攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ギネスに載っちまうぐれェの愉快なオブジェ

 ダンジョンを進むに当たり、先のソフィアさんの言葉のとおり、やはりモンスターは残っていて、俺たちに襲いかかってきた。

 お互いのお手並みを拝見、とのことなのでまずは俺と香苗さんがそれぞれ、1部屋ずつ攻略した。既に手慣れたやり方で、俺は殴る投げる組み伏せるの徒手空拳、香苗さんは虹の架け橋を出現させての縦横無尽、オールレンジの光魔導だ。

 

「公平くん、すごい」

「ミス・御堂もさすがです……A級トップランカーの実力はこれほどのものですか。もはや、S級にも到達しているように思えますね」

 

 リンちゃんとベナウィさんの感想を受けつつ、俺は自分の掌を見つめた。

 今回、俺はつい先日に得た称号効果、スキルによるバフを体の一部分に集約させる能力を使ってみた。レベル的には何ら問題ないモンスター相手ゆえ、うってつけだったからね。

 

 収束させたのは主に右拳だ。すると途端に、俺の右手が青白く、燃え上がるような光を纏ったんだからまあ、驚いたのなんの。

 別に熱とかはなかったんだけど、一瞬ドキッとした。だって周囲に酒が山ほどあるわけで、ないとは思うけど引火とかしたら俺たち丸焼けじゃん。焼き山形のできあがりじゃん。

 

 まあ実際は特にそんなこともなく、普通に光を放つだけだったんだけど。

 ただし威力はとんでもなかった。なんせ、殴ると敵が溶けたんだもの。吹っ飛んだとか潰れたとかじゃなく、溶けた。マジで溶けた。

 

「すさまじい威力ですね……フレンドリーファイアが起きたらと思うと、怖くて近付けないほどには」

「俺の場合、ソロ専門みたいなところがありますからね。それを踏まえると、相性は良いのかも知れません」

 

 あまりにもあんまりな過剰火力に、戦慄を禁じ得ない様子の面々。香苗さんすらドン引きしているあたり、本当にヤバい威力なんだなって分かる。

 ていうか、何気にリンちゃんに見せていい光景じゃなかった気がする。熱したバターが溶けるように、モンスターがそうなっていったわけだし。

 ちらりと確認すると、案外リンちゃんは平然としていた。

 

「ん……私も、探査者。モンスターが色んな風に死ぬの、見てる。慣れてる」

「そ、そう……でも、気分の良いもんじゃないよね。ごめん」

「気にしてないからへーき。それに星界拳士、野生の獣相手にもっとアレなことしてる」

「アレってなに!?」

 

 という、やり取りもあったり。星界拳士のみなさん怖ぁ……アレなことってドレなことなんだろう。知りたくないけど気にはなる。

 

 さておき、そんな感じで俺や香苗さんは自分たちの戦い方を示した。となれば、次はリンちゃんとベナウィさんの番だ。

 階層降りて、三部屋目。リンちゃんが一人、モンスターを相手取っていた。

 

「みょげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「鳥、大きい……コカトリス?」

「いえ、よく似ていますがヘビニワトリですね。コカトリスはB級、こんなところに出てくることはありません」

「そっか」

 

 尻尾がまんま蛇──先端が頭部で、シャーシャー言ってこちらを威嚇している──な、全長3mはある鶏。まさしくD級モンスターのヘビニワトリで、このランクのダンジョンで見かける中では一番大型だ。

 ちなみにコカトリスは今、ベナウィさんが言ったようにB級モンスターで、蛇の尾をした鶏ってのは変わらないんだけど、色合いとか、細かい見た目とか、何より強さが断然違う。

 

 まあ、どうあれリンちゃんの敵じゃないんだけど。

 突進してくる鶏を、少女はふわりと軽々、宙に舞って回避した。

 ヘビニワトリの頭上、華麗に宙返りなど決める。一瞬にして目標を見失った敵は左右を見回し、そして。

 

「────しゃっ!!」

 

 真上にいるかと頭をあげ上げたと同時に、リンちゃんの星界拳が唸った。

 鞭のようにしなる右脚。昨日、中華街の公園にて見せた時よりずっと早く、まさしく神速で敵を撃つ。

 

「みょげ──っ!?」

「我が脚、龍が如く!」

 

 見事に頭部側面をクリーンヒットし、ヘビニワトリの頭ごと、体が跳ねる。そこを、さらなる追撃が走る。

 後ろ回し蹴り、かかと落とし、そのまま空中で前転してもう一回、かかとを落とす。すべて顔、頭に狙いを付けての執拗さだ。怖ぁ……

 最後のかかと落としで頭から地面に叩きつけられる3mの巨体がダンジョンを揺らす。あっ、下敷きになって酒瓶がいくつか割れた。

 

「これぞ星界龍拳! しぃぃぃぃやっ!!」

 

 トドメと言わんばかりに、いや実際に必殺の一撃なのだろう。リンちゃんは遥か頭上から直下、一筋真っ直ぐな雷光めいて蹴りを落とした。

 

「ミ────」

 

 断末魔さえ途中で途切れる、そんな苛烈な破壊力。踏みつけにされた頭部が、グシャグシャに弾けて千切れている。

 ううむ……アレなことになった。リンちゃんがグロテスクに耐性があるの、理由が分かった気がする。

 何ならモンスターゆえ、血やら臓物やらぶちまけずにすぐさま塵に消えるだけマシだわ。

 

「ぶい」

 

 一応生き物の頭だったものを、凄惨なオブジェに変えた少女は、至ってマイペースにピースなんてしてみせた。

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