攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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世界中にバラまかれたマリアベールの弟子!

「あの、ところでそろそろ私の紹介の方を願えますか? ミス・チェーホワ」

「えっ」

 

 アドミニストレータについて、俺以外のみんなに共通の認識を得られたタイミングで。

 ソフィアさんの隣に座る、スーツ服の黒人男性の方が、おずおずと挙手をして言った。ずいぶんと流暢な日本語だ。

 

 スキンヘッドの、背の高い人だ。立ち上がったらたぶん、2mくらいはあるんじゃないかな。困ったような、焦ったような温和な表情でオロオロしている。

 間違いなく悪い人じゃないな、と俺が思う中、ソフィアさんはきょとんとして、そのままフリーズした。

 

「あっ──あらあら、うふふ」

「もしかして、その……忘れてましたか? 私のこと」

「うふふ」

「忘れてましたよね?」

「うふふ」

 

 ちょっぴり冷や汗なんてかきながら、誤魔化しの笑みでうふふとこぼし続ける。本気で忘れてたのか、この人……

 仕方なし、とため息と共に、男性はこちらを向いてきた。穏やかな笑みを浮かべ、立ち上がり──やはり大きい、推測したくらいはある──深々と礼をする。

 

「お初にお目にかかります、皆様。私はベナウィ、ベナウィ・コーデリア。S級探査者であり、マリアベール様の孫弟子でもあります」

「S級!? それに、マリーさんの孫弟子さん……ですか?」

「ええ。私を鍛えてくださったサウダーデ・風間の師に当たるのが、かの偉大なる居合剣士です」

 

 いかにも真面目な感じの、謹厳実直を絵に描いたような振る舞いだ。声音もものすごく固いし、聞いていてこっちも背筋が伸びる。

 それにしてもマリーさんの孫弟子さんか。それでS級とは、こちらのベナウィさんもそうだけどマリーさんもさすがだ。師弟筋揃って世界トップクラスとは、恐れ入っちゃうよ。

 

 そして。

 続けざまにベナウィさんは、驚くことを言ってきた。

 

「今回、私がこの場に同席させていただいたのは、そちらのレディ・シェンと似たようなものでして。つまるところ、決戦スキルと呼ばれるであろうスキルを、私も保持しています」

「あ、あなたが……!?」

「ええ。こちらをご覧下さい。私の、探査者証明書です」

 

 

 名前 ベナウィ・コーデリア レベル968 ランクS

 称号 魔法使い

 スキル

 名称 メサイア・アドベント

 名称 極限極光魔法

 名称 気配感知

 名称 超再生

 

 

「こちらの《メサイア・アドベント》が決戦スキルに該当します。長らく封印されてきましたが、ええ。ミスター山形にお会いした瞬間、それが解かれました。マリアベール様の仰られたとおりでしたね」

「《メサイア・アドベント》……」

「マリーさんがたしか、《ディヴァイン・ディサイシヴ》でしたね、公平くん」

 

 香苗さんの声に、ええと頷く。たしかにどうやらベナウィさんは、決戦スキルをお持ちのようだ。

 これで実質──リンちゃんが継承するとすればの話だが──決戦スキル保持者は三人、マリーさんも含めて身元が分かった形になる。

 

 後一人の居場所が分かれば、一応、決戦に至るまでの段階を一つ、クリアしたことにはなるな。

 もっともすべてはリーベを顕現させる、つまりはレベル300に俺が到達することが前提の話だから、いずれにせよ今すぐという話でもないんだろうけど。

 

「そうそう! 決戦スキルについても、マリアベール様からお話を受けて、WSOの方で探して連れてきたんです。うふふ、フェイリンさんもベナウィさんも、快くご協力頂いていますのよ」

 

 ソフィアさんがそんなことを言う。この人、協力を頼んどいて紹介とか忘れてたのか……

 じっとりとした目でみんなが彼女を見る。もちろん俺もだ。またしても冷や汗を流しながら、誤魔化しがてらWSOの統括理事にして俺の先代さんは声を張った。

 

「ええと! そう! それでですね、話はまだあるんです。山形様と御堂様にはこれから、フェイリンさんとベナウィさんを連れて、とあるダンジョンを探査していただきたいのです」

「俺と、香苗さんと?」

「私?」

 

 急な提案。ダンジョン探査は俺たちの仕事、引き受けることは是非もないけど、フェイリンちゃんとベナウィさんまで?

 どういうことだろう? リンちゃんもスマホから目を離してソフィアさんを見ている。あ、パズルゲーム一時停止してない。

 ソフィアさんが微笑ましげに、彼女へ告げた。

 

「そう難しくないダンジョンです。階層も浅く、モンスターもB級程度。ですが……最深部にて待ち構えるのは、あなたが継承する決戦スキルを保持している者」

「! 弐式・救世技法!」

「ええ、あなた方一族はそう呼ぶのですね。いかにも、その技法を守護する者が、あなたを待っています。継承するにふさわしいか否かを、たしかめるために」

「一族の、悲願……! 救世技法の継承、儀式!」

 

 もはやパズルゲームなんてそっちのけ、リンちゃんは立ち上がり、気炎を吐いた。迸る闘気が、ついに時が来たと吠えているようにすら感じる。

 彼女の、シェン一族と星界拳との関係を事前に聞いているからこそ、分かる。今まさに、リンちゃんは一族96年の歴史を背負い、代表として立っているんだ。

 

「行きますっ! 我らが一族、重ねし血統。魂と誇りのクンフー……! 今こそ救世技法へと至る時!!」

 

 何の迷いもない宣言。

 フェイリンちゃんは、星界拳正統後継者として誇り高く叫んだ。

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