攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いつの日か、大空を自由に飛び回るために

 さておきご飯も食べ終えて俺は、アイと風呂に入って十分に温まってから自室に戻った。

 ホカホカのカイロみたいに暖かく、そして柔らかなミニチュア・ドラゴンを肩に乗せながら机に向き合いパソコンを立ち上げる。

 

 もう後は寝るだけで、アイもちょっぴりウトウトしてるんだけどその前に一つだけ、見ておきたい動画があるのだ。

 前から言われていた、WSOの新マスコットである子供ドラゴンモンスター……すなわちそう、アイのデビュー動画がいよいよ公開されたそうなのだ。

 

 元々、この子が今の形になってすぐにWSOはマスコットキャラとしての採用を決定していた。

 ソフィアさんとかヴァールが動くよりも前に、この子の行く末を案じたマリーさんが取り計らってくださったのだ。

 

 なんならWSO上層部もこの子の愛らしさにやられた人もいたようで。

 モンスターであるがゆえの危険性への指摘とそれへの反論や対策なども議論が交わされつつ、しかし泣く子も黙る特別理事の鶴の一声で採用が決まったらしいんだよね。

 

 それから先はまあ、こっちもこっちでいろいろ騒動があったからあまり注視もしていられなかったんだけど。折に触れてアイは近くのWSO研究施設に行って、スタッフさんにあれこれとマスコット計画を進められていたりする。

 そして今日、ついに動画投稿SNSにおけるWSOの公式チャンネルにて、アイのデビューが発表されたってわけ。

 

「アイも全国デビュー……いや全世界デビューかあ。受け入れられると良いなあ」

「きゅうー……きゅ、きゅう?」

「世間様に浸透すれば、今すぐには無理でもいつの日か、お前も大手を振って外を飛び回れるかもしれないもんなー」

「きゅう? きゅう〜」

 

 頭を撫でると、眠気からトロンとした顔をしつつも嬉しそうに鳴き、俺の腕に抱きつき頬擦りする赤ちゃんドラゴン。

 なんというかわいさ。けれどこの子はどうしたところでモンスターだ。まったく無害なんだけど、事情を知らない世間の人達がそんな認識を持つはずもない。

 

 きっと、WSOの広報がどれだけ手を尽くしても批判の声、危険視はあるだろう。それは仕方のないことだし、当然のことですらある。

 それを今後の活動において、どれだけ払拭していけるか。アイには自覚がないことながら、間違いなくこれはこの子の将来、行く末に関わる重大な第一歩だった。

 

 公式チャンネルを開く。さっそくサムネイルが表示された──"WSO公式マスコットモンスター、アイちゃん参上! "などと、公式にしては多少砕けたタイトルの動画がすぐに目に入る。

 

 ていうか今日の昼、投稿されたのにもう100万再生を突破している。

 怖ぁ……まあモンスターがマスコットに! なんて前代未聞だからね。モンスターも対話を試みたりいわゆるテイムをしようとしたりする動画配信者もいたりするようだけれど、案の定ながらどれもうまいこと行ってないなかでのこれだもんね。

 

「アイ……世界がお前に目を向けた。これからが本当の第一歩、だぞ」

「きゅうー……きゅうー……」

「……俺が生きている間は、何があっても傍にいて味方になるからな。心配ない、必ずうまくいく」

 

 もう完全に眠りだしちゃったアイに、一人語りかけながらもその小さな体をベッドに乗せ、布団を被せてやる。

 俺のほうが緊張してるなあ。でもどうあれこれは本音だ、世間がこの子を受け入れるのに時間がかかるだろうってのは織り込み済みだし、だったら俺はできる限りこの子の傍にいるだけだ。

 

 いつか、俺達の誰もがこの世を去っても──この子が愛し、愛される世界であるために。

 無条件の許容など求めるべくもないけれど。できる限りの努力をしていって、せめて寛容に受け入れてもらえるだけの土壌を作っていければ良い。それこそ今後100年の時をかけてでも、だ。

 

 

『さすがに甘いよ、コマンドプロンプト。なんだかんだ君の甘さは嫌いじゃないけどね、それでも無理な話だってある……これまで散々にこの世界を痛めつけてきた連中の仲間だよ? 家族や仲間を食らってきたかもしれないモノの同類だ、受け入れるとは到底思えないね』

「……かもな。だけど、それでもこれがアイのためになると信じている。今から先、遠い未来のアイの生命を、幸福なものにつなげてくれると信じたい」

『信じるのは好きにすれば良いけど、今回ばかりは君の見立て通りにはいかないんじゃないかなあ。ま、精々健気にやりたまえよ』

 

 

 脳内のアルマも、手厳しい意見を述べてくる。正直なところ一理ある、というかそのとおりかもしれない。

 だけど、それでもこの子を、アイをアイとして存在させることを選んだのは俺だ。だからこそ俺は、この子がこれから生きていける土台が形成されることを祈り、願う。

 

 そのためにできることはなんでもやりたいよ。そしてこれはそのための第一歩なんだ。

 たとえどれだけ厳しい意見に晒されても、その先にアイの居場所があると信じて……俺は、動画のサムネイルをクリックした!




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