攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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各勢力が牽制しあって身動き取れないよくあるアレ

 今はもう失われた世界について想いを馳せつつもテクテク歩いていけば、隣町の商店街を下ったところにあるマンションが見えてきた。

 最近建てられたばかりのでっかいマンション。ここの最上階こそがフロア丸々、織田の買い上げた現世の居城ってことになるね。

 

 マンションの上のほうからは概念存在の気配がやはり結構して、さながらあそこだけ概念領域の様相を呈してすらいる。北欧大神たるオーディンの、カリスマ的な威圧をも軽く感じてくるほどだ。

 その威容を見上げつつも、今さらながらとヴァールが俺に尋ねてきた。

 

「山形公平。最後に確認だが、この会談にワタシも乗り込んでよかったのだな? 以前ソフィアに対してはストップを掛けていたようだが」

「ああ、そこは大丈夫。向こうもこちらも状況が変わったんだ……織田は今や概念存在のなかでも、現世とのパイプを公的に認められたいわば外交官の立場に据えられたらしいし」

 

 当然の疑問、質問にすぐさま答える。ヴァール──そしてソフィアさん。WSO統括理事が北欧神話の最高神と接触することの意味と危険性。それらは抱いて当然の懸念だからね。

 事実、以前俺が織田と面会した際にソフィアさんが自分も出向くと仰られた時には申しわけないながらも謹んでお断りさせてもらったりしていたし。

 

 それっていうのも、その時点では織田も勢力としては単独で現世に居を構えて動いていたからだ。

 そんな彼を当然、注視していただろう神や悪魔がソフィア・チェーホワとの接触を知れば、下手すると概念領域内が盛大に割れる可能性があったからなんだよ。

 北欧がそれやるなら俺らもやるもんね! とか言い出す他の神話カテゴリとか悪魔とかは絶対に出てきただろうからね。

 

 ただ、そんな概念領域ギスギス事情も最近になって情勢が大きく変わったのだとは、他ならぬ織田本人からSNSでの連絡で先日、知ったことだ。

 きっかけは言うまでもなくサークルとダンジョン聖教過激派の壊滅。さらに言えばそこに加担していた委員会側の悪魔達の敗北と、一部捕縛が要因だったのだという。

 

「元から勝手に動いていた悪魔とか、出処不明の謎の神の権能とか。向こうの神や悪魔にとって、それぞれお互いに突かれると痛い腹ができちゃったみたいなんだな、これが」

「あー……神からすると悪魔が委員会に戦力を派遣したってなってー、悪魔からすると神々が委員会にウーロゴスを提供したってなるとー。本当のところはどっちも無実なのに、言いわけしづらい状況ができあがっちゃってるんですねー」

「そういうこと。そもそも悪魔はそこまで連帯意識がないし、神からしても異世界の神の権能なんてしったこっちゃないのが本当のところなんだけど……それを承知の上で、お互いに痛み分けの形に持ち込んだわけだな」

 

 神々がウーロゴスを提供し、悪魔が委員会に直接協力していた。状況的にそう見えなくもない形だったのが、サークルとアレクサンドラの実態から浮き彫りになった。

 それを受けて両サイド、このことについてはお互い棚上げしてなかったことにしたのだ。

 

 お互いに身に覚えのない話、けれど現実として干渉の形跡がある。そこを突き合うのはあまりに泥沼だと双方が判断したゆえ、暗黙のうちに黙殺した形になるそうな。

 で、その結果として神々も悪魔も逆に歩み寄りを見せるようになったのだと織田のメッセージには記されていた。

 

 お互い痛い腹──実際全然痛くない腹だ──を探り合うのを厭うた末に、だったらむしろ連帯して現世に向き合っていこうという選択をしたのだとか。

 つまりはカテゴリ単位での神と悪魔の結束、同盟が結ばれたことになるね。ここについては、政治にも明るいヴァールが軽くため息を吐きながらコメントした。

 

「よくある話だな。どちらも謂れも覚えもない瑕疵ながら、指摘されると具合が悪い。それゆえ互いにその件についてはなかったことにして、むしろ友好的関係を構築していく……と。なるほど、見えてきたぞ。そこに独断で動いていた北欧が楔になったな?」

「さすが、御名答。お互い困った末におずおずと歩み寄ろうとしていた神と悪魔に、だったら自分がその仲を取り持つと言い出したのが織田なんだ。どのカテゴリにも無断で現世に居を構えた彼の存在は、逆に神と悪魔にとって都合が良かったんだとさ」

 

 肩をすくめる。さすが智慧と戦いの神と言ったところか、実に上手でかつ、大胆に勝利をもぎ取るムーヴをするよ。

 神と悪魔、双方にとって良くも悪くも現世に対する試金石でしかなかった織田の存在が、ここに来て二つのカテゴリを結びつけるファクターになったのだ。

 

 そもそも織田というか北欧神話圏は独自の動きで現世に降りていた。神や悪魔もそれを黙認する形で観察していたんだけど、サークルと過激派のこともあってこれまで以上に現世への関与について相互監視を強めざるを得ない状況に陥った。

 そうなると元からフリーダムに動いていた織田の存在ってのはお互いにとって都合が良かったんだな。カテゴリ自体は神なんだけど織田は悪魔達とも交流があってかつ、神とも距離を取って動いていたまさしく中立の立場だからね。

 

 そんな織田自身の働きかけもあり、神と悪魔はカテゴリ単位での協力体制を、たとえ嫌々にせよ結ぶ中で彼を利用した。

 これまでの現世に対しての北欧神話の動きを公的に認め、神と悪魔双方が擁立する概念領域を代表しての監査官……外交官として正式に現世に派遣するという形式を執ったのだ。

 

「これによって織田は晴れて概念領域と現世をつなぐ正式な仲介者となったわけ。だからWSO統括理事という現世の代表者ソフィア・チェーホワと会談することも問題なくなったんだってさ」

「っはー……まだるっこしいですねェ父様。ソフィアを引きずり出すのにその織田っての、そんな立ち回りまでして」

「ですけど、旨味は十分って感じですねえ。さすが最高神、抜け目ない動きです」

 

 シャーリヒッタとミュトスも感心するやら呆れるやらだ。

 織田はまさしく今の立場、すなわち公的にソフィアさんと会談する場を設けるためにそのような動きをしてみせた。

 恐るべき策謀というか迂遠さだ、そこまでやるか? って感じすら抱くよね。




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