攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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うっかりベナウィ

「正直、破滅的な威力であることしか分かりませんでした」

「ぴかぴか、ばりばり、どっかーん! すごい、でもよく分かんなかった」

「ええと、その。勉強とか以前に、確認にも至らなかったかな、と」

「ははは……申し訳ない。手持ちの技の中でも一番広範囲のものを使ってしまいました」

 

 率直な感想を述べる俺と香苗さんとフェイリンさん。受け手のベナウィさんとしては、もう平謝りしつつ曖昧な笑みを浮かべるしかないようだ。何か汗かいて焦ってる。

 

 破壊の跡が残る、なんて表現さえも生易しく思える。

 破滅そのものの光景が広がる部屋にて一旦、休憩がてら俺たちはベナウィさんの見せた、スキル《極限極光魔法》について話し合っていた。いや、というかほぼ異口同音に分かりませんでした! って、言ってるだけなんだけども。

 ベナウィさんが、人好きする温和な笑みで眉を下げつつも言う。

 

「いえその、たまにやってしまうのですよね……ついうっかり、何もかも薙ぎ倒してしまうことが。よく師匠からも、マリアベール様からも叱られたものです」

「あ、あのマリーさんからもですか」

「あの方、本気でお怒りになると口調が荒くなるのです。怖いんですよ」

「あ、まあ……それは知ってます」

「なんと! あなたは何回、叱られましたか? いやはや同志がこんなところに」

「違いますけど!? 別のやつに怒ってる場面に出くわしただけですけど!」

 

 嬉々として、叱られ仲間ができた、と喜ぶベナウィさんには悪いけど。前に見たマジギレマリーさんはシステムさんとリーベに対してのものであって俺相手じゃない。それでも怖かったなあ。

 ていうかこの人、どんだけあの人に叱られてるんだよ怖ぁ……肝の座り方おかしいだろ、あんなキレられ方したら二度と怒りを買わないようにしよう、とか思わないんだろうか?

 聞いてみると、何とも反応に困る答えが返ってきた。

 

「もちろん、ああもう二度と怒らせないようにしよう、とは誓うんですけどもね。ついうっかり、技の選択を間違えたり約束の日取りを間違えてしまうんですよ、はははは」

「えぇ……?」

「ちなみに直近でもマリアベール様に叱られましてね。いやあ、さすがにお偉方の飲み会で一発芸と称し、今みたいなことをしてしまったのはまずかったんですねえ」

「何してるんですか!?」

 

 この人、見かけによらずめちゃくちゃだぞ!?

 まさかの、思いもしなかったベナウィさんの、本性っていうか性格に思わずドン引きする。怖ぁ……

 リンちゃんも香苗さんも、目を丸くしている。さもありなん。

 いかにも真面目らしい、背筋を伸ばした姿勢正しいスーツ姿の人が、だ。まさかマリーさんに、ことあるごとに叱られている問題児だなんて誰が予測できるんだ。

 

「ベナウィさん、もしかして……変なおじさん?」

「いえいえ。ただ、すべてにつけ雑とはよく言われます。私としては、結構細かいところにも目を向けられる、気配り上手と自認しているんですが」

「あの、そんな認識なのに技を間違えたりするのですか……?」

「よく気が付くのと、実際にそれを踏まえた行動ができるのとはまた、違いますからねえ。とりあえず吹き飛ばせば解決するなら、細かい手順など省く主義なんですよ、私」

「怖ぁ……」

「爆裂おじさん……」

 

 俺もリンちゃんも、返ってきた答えに唖然とせざるを得ない。香苗さんも閉口しているみたいで、複雑な表情をしていらっしゃる。

 仮にこの人の言っていることが本当だとして──つまり、周りをよく見て細かいところにも気が付く性格の方だとして。そこから出てくる答えがとりあえず吹き飛ばそうはおかしいだろ、明らかに。

 インプットはともかくアウトプットがズレている。それも文字通り、破滅的に。

 俺は、恐る恐る尋ねた。

 

「あの……普段の探査でも、そんな感じで?」

「ええ。よくパーティを組ませていただいている、友人たちからは好評なんですよ。うっかりダンジョンテロリスト、なんて親しみある渾名もいただきましてね」

「親しみ……?」

「いやあ、毎回毎回、探査の度に必ず一度はこの手のうっかりでダンジョンをめちゃくちゃにしてしまいますから。ははは、よく特徴を捉えてくれている渾名だと感心しているんですよ」

「毎回こんなことを、一度はしているんですね……」

 

 言っちゃ難だが、よくこんな人と毎回誰かしら、組んでくれるなあと思う。

 まあ、このとんでもないうっかりがなければ真面目でまともな人だし、差し引きしても組みたくなるもんなんだろう。それにうっかりとはいえ、結果的には探査の役には立っているのだし。

 

 ただ、一緒に組む人たちの大変さは計り知れないと思う。

 この人の友人もそうだし、ぶっちゃけ今の俺たちもそうだ。一歩でも部屋に踏み入っていたら、アレに巻き込まれていたかと思うとゾッとする。

 朗らかに笑うベナウィさんに、複雑な怖さと親しみを抱く俺だった。

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