【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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一見普通でもよくよく見ると狂ってるやつ

「あの年頃の子は男を見る目がないですね。公平くんと関口ごときを比較して、あまつさえ関口を選ぶとは」

「どんな世代の女性でも、10人いたら9人は関口くんを選ぶと思いますけど」

「世の中の女の、実に9割が見る目を持たない馬鹿だと仰るつもりですか? さすがに女性として、その意見には同意しかねますが」

「人聞きの悪いこと言わないでもらえます!?」

 

 実際、世間一般的にも関口くんの方が魅力的なのは間違いないでしょうよ。何なら男性だって、俺と関口くんなら彼の方に付くと思う。

 別に俺が自分に自信がないとかじゃなく、本当に客観的に見て圧倒的だもんよ。まずルックスからして違う、イケメン芸能人もかくやって感じじゃん。あれ、下手すると街角歩いてる時に芸能事務所とかから来るね、スカウト。

 

「見た目が良くて、将来性がある。おまけに社交的というか、周囲に良い顔するのが得意そうなら、俺じゃ相手になりゃしません」

「さすがに性格については認めていないんですね。あまりに寛容すぎますから心配していましたけど、少しは安心しました」

「俺も普通の高校生なんで。明らかに嫌われてたら、好きにはなれませんよ」

「その程度で済ませるところが、私は心配なんですよ……」

 

 いつか、あなたは求められるがままにすべてを擲ってしまいそうで。

 そんなことをシリアスに言って、御堂さんはアイスコーヒーをストローで飲む。俺はコーラフロートだ、アイスが美味い!

 

 クラスメイトの女子組から離れたあと、俺たちは喫茶店に辿り着いてこうして今、軽い休憩をしている。

 矢継ぎ早にスキル《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》や称号《魂を救う者》について話そうとした俺だったが、少し落ち着こうと御堂さんの指摘があり、こうして雑談と軽飲食をつまんでリラックスに努めている。

 たしかに……余計な緊張とか不安が、抜けていくのを感じる。同時に自分が、軽いパニックに陥っていたことに気付けたのだから、なるほど冷静じゃなかったと思い知る。

 

 こういうところ、年上のお姉さんだよな〜。

 かわいくコーヒーを飲む御堂さんを見ていると、上目遣いで視線を返される。あざといかよ……何だこの人、見惚れちゃうだろ。

 店内の男たちの視線を、そこはかとなく集めているあたり本当に美人なんだよ、この人。そんな人とこうして一緒にお茶できて、あまつさえ頼れるなんて俺の幸運も中々捨てたもんじゃないな。

 生きててよかったぜ〜、なんて考えながらもぼちぼち、俺は話を切り出した。

 

「そろそろリラックスもしてきました。新しいスキルと称号について、相談させてもらっていいですか?」

「もちろんです。とは言えあなたの場合、何もかもが世界初、前代未聞にして前人未踏の領域です。私としても確たる答えは出せませんので、そこは悪しからずおねがいします」

「構いませんよ。一人で抱えていられないから、誰かに聞いてほしいってだけのところも、ありますし」

「……無理だけはしないでください。私で良ければいつだって、お力になります」

 

 思わず弱音を吐いた俺に、優しく寄り添うように御堂さんは微笑んでくれた。

 良い人だ……これで狂信者でなければ。信仰の対象になりかけの身として、心底生温かい心地になる。

 まあそれはともかく。俺は御堂さんの見解を聞くこととした。

 

「まず、称号《魂を救う者》ですが。率直に言えば、効果自体は既存のものと大差はありませんね。称号《格闘家》やスキル《格闘技》と似たようなものだと思います」

「あ、そうですかやっぱり」

「ですが倍率が狂っています。10倍? ふざけていますね。大概のその手の効果の倍率は、体感的に精々が1.2倍から良くても1.5倍というのに」

「そ、それだけ……?」

 

 世間一般的な、技術習熟速度アップ関係のスキルの、思いもよらない低倍率に俺は慄く。俺のほぼ8分の1から6分の1じゃん。つまり言い返せば、俺は他の似たような効果を得ている探査者の、実に6倍から8倍、格闘技術の習いが早いということになる。

 なんだそりゃ、方々から苦情来ちゃうぞ。プロの格闘家なんて喉から手が出るほどほしいだろ、この称号。いや、探査者になった時点で他スポーツの選手にはなれないんだけどさ。

 

 俺的にはまだ、マトモだと思っていた称号からして既にこの始末だ。効果自体はまともでも、倍率がイカれてるならそれは効果そのものがイカれているも同然だ。

 となると、だ。俺は嫌な予感がひしひしとしていた。

 

 厄ネタの本命みたいな匂いがプンプンしている、スキル《救いを求める魂よ、光と共に風は来た》。これなんてもう今の時点で聞いたこともない効果だ。

 あ〜、話を聞きたくない。が、そうもいかない。知らなきゃ何も進めないんだし、他ならぬ俺自身のことだ、目を背けるわけにはいかない。

 

「そして。そして、公平くんが新しく得た、スキルについてですがっ」

 

 御堂さんは先程よりも興奮したように、スキルについて切り出した。


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