攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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平和な探査者の日常、そこに突然巻き起こる伝道の嵐!!

 土曜の素敵な朝は清々しい秋の季節とともにこれまた素晴らしい快晴。

 ようやく残暑も落ち着いて涼しくなってきたのもあって、まさに絶好の行楽日和と言えるだろう。

 

 陽キャの皆さんやご家族様などにおかれましてはこんな日こそ、ピクニックやら散歩やらデートやら。

 はたまた旅行なんかに出かけるのだろうけれど……探査者さんはこういう時こそお仕事、ダンジョン探査だ。

 

 そういう人達の憩いとか行楽を、ダンジョンが邪魔しているケースもなくはないからね。実際GWとか夏休みなどの長期休暇期間に関連してのダンジョン探査依頼は多い。

 ようは人通りが多くなる分、ひっそり生成されるダンジョンだって見つかる可能性が高くなったりするんだね。

 

 そしてそういうところは大体商売時の施設だもんで、さっさと探査してくれってなもんで緊急度高めで依頼を出してくる。

 そうなると探査者達も当然呼応して出動する。人々の憩いを奪うダンジョンとモンスターを一分一秒とて放置しておけない、職業倫理の高さが存分に発揮されるってわけだ。

 

「……というわけで必然的に、全探組も探査者さんでごった返すわけだなあ」

『有象無象がうじゃうじゃと……肉体があったら何割か消してるかもしれないね、こんなの』

「怖ぁ……」

 

 脳内のアルマさんがあまりに物騒なことを口走る。そう、テクテク歩いてやって来ました全探組施設は今、いつにもまして探査者がいてカウンターに列をなして並び、探査依頼の申し込みを行っている。

 さらに奥の、依頼検索コーナーも当然ながら探査者だらけだ。うちの県の探査者こんなにいるんだ!? って驚くくらいの数だよ。

 

 だからといって即座に苛立ちを表明する脳内の馬鹿は放っておくにしても、なるほどかきいれ時ってやつかなこれがー、と不思議な感心さえ覚えつつ俺も中に入る。

 一応、宥さんとは全探組内の談話室で待ち合わせる予定だけどもこの調子だとそっちも、人でごった返しているんだろうなあ。

 

 見つけるのに手間がかかるかなあ。と思いつつも談話室へ。

 普通に歩いているだけなのに俺に気付いた探査者さんが大体みんなあっ、シャイニング山形! 的な反応してくるのが怖いよー。有名人というよりなんかこう、貼り出しされるタイプのお尋ね者になった気分だよー。

 

 これも有名税のうちと捉えるべきなのだろうか? と内心哲学しながらも談話室に入る。

 懸念した通りの人、人、人。探査者、探査者、探査者なわけだけど、まあ中には入れないほどでもないな。そこは何より。

 

 

「ショッピングモールの探査かあ。依頼こなしたら、その後俺らもちょっと遊ぶか?」

「あー、良いねそれ。でも武器と防具どうしようか。防具は外してロッカーにでも入れれば良いけど、剣とか槍はさすがにねえ」

「探査者荷物預かりサービスがあったろ、あそこに頼めば良いさ。普段なかなか使う機会はないけど、こういう時に助かる」

 

「喫茶店、本屋、コンビニ……うわっ、駅構内の依頼とかあるぞ。どれも迷惑だけど駅は桁違いだし、これにするか」

「D級で階層5、部屋数9か。これなら3時間くらいで終われるかな。確認できてるモンスターは?」

「わらいモグラとなまけグマだけだな。モグラのほうはともかくクマのほうはうっかりしてるとやばいし防御はしっかり固めていこう。スキルや武器も遠距離攻撃主体でな」

「前衛がガッチリガードしつつの後衛がメイン火力。いつもと勝手は違うけどフォーメーションは練習してきたからな。実践で試す良い機会だぜ」

 

「よりによって数日かけるレベルのA級ダンジョンなんかが、どーして自然公園に出来ててしかも周辺情報を読み込んでるんだか……階層35に部屋数240ほどか。ちょっとしたキャンプだねこりゃ」

「雄大な大自然を模した、穴蔵を何日と潜りながらモンスターと死闘。ファンタジーゲームみたいだなあ」

「言ってる場合じゃないわよ……今回は他のパーティと合同で探査するの?」

「もちろん。サバイバル技術に長けたベテランA級達と一緒だ。勉強させてもらおう」

 

 

 喧々諤々と聞こえてくるあれやこれや、探査に向けての話し合い。

 それぞれ話す内容も話題も当然違うけれども、それでも己の使命にかける使命感と責任感の強さは誰もが共通だ。

 

 こういう、先輩探査者さん達のプロフェッショナルとしての姿を見ると新米探査者・山形公平としては背筋を糺す思いだし……システム・コマンドプロンプトとしては心から敬意と感謝を抱く思いになる。

 彼らや、彼らに至るまでの100年の歩み。それこそ世界中、いついかなる時にもダンジョンとモンスターに脅かされながらもそれに抗い続けた大ダンジョン時代の積み重ね。その雄大さと深遠さに心からの賛辞を送りたくなるのだ。

 

 この時代を、ここまで発展させる土台を構築したソフィアさんやヴァールをも含めた大ダンジョン時代のすべてに意味があり、価値があったのだ。

 良いことも悪いことも含めて、その上で前に進み続けた果ての今に頭が下がる思いだよ。

 

「すごいなあ……」

「公平様! 公平様!! 我らが救世主、おお、山形公平様ー!!」

「えぇ……?」

 

 そんな、どこか感傷に浸る俺ちゃんへと不意に向けられる、あまりにもいつもの声と叫び。

 こちらはこちらで揺るぎない信仰に満ちた声だ、ある意味すごいよね。白目を剥きそうになりながらもそちらを向く。

 

 談話室の奥、何やら人集りの向こうから立ち上がってこちらを見る人あり。

 望月宥さん。今日一緒に探査する予定のその人が、俺に向けて手を振っていた。

 すごいなあ……




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