攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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山形少年、一つ歳を取るってよ

 いよいよ秋の涼しさも増してきた、10月下旬の24日は平日。

 この日もいつも通りに登校して、授業を受けて、もうあと数日に控えた文化祭が楽しみだなーみたいなことをクラスの友人達と語らっている俺ちゃんこと山形公平くんなわけなんだけど、とりわけ今日はいつにもまして個人的にお祝いムードだったりする。

 

 というのも実は今日、めでたくも15歳を卒業しまして晴れて16歳になったのですね。

 つまるところ換言するなら──16年前の今日、この日。山形公平はこの世に生を受けたのである。

 いわゆる誕生日ってやつなわけなのだ。

 

「誕生日おめでと、公平くん! これ、みんなで買ったプレゼント!」

「いつもありがとな、山形! クラスメイトとしても友人としても、探査者頑張ってるお前のこと頼もしく思ってるぜ!」

「梨沙さん、松田くん……ありがとう! 本当に、すごく嬉しいよ!」

 

 昼食時、梨沙さんがいつものグループのみんなを代表して俺にプレゼントをくれた。丁寧にラッピングされた小さな箱で、中身はお菓子、クッキーらしい。

 ちょっとお高めのブランド物を、わざわざ俺以外のグループみんなでお金を出し合って買ってくれたんだ。何よりもまず、俺を想ってそこまでしてくれたことが嬉しくて、ついジーンと涙目になるよ。

 

 これまでの人生、不思議なまでにぼっちだった陰に咲くタンポポこと山形くんは当然のように家族以外の誰からも誕生日とか祝われなかったりするから感動もひとしおだ。

 例外的に、中学の頃に同級生だった桜井って子はおめでとうの言葉をくれたりして、それももちろん嬉しかったけど……

 

 あの子の場合ガチのコミュ強陽キャだったもんで、クラスメイトや友人知人の誕生日は全部把握していて都度、祝いの言葉やらプレゼントやら送っていたからね。

 俺もその一環ってことだったんだろう。それはそれで律儀で好ましいし、何よりそこまで人に気を配れる姿は素敵なものだったなあ。

 

 まあそれは閑話休題として。そういう過去もあって、こうして明確に仲間内からプレゼントをもらえたりするのは嬉しい、本当に嬉しい。

 プレゼントを受け取る俺を見守ってくれていた片岡くんや木下さん、遠野さん達も温かな目で、松田くんに続いて祝いの言葉をくれる。

 

「おめでとう、山形。知り合って半年、いろいろ大変だったみたいだけど最近は落ち着いてるみたいだし一安心だよ。これからもよろしくな」

「探査者活動も無理しないで、健康に安全にね! 命あっての物種って、こりゃ釈迦に説法か。あはは……とにかくおめでとう!」

「そのクッキー、買いに行く時に私も自分用に買って食べたけどめちゃんこ美味しかったよ! もしよかったら後で味の感想聞かせてほしいな、お誕生日おめでとうー!」

「みんな……ありがとう。よく味わって食べるよ、もちろん。これからもよろしくね」

 

 俺を案じてくれる言葉の、優しさと気遣いの心地よさよ。あらためてこの高校に入学できて、このクラスの一員になって、みんなと知り合えて良かったって心から思う。

 この半年、本当にいろんなことがあった……自分の存在そのものが大きく変化するようなことさえ起きて、15歳という期間がまさに山形公平のターニング・ポイントだったなーって振り返れば思う。

 

 それを踏まえてもきっと、これからもいろんなことがあるだろう。人生は長いからね、いくらでもなんだって起き得る。

 だからこそ、今こうしてみんなとともに在れることをありがたい話だと思っていたいよ。システム・コマンドプロンプトとしてでなく人間・山形公平としてね。

 

 

『遠野真知子が推すレベルのクッキーか……気になる。おい、高々誕生日くらいで感傷に浸るセンチメンタルさなんてかなぐり捨てて、良いから弁当を食べたらクッキーをすぐに食えよ公平! そして美味しかったらその店行って山盛りクッキーを買え、他の商品も買い漁れ! 僕に甘味を提供しろ!!』

 

 

 脳内で食うことしか頭にない戯けが何やら吐かしてるけど無視だ。センチメンタル? これはエモーショナルっていうのさ。

 とはいえせっかくのプレゼントだ、できれば目の前で美味しくいただき、感想と感謝をあらためて伝えて笑い合いたい気持ちはあるよね。

 というわけで昼食のお弁当を引き続きぱくつく。いつもながら母ちゃんの料理、美味しいなあ。

 

「せっかくの誕生日だし、今日は放課後も遊びっしょ! ね、公平くん。それか、もしかして探査とかする?」

「もぐもぐ……んん? いや、さすがに誕生日まではしないよ。週末にはまた、探査者の知り合いさん達と集まってお仕事もあるしね。それまではちょっぴり充電かな、遊びにも行くよ、もちろん」

「やったぁ! ……だけどお疲れ様。週末までお仕事なんて、大変だね」

 

 梨沙さんの提案に即座に乗る。さすがに誕生日にまでダンジョン探査はする気になれないし、言った通りに週末金曜日にはちょっとした、どころでなく重要なお仕事がある。

 それを受けて労いの言葉をかけてくれる梨沙さんは天使だ。いやまあ、そのお仕事ってのは基本、荒事ではないんだけどね今回の場合。

 

 ……何かって言うと、もちろんサークルとダンジョン聖教過激派の後始末についての仕事だ。

 前に少し話していた、首謀者格達の取り調べ。それを行うにあたりソフィアさんやヴァールはじめ、一連の騒動で解決に主導的な役割を担った探査者達も立ち会うことになっていて。

 そこに不肖俺も、参加させてもらうことになっていたのだ。




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