攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ワールドプロセッサは人の称号欄をなんだと思ってらっしゃるのか?

 三界機構の力をフルに使えるようになった、ミュトスの今後の戦闘スタイルについてはさておき。ひとまず心身と魂に変調を来しているようなことはなさそうでそこは良かった。

 となると、次に気になるのがやはりこれだろう。俺は静かに、なんでもないことのような口調で問いかけた。

 

「それで……君の中にいる三界機構の御三方は、元気にしてるかな。ああいや、元気にしてるって言い方もおかしいんだけど」

「三界機構の方々、ですか?」

「うん。君だけでなく彼らにも、何かしら変化がなかったか気にしておきたいからね。かつての同類項としては」

 

 ちょっと言い淀むニュアンスにならざるを得ないのは、やはり彼らがその昔、異なる世界におけるワールドプロセッサだったからだろう。

 三界機構──魔天、断獄、そして災海。消滅間際のところをこの世界のワールドプロセッサに回収され、ミュトスに組み込まれることとなった三体に対して、私という存在そのものからして気にならないわけがない。

 

 ある意味では俺の"もしも"の姿だったかもしれない。邪悪なる思念に食われきってしまっていたら、彼らのように玩具にされてしまっていた可能性も高いからね。

 脳内のアルマがなんか言いたげだけどこれについては黙ってなさいとしか言えない。三界機構を三界機構としてしまった他ならぬ元凶そのものであるこいつには、このことについては何一つとて口に出す資格などありはしないのだから。

 

 正直なところ、こちらが緊張しそうな一瞬。

 怒り、嘆き、憎しみ悲しみに染まっていてもおかしくないものを……けれどミュトスの中にいる彼らの意思は、あっけらかんとした明朗快活な声で代弁された。

 

「あ、はい。それはもうぜんぜん元気にやり取りされてます! 今もコマンドプロンプト様に向けて、わちゃわちゃって騒がしくアレコレ仰ってますね!」

「えぇ……?」

「あ、魔天さんが"コマプロー、ヤッホー"って言ってます。断獄さんも"世話かけてすまねぇな、コマプロ! "、災海さんなんて"そのうちシステム領域で直接やり取りをしよう、コマプロ"って言ってますよ!」

「コマプロ止めろ、略すな略すな! って……マジで?」

「ジーマーでーす」

 

 軽い! めちゃくちゃ軽い! あとコマプロ言うな、コマンドプロンプトだから!

 思わずシリアスめな空気が雲散霧消するほどのライトな挨拶。三界機構達、予想以上に元気そうでそれは何よりだけれど、なんだか気が抜けるなあ。

 

 まあ、こちらへの気遣い込みであえてのそういう言動な可能性も有り得るからなんとも言えんけど。

 自我を取り戻した途端、これ以上、この世界に迷惑などかけるまいと自壊を選んでくれたような高潔なモノ達なんだ。根底にあるのはやはり、慈悲と慈愛だろうからね。

 

「っていうか災海、システム領域で会うってどういうんだ? たしかに以前、ミュトスが権能を取り戻した暁には、多少なりとも顕現できるみたいなことをワールドプロセッサが言ってたけど」

「まさにそれですコマンドプロンプト様。祝! ミュトスちゃんフルパワー記念ってことでワールドプロセッサ様から一旦、システム領域に帰るように指示が下りまして。なんでも三界機構の御三方の意思を、外部に出力するためのアップデートを施してくださるそうでごぜーやすー」

「そうなのか? ……それでか。ぜひとも顕現して俺と直接やり取りしたい、と。俺としても願ったりかなったりだな、それは」

 

 ナチュラルに俺と直接話し合うつもりらしい災海について問えば、なるほどワールドプロセッサによるアップデートを受けに近々一度、この子はシステム領域に帰還するんだな。

 ウーロゴスをすべて取り戻した今、精霊知能としてのミュトスを構成するのに三界機構の大半をリソースに費やす必要はもうない。つまりいくらか浮いた分のエネルギーを、彼らは彼ら自身のために使って良いわけだね。

 

 それをもって彼らはミュトスに組み込まれたままながらも外部に顕現を果たそうというわけか。

 正直、いつまでもミュトスのなかに閉じ込めっぱなしというのも心苦しい話だったから喜ばしいよ。

 

 

『……お前もやろうと思えば僕を表に出すことくらいできるだろうけど、やる気はさらさらないって感じだね。ふん、まるきり立場が逆になってしまった。浮かれた世界の魔天に、血で血を洗う闘争世界断獄。そして楽しくもおぞましき災海の世界──全部まとめて食らって、有効利用してやっていたのに。くだらないね、まったく』

 

 

 似たような立ち位置ながら、やらかしたことがアレすぎる脳内のアルマがブツクサ言っている。

 たしかに俺も、やろうと思えばアルマを顕現させることはできる。できるけど誰がやるかそんなこと、少なくとも山形公平が人として生きている間は絶対にやらないぞ。

 

 別にアルマが憎くて言ってるわけじゃなく、シンプルにそれだけコイツのやらかしが大きすぎるからね。

 最低限、邪悪なる思念によって引き起こされた事象の後始末がすべてついてから、かつコイツがある程度理性と正気をもって自身のこれまでを振り返られるようになってからでないと、とてもじゃないけど顕現なんて認められるわけがないんだよ。

 

 ──と。称号が変わった。ワールドプロセッサからの連絡、というかこの流れだとアレだな、アルマへのツッコミか。

 ちょくちょく脳内で戯言が流れるとこうして外部から反応が来るの、なんだか不思議な気分なんだよなー。人の称号欄を私物化してくることも含めて。

 

 さておきステータス、ステータス、と。

 

 

 名前 山形公平 レベル1306

 称号 真に罪深き者。其は数多の世界を食い潰せしモノ

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING

 名称 神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─

 

 称号 真に罪深き者。其は数多の世界を食い潰せしモノ

 解説 浅ましき夢に溺れし愚者に、己を正当化する謂れなし

 効果 なし

 

 《称号『真に罪深き者。其は数多の世界を食い潰せしモノ』の世界初獲得を確認しました》 

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……夢に浮かれ、世界の血に濡れ、おぞましき悦楽に浸りし外道に与える自由なし。コマンドプロンプトの慈悲に心からの感謝を捧げ、今後未来永劫にも等しい時を過ごしなさい》

 

 

 ちょっと待て、これだと俺が罪深くて数多の世界を食いつぶしたやべーやつみたいに思われるだろ!

 人の称号欄だぞ、何考えてるんだ!

 

 良かったー探査者証明書の称号欄を、コロコロ変わるからって非記入項目にしておいて。思わず天を仰ぐ俺と、唐突なことにきょとんと目を丸くするミュトス。

 脳内では案の定ながらアルマもギャースカ騒いでいてなかなかにカオスだよ。怖ぁ……




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