攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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シャイニングする(動詞)

「宥さん! 大丈夫ですか、今治します! ──《望月宥は攻撃を受けてないから傷を負っていない》!」

「あ……こ、公平様。傷が……!」

 

 戦闘終了。アイアンベア浄化を終えて、すぐに俺は宥さんへと駆け寄り因果操作による治療を施した。

 彼女はそもそも攻撃を受けていない。ゆえに傷を負ってもいないという因果を紡ぎ出したんだ。途端に彼女の、特に左腕に負った傷が逆戻りめいて元通りになっていく。流した血さえ、服を染めた朱でさえみるみるうちに巻き戻っていく。

 

 ものの数秒ですっかり健康体に戻った。

 慣れたことだけどやはり唖然としている様子の彼女が、左腕や身体全体をまじまじと見て、そして俺に頭を下げた。

 

「ありがとうございます救世主様! またしてもあなた様の偉大なる奇跡の御業によって、私の傷は癒やされましたっ!!」

「怖ぁ……大袈裟ですよ。それよりすごかったです、今さっきの《盾術》! 会得されたんですね」

「はい! つい先週、パーティメンバーとダンジョン探査をしている時に!」

 

 嬉しげにうなずく宥さん。スキルを獲得したのは本当に最近のことみたいだけど、そう思わせないほどにスムーズかつスマートな体の動きと踏み込み、そして受け流しだった。

 思うに、スキルを得る前から積み重ねて培ってきたものがついに花開いたんだろう。習熟度速度の向上ってのはつまるところ、それに纒わる理解や認知にも補正をかけるからね。

 

 何年もの間、盾を持ってひたすらに守護役を務めてきた鉄壁の彼女。そのノウハウや身体の使い方、盾の扱いはスキルに依らず経験値として蓄積されてきた。

 今までも宥さんなりに少しずつ理解を深め、己の血肉として取り込んできたんだろうけど……スキル《盾術》による補正を得て、一気にそれがブーストされたんだ。

 御自身の手を見つめ、宥さんはしみじみと語る。

 

「不思議な感覚です。これまでも問題なく盾を使い、身体を張って攻撃を受けてきたんですけど……それが今ではまるでなってなかったのだと、はっきり理解できるんです」

「それは本来、スキルを得ずともいずれ到達する領域でした。ですが《盾術》を得たことで早まったんですね。習熟度とはつまり理解度。御自身の持つ力への、自覚を早める効果があるんですよ」

「この分でしたら、《剣術》のほうも習得すればもっと実力が上がる気がしています。公平様、私のステータスを御覧ください」

 

 習熟度補正系スキルの効果は、ともすれば地味に思われがちだし場合によってはショボいと言われることもしばしばある。分かりやすく威力向上につながるわけじゃなくて保有者自身の努力が求められる分、評価が低いんだね。

 だけど逆に言えば、努力を積み重ねる人にとっては何よりも報いとなり得るスキルだと俺は思うんだよ。どんな人も様々に積み重ねていく、経験を活かすためのサポートを担ってくれるんだ。

 

 宥さんが神妙に、自身のステータスを見るよう促してくる。きっと俺に、オペレータとしての評価を下してほしいんだろう。システム領域の、ひいては世界の基盤たる私の見立てを、彼女は信じたいのだ。

 それに応じない俺ではない。《よみがえる風と大地の上で》を使用し、俺は望月宥のオペレータとしてのすべてを詳らかに見つめた。

 

 

 名前 望月宥 レベル126

 称号 防人

 スキル

 名称 防御結界

 名称 俊足

 名称 身代わり

 名称 気配遮断

 名称 気配感知

 名称 盾術

 

 

 GWの探査者ツアーの時より、格段にレベルが上っている。たしか当時は83とかそんなだから、数カ月程度で1.5倍近くにもなったわけだ。

 それだけでももう、よっぽどな修練を積んだのが分かるよ……《盾術》だけでなく《気配感知》だってあの時には持ってなかったはずだ。

 

 継続して、努力されてきたんだ。俺の目から見ても血の滲むようなそれが分かる、尊敬に値するステータスだった。

 彼女の手を握り、輝きながら優しく光る。

 

「あ……! 救世主様、シャイニングなさって……!!」

「シャイニングなさって……? あ、あーと、こほん。宥さん、あなたは立派な探査者です。しっかりと地に足をつけて探査を繰り返し、地道に己を高めて来られたのが今、あなたのステータスを拝見してよく分かりました。尊敬します」

「そんな、もったいないお言葉……」

「自信を持ってください、あなたは今後ももっと上を目指せる素質がたしかにあります。S級に到れるかは正直、俺からはなんとも言えませんけど……今現状でもB級に近い力は十分にあります。そして《剣術》を会得して火力という弱点を補えば、あるいはA級にさえ届き得る」

「…………!!」

 

 シャイニングって動詞じゃねえんだわ! と言いたくなるのをぐっと堪えて俺は、どちらかと言うとコマンドプロンプトとして宥さんに僭越ながら評価を述べさせてもらった。

 すべて事実だ。望月宥というオペレータにはまだまだ高みを目指せる素質があるし、今まさに直面している明確な課題をもクリアすれば、きっと葵さんのようなA級探査者の背中だって見えてくるだろう。

 

 香苗さんとか愛知さんは……どうだろう? さすがにS級となると桁が違うからなあ。

 A級トップランカーに近いランレイさんやアンジェさんだって相当な高みだし、そのへんを引き合いに出すのはさすがに難しい段階ではある。葵さんだってギリギリだよ、実際は。

 

 でも、それでも。いつかはこの人なら至ってくれる気がする。

 これまでの努力や向上心にあふれる姿を見た俺には、そう信じられるよ。




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