攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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防御こそ最大の攻撃!!

 新規獲得のスキル《盾術》、その効果をもって盾の扱いをさらに進化させた宥さんのみごとな受け流し。

 俺との役割分担もきっちり機能して、まさに二人揃って高いレベルでの攻防を成立させるコンビネーションを維持できていると思う。

 

 ゴールデンアーマーを倒した後、残るアイアンベアもこちらにのっそりと近づいてくる。さっきのよりこっちのほうが、受け流し的には難易度が高いだろう。

 何しろパワーについてはB級モンスターの枠をも超えかねない化物だ。鋼鉄でできた熊の体躯、そこから繰り出される腕の威力は、まともに喰らえばA級探査者でも危うい。

 

 そんなのを相手にしてもなお、宥さんは戦意を落とすことなく果敢に盾を構え前進した。

 積極的パリィ……あえて自分から突っ込んで行く、極めて攻撃的な防御術か。そしてそこから強引に敵の動きを引き出し、それを受け流す。

 

 武器を使った攻撃については未だ模索中なんだろう、それゆえかもしれない選択。敵を待つのではなく迎えに行く、受けに行くスタイル。

 それが今の宥さんなんだ。俺は固唾を呑んで見守る。

 

「ぐるるるるるる────」

「宥さん……」

「攻撃は最大の防御と言いますが、ならば私はあえてこう言います。"防御こそ最大の攻撃"と。だからこそ前に進み、あえて敵の射程に入ります!」

「────ぐるるるるるるるぁっ!!」

 

 強い意志の発露。先に攻撃して敵を倒すことで、結果的に身を守るという発想の逆──あえて攻撃を受けることで、最大の攻撃のチャンスを生み出す。

 カウンターに近い発想だけど、後の先を取るわけじゃなく先手を譲ってからの後手で覆すやり方。リスキーだけどその分、リターンも大きい戦法だな。

 

 お淑やかな宥さんがこんなやり方を選んだのは意外だけど、それを言うならそもそも重量物である大盾を構える姿からしてもう意外だからね。

 アイアンベアに向け、距離を詰めていく宥さん。そして当然ながら反応するモンスターは、やはりのっそりと立ち上がった。

 

 大きいな……四足の時でも2mはあると見てたけど、立つと明確にそれ以上、あるのが分かる。すごい威圧感だ。

 さらに鋼鉄の腕を天高く掲げればもはや3m近い。ちょっとした丘だなもう。そんなのの攻撃が、爪を立てて鋭く振り下ろされる!

 

「があああああああっ!!」

「ッ、《盾術》!! ──ううううううっ!?」

 

 隕石でも落ちたかの様な、そんな速度と威力。アイアンベアの腕が、頭上に構えた宥さんの盾に直撃し、その身体そのものを叩き伏せるように彼女を襲う。

 すごい力で、宥さんが足下の地面に軽くめり込んでいる。受け流そうとしたけど、相手の力が予想以上に強くて早く、間に合わなかったか。

 

 タイミングがズレて、真正面から受け止めることになってしまった。こうなると宥さんには分が悪いな。

 彼女は膂力こそあるが、防御役としてのタイプはあくまで受け流しスタイルだ。真正面から受け止めてなお仁王立ちする、まさしく要塞のようなみたいなやりかたは想定していないはず。

 

 大きく呻く宥さんの、左腕から微かに力が抜ける。あれは、折れてはないけどヒビが入ったか、骨に。

 これはさすがに割って入らんとまずいな。因果操作で彼女のダメージを回復させる算段を描きながらスキルを発動させようとする。

 《目に見えないけど、たしかにそこにあるもの》。範囲内のモンスターを、その強さに関係なく問答無用で浄化する対モンスターにおける最強のスキルだろうそれを、今、行使しようとして──

 

「っ、まだまだ! 負けません、私は!!」

「宥さん!?」

 

 鋭く叫ぶ宥さんに、ハッと気づいて咄嗟に発動寸前で待機状態にして止まった。

 見れば宥さんが、痛めた左腕さえ強引に動かしながらも徐々に一歩一歩、足を踏み出している。アイアンベアの懐へ、その丸太のような鋼鉄の腕さえ、押し戻しながら。

 

 一撃で決められるとでも思っていたのか、アイアンベアが焦ったようにもう一度、腕を掲げて振り下ろした。それをも受けて轟音を響かせる、宥さん。

 左腕が切れたのか血が流れ出した。クリーム色の服を朱に染めながら、けれどなおも歩みを止めない。

 

 すごい気迫だ……今度こそアイアンベアは威圧されたか、一歩引き下がった。

 人が、モンスターを圧している。宥さんはそこから、誰に向けるわけでもなく高らかに叫んだ。

 

「これしきのこと! 私はさらに上を目指すんです! 探査者として、使徒として女として、人として! この程度の攻撃なんかで、腕が折れても心、まではぁっ!!」

「ぐるるぁっ!?」

「《盾術》──! シールドパリィ・フルムーン!!」

 

 それは探査者としての、人としての宥さんの決意。熱意と矜持に溢れた彼女の、不退転の宣誓。

 自分に言い聞かせるようにも聞こえたのは、きっと僅かにでも怯えた心に檄を飛ばしたのだろう。そこから先の、動きが素晴らしかった。

 

 一気に懐に潜っては盾を熊の腹部に当て、しゃがむようにして下に潜り込み身体全体のバネで打ち上げる。

 レベルによって強化された全身を使っての、強引なまでのアタック! それでも超重量のアイアンベアは軽く浮くだけに留まったけど、それだけで彼女には十分だった。

 

 ──その僅かな浮き上がりを活かしきって、姿勢を回転させて変えてクマを投げ飛ばしたんだ。俺の方向に。

 極めて力任せの受け流し、だけどみごとな受け流しだ。

 

「ぐるぁっ!?」

「お見事です、宥さん──《目に見えずとも、たしかにそこにあるもの》!」

「ぐるぁぁぁぁ────」

 

 今度こそ、なんら過不足なく完璧に俺のスキルが発動する。アイアンベアの魂を慰撫し、輪廻に受け入れるための浄化スキルが。

 魔法陣が公園全体に展開され、モンスターを癒やし消し去っていく。ほんの数秒、後に残るものは俺と宥さん以外いない。

 

 完全勝利だ。

 間違いなくMVPである宥さんの元へ、俺は急ぎ足で向かった。




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