攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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もはや特定個人でなくその肩書そのものにトラウマがあるヤーツ

 概念領域に対しての牽制さえ念頭に入れて、この大ダンジョン時代を形成構築して現世を牽引してきたソフィアさん。

 そんな彼女の奮闘に対して、織田は……面白そうに笑っていたのを止め、真摯で誠実な、決して敵対的でない眼差しを向けてきた。

 

「敬意に値しますよ、ソフィア・チェーホワ。置かれた状況、成すべきことを前に何一つ退くことなくあなたは進み続け、見事に今この状況にまで至ってみせた。為政者として素晴らしいの一言に尽きましょう」

「それは、褒め言葉と受け取っても?」

「本意ですとも──できるならばあなたの魂をヴァルハラへと迎えたいほどです。ここまでやってみせたあなたはまさに古今無双の英雄英傑が集いし我が領域に迎えるになんら不足はない」

 

 本気で言っているのが分かる、そんな表情と声色。織田、いいやオーディンは心底からソフィアさんを評価し、敬意を払い、叶うならば自らの陣営に招きたいとすら言っているんだ。

 策謀巡らすのが常の戦神からの、混じり気なしの純粋な賛辞を受けてはソフィアさんも多少、照れるものを覚えたようで恥じらいながらも微笑み、会釈する。

 

 そして織田のそうした言葉に対し、やはり柔らかな眼差しと言葉でもって丁寧に返礼したのである。

 

「お言葉、まことにありがたく……ヴァルハラというのも魅力的ではありますね。とはいえやはり私は人間ですから、やるべきことをやり遂げたのなら、終わりを迎えた暁には輪廻に帰るべきなのだとは思っています」

「そうですか。元よりシステム領域の側にあるあなたは、我ら北欧の世界観での死後を迎えることは望むまいと思っていました。それもまた良いでしょう。たとえどのような終わりを迎えるにしても、それでその命の成し遂げたことがなくなるわけではないのですから」

「ええ。私以前のアドミニストレータ達も、私以後の探査者達も。誰もがみんな私より先に旅立ちましたが、その意志は連綿と受け継がれている。だからこその大ダンジョン時代です。私やヴァール個人に拠らず、己の生をまっとうしたあらゆる人のレガシーこそを"時代"と呼ぶのかもしれません」

 

 決して自分達だけで作り上げた時代ではないと、そう語る彼女の顔は透き通った空のように綺麗で吸い込まれるようだ。

 そしてその瞳が見据えるのは、織田でも俺達でもない過去……彼女以前のアドミニストレータ達を皮切りに、この100年の中で知り合い、ともに生き、支え合い、けれど誰もが先に旅立っていった者達なのだろう。

 

 そんな人達も含め、みんなで作り上げたこの世界。それこそが大ダンジョン時代だと。

 そう語るソフィアさんに、俺も、織田も、精霊知能達もしばし黙祷するかのごとく……積み重ねられた過去に、思いを馳せるばかりだった。

 

「……………………貴重な話を聞けました。ありがとうございますソフィア・チェーホワ」

「こちらこそ、過分なお言葉を賜ったことは光栄の至りです、北欧大神オーディン。ありがとうございます」

「今後、折に触れて現世と概念領域の折衝のために言葉を交わすこともありましょう。その時はぜひ、この時代についていろいろとお伺いしたいところではあります。さりとて今は、より優先度の高い案件について話す時ですが」

「ヒェッ」

「えぇ……?」

 

 しんみりとした空気を変えるように、織田はそう言って今度はソフィアさんの隣りに座るミュトスを見た。途端、喉を小さく鳴らして怯えたような声を発する彼女。

 怖ぁ……怯えすぎだろ、最高神相手だから無理はないけども。かつての世界で水の女神をしていた頃の最高神さんが結構怖かったってのは聞いたけど、にしたってかなりの反応である。

 

 一気に緊張するミュトスの姿に、おや? と首を傾げる織田。彼からしてもこの反応は意外だったのだろう、そりゃそうだ初対面な上に別に北欧関係じゃない精霊知能だもんね。

 とはいえ一旦それは飲み込んで、彼は続けて語りかけた。

 

「あなたがミュトスですね? 邪悪なる思念によって喰われた3つの世界のうち一つより来訪し、この世界の真なる造物主・ワールドプロセッサによって保護され精霊知能として新生したモノ」

「は、はひ」

「そして……その身から分かたれし権能を委員会によって利用されていた、異なる世界の神。お会いできて光栄です、改めましてこの世界の概念領域は神のカテゴリ、北欧神話圏を統べる最高神オーディンです。よろしく」

「よ、よよよよろしくですすすす。ま、魔天世界から引っ越してきました元水の女神、現精霊知能のミュトスですう。この度は落っことしちゃった私の権能が大変なご迷惑をばおかけしましたたたたた。あわばばばば粛清だけは堪忍してつかーさい」

「…………山形公平? もしや私に関して何か、誤解を招くような説明を彼女に?」

「してないから! 純然たる誤解ですけどそれこそ!」

 

 あまりの怯え方に俺がなんかいらんこと吹き込んだんじゃないかと疑われてしまった! するかそんなこと、同盟相手の悪口言ってなんになるんだ!

 かくかくしかじかやーれんそーらん──と。そこからミュトスの元の世界のブラック最高神について説明し、俺はそれこそあらぬ誤解を解くのに時間を費やすのであった。




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