攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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山形家は今日も平和です。これからも平和です。

 夕食時を迎え、リビングにてヴァールも含めた一家総出でテーブルを囲む。豪勢な料理がしこたま並べられた、我が家毎年恒例行事の食卓だ。

 行きつけの最寄りスーパーのお寿司、大きいプラスチック桶のそれが三つデデン! と真ん中に置かれ、各人の座席にはそれぞれこれまたスーパーで買ってきた大きなステーキが配膳されている。

 

 あとは適当に野菜サラダだ。ケーキは食べ終わってからってことで冷蔵庫のなかで出番を待つ身だね。

 これぞ俺の誕生日の夕食だよ、マジで毎年こんなんだ。ずいぶん懐かしい気分にすらなるのは、それだけこの一年が濃厚だったということだろう。

 春先までは受験で大忙しだったし、春以降は言わずもがな大変なことになっちゃったしね。

 

「いろいろあった一年、忙しかった15歳だったなあ……」

「何を年寄りくさいことを、と言いたいけどあんたの場合はね……ホント、よく無事に16歳になってくれたわ」

「そうだね、兄ちゃん今年の春から夏くらいまでホント、心配になるくらい頑張ってたもんね」

「優子もそんな公平に大分、不安がってたものなあ」

 

 ポツリと溢した俺ちゃんの言葉に、両親に妹が揃って反応してくる。それもやはり、今年の春から夏にかけてのアドミニストレータ計画実行期間におけるムーヴを思い返してどこか、ホッと安心したようなニュアンスで、だ。

 そうだね、本当にあの時期は家族をみんな不安がらせてたと思うよ。特に優子ちゃんは明確に情緒不安定になってたもんな。

 

 いきなり探査者になったかと思えば、スキルがポエミーだったり香苗さんだったり商店街のスタンピードだったりシャイニングだったりリッチだったりドラゴンだったり。

 挙句の果てにWSO統括理事まで絡んで首都圏だったり、マジで一回死んだりしちゃって覚醒なんかまでしちゃったりして。とにかく五体無事に生還できたのが我ながら奇跡ってやつとしか言いようがなかったもんな。

 いや、文字通り《奇跡》が起こったわけだけども。

 

 それ以後も倶楽部だったりサークルだったりダンジョン聖教過激派だったりと忙しないものの、明らかに家族に心配ばかりかけていたのは間違いなく4月からの3ヶ月ほどだった。

 自覚があるだけに申しわけなく、俺は苦笑いしつつもあらためてその節はと謝意を示した。

 

「いやーあの頃はごめん、不安がらせるようなことばかりしちゃってて。俺自身、いろいろ必死に駆け抜けてたから大変だったよ」

「探査者になった途端、お前みるみるうちに大きくなっていったもんなあ。あ、もちろん精神的にな。使命とか覚悟みたいなのが、何も知らなかった俺らからでも分かるくらい日増しに漲ってたぞ。ていうか今もだけど」

「アレコレ説明を受けて、正直ついていけない部分も多いけど全体は概ね分かったから納得するし理解もしてる。でもね、やっぱり親としては……心配よ、いつかアンタがどこかで殺されたりやしないかって。どれだけ本当はすごい存在でも、親だもの」

「ねえ、兄ちゃん。これからもくれぐれも無理とか無茶はしないでね。探査者だからって、コマンドプロンプトだからって命を捨ててまで人を護ろうとしないで良いよ……兄ちゃんとして、山形公平として長生きしてよ」

「父ちゃん、母ちゃん……優子……」

 

 ……誕生日だからだろう、意外ながらも当然の心配を吐露する家族に、俺は胸を痛めないではいられなかった。

 いつも明るいこの人達にここまで言わせるほどに、俺は傍から見て危ういことばかりしているんだ。その自覚を、今、はっきりと抱く。

 

 システム・コマンドプロンプトだからとかアドミニストレータだからとか、探査者だからなんて言いわけでしかない。

 使命感に駆られて、実際に必要があるからここまで頑張ってきたけど、それは家族に不安を与えて良い理由には絶対にならないからね。

 

 こればかりは反省しなきゃだ。見ればリーベ達精霊知能も神妙にこちらを見ている。

 顔を見合わせ、うなずく。そしてシステム領域サイドの俺達は、彼ら山形家の人々へと安心させるように笑みとともに告げるのだった。

 

「今まで心配かけて本当にごめん。そしてありがとう、そこまで想ってくれて……約束するよ、どんなことがあっても必ず無事に帰って来る。俺はもうシステム・コマンドプロンプトでもあるけど、だからこそ人間・山形公平としての人生を、周囲の人達を、幸福を大切に考えていく」

「リーベちゃんはじめ、システム領域数百から数千億にもなっていく精霊知能達も総出でサポートしますー……この家のみなさんには多大なる御負担をおかけしてしまっていますから、せめてアフターフォローは今後一生涯かけて行いますよー!」

「山形公平のご家族のみなさん、もちろんWSO統括理事としてのワタシも御子息の活躍には報いたく思っています。そのためにも今後も、彼には必ず健康無事にみなさまとの日常を過ごしてもらえるようこちらでもサポートに尽力しましょう」

「何があっても父様と周囲の人達には幸せに生きてもらうんだぜ! だから安心してください、だぜー!」

「不肖ミュトスもガンバリングなう! 今日から新生活ということでこの家から離れますが心はもちろん山形家ってなもんでして、第二の拠点からコマンドプロンプト様のために72時間働きマッスル!」

「ブラック企業!?」

 

 約一名、それはそれでそっちのが心配になるよと言いたくなる新米精霊知能ちゃんはいたものの……総じてみんな、俺と周囲の人達の幸福のために協力を惜しまないという意思を示してくれている。

 ありがたい話だ。家族もそうした声を受け、さらに安心したようにホッと微笑んでくれた。

 これは、これまで以上に気をつけて安心安全に生きていかないとなあ。




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