジェネレーションギャップ)

 授業もそんな感じで恙無く終えて、放課後を迎えた。明日明後日と土日で休みなもんで、みんな解放感を全開にしたムードでいっぱいになっている。

 普段ならこの後、家に帰ってゆっくりしたり商店街に繰り出したりする人も多いだろうけど、今日っていうかここ最近は割とそうではなく大半、クラスに残っていたりした。

 

 文化祭の準備だ。もうあと半月ほどにまで迫った演劇"勇者関口物語"……タイトルからもお察しの通り、関口くんを半端なく前面に押し出したほとんどワンマンショーみたいな内容の劇。

 それの練習や準備を行うためにみんな、居残りしてるわけだね。

 

「おっ、8組はチョコクレープ屋に9組は焼きそば売るのか。山形、当日の昼はここ行こうぜー」

「良いねー。あ、理科実験室でスライムゼリーを作るレクリエーションとかやるんだ。ちょっと気になるかも」

「いくら文化祭だからって教室内に家庭用プール持ち込んでヨーヨーすくいやるのか……3組は気合入ってるなあ」

 

 まあ、それはそれとして俺や松田くん、片岡くんといった裏方準備組はもう暇なんだけどね!

 今も事前に配布された文化祭当日のパンフレットを見て、あそこ行こうよこっち行こうよとアレコレ話してるくらいには時間が余っている。

 

 ぶっちゃけ裏方準備なんてこの時期だ、粗方終わってないとヤバいからね。

 最後までリハを入念にやるつもりの役者陣はともかく、事前に段ボールを切って色塗ってやれ草むらだやれ木だやれ聖剣オネスティキャリバーだと、どうのこうのとやっていた俺達はめでたくのんびりさせてもらっているわけだった。

 

「────行くぜ魔王!! 佐山、頼む!」

「うん! 大いなる風よ、今こそ清めをもたらせ! "ウインド"!!」

「っしゃあ! モンスターでも殴りかかるぜ! 鉄拳爆砕!!」

「ふふふははははははっ!! 効かぬ効かぬぅッ!! この魔王ゼータ・サーマの前にはあらゆる存在は無力ぅッ!!」

 

 で、当の役者陣達はまさしく熱演の真っ最中。机を教室後方に下げて確保したスペースで勇者関口くんと魔法使い役の梨沙さん、あと格闘家役の中野くんの三人が魔王ゼータ・サーマに扮して着ぐるみを着込んだクラスメイトの赤西くんと対峙している。

 セリフにもみんな力入ってるし、棒読みとかでなくきっちり演じているのが素人目にも分かるよ。本気だなあ……監督の演技指導がだいぶ厳しかったから、そうもなるんだろう。

 

 っていうか、だいぶファンタジー的な描写に傾いたなあ。詠唱からの魔法とか、探査者相手であってもまず拝めない光景だ。

 スキル名と技名言っておしまいが多いしな、魔導シリーズにしろ魔法シリーズにしろ。ノリにノッたら前口上くらい入れる人もいるかもだけど、基本的にモンスターと命のやり取りをする以上、さすがに無駄口叩く余裕もあんまりないし。

 

 まあ、それを言ったらそもそもダンジョンの奥に魔王がいる、なんてことがないんだけどね。

 だいぶ脚色をしているものの、一応この演劇の内容はスキル《勇者》を持つ探査者関口くんが仲間である魔法使い、格闘家とともに魔王を倒すという、言ってしまうとそれだけのシンプルなものだ。

 

 途中、二回ほどモンスター的な存在と戦うってくらいであまり人間関係的なところでのドラマとかはない。あっても関口くんが聖剣オネスティキャリバーを手にする経緯とか魔王との対話とかがメインで、仲間達は割とマジで戦闘の時にだけ活躍する感じだ。

 一時間くらいの時間で、しかも関口くんのビジュアルとカリスマ性を前面に押し出すべく彼のセリフとアクションをマシマシにしてる構成だからさもありなんや。

 

 事実上、刺身のつまにされてるような感じになっちゃってる梨沙さんと中野くんとしてはどうなんだろう、面白くないんじゃないかな? と思うものの……

 意外に二人としては気にするところはないみたいだ。軽い小休止に入って、関口くん含めて三人ともが何故かこっちにやって来る。

 いやマジでなんでだ!?

 

「ふー。山形、お前くらいはちゃんと見とけっての。俺の動き、おかしなところなかったか?」

「お疲れー。やー、さすがに慣れたけど本職さんを前にデタラメ魔法使いやるのってやっぱり恥ずかしいねー」

「っつーかオメーラどこ見てんだ!? 6組メイド喫茶やるんだってよ、行くならここしかねーだろーが!!」

「そこ!?」

 

 怖ぁ……みんなこっち来るのもだけど真っ先にメイド喫茶の話をしだした中野くん怖ぁ……

 

 関口くんと梨沙さんについては結構いつも通りというか、なんかある度にこっちに来てアドバイスを求めてきたり、甘えるようにはにかんできたりする。

 だから俺としてもお疲れ様ー、変なところなかったよ、恥ずかしくもないし立派だったよーって毎回、答えるのが日常的になったりしてるんだよ。

 

 でも中野くんはなんか、たまに来る程度で普段は他のクラスメイトと一緒なんだけど、来たら来たでやたら個性的な言動をするから侮れない。

 いつもは関口くんと同じリア充陽キャグループの一員で、割と高木さんみたいにウェイウェイ言いそうなタイプでつまり気さくなんだな、これが。

 

「中野、お前躊躇なく真っ先にメイド喫茶に行くのか……」

「普通に気にはなってたけどお前、照れくささとか気恥ずかしさとかないのか」

「ねーよそんなもん! そんなのよりメイドだメイド! たしかあのクラスは学年一マブイ女の子もいるんだぜ、もしメイド服に身を包んでたら行くしかねーべや、なあ関口くん!!」

「俺に振るのか!? ……ど、どうなんだ山形!」

「俺!? いや行く気はないよ、メイドさんあんま興味ないし!?」

 

 中野くんに触れづらい話を突然振られて、咄嗟なんだろう俺に爆弾を放り投げてきた関口くん! 裏切ったな関口くん!

 実際興味ないからなんとも言えんよこんなの。大体メイドさんっているからね、織田のところにリアルで。

 見たいならそっち行きますよ、うん。




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