攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ミュトス、旅立ち(なお近所)

 16歳を迎え、新たな人生を周囲の人達とともに安心安全幸福に過ごしたいねー的な抱負を抱きつつも、寿司をぱくつきステーキの旨味に酔いしれた夕食。

 しかも実質的にミュトスの壮行会も兼ねているってなもんで、みんなも喜ぶべきやら惜しむべきやらって感じではあったものの……まあこちらについては今生の別れってわけでも全然ないからね。

 

 実に楽しいパーティーでしたともよ。食後のケーキもクリームたっぷりで堪らない美味しさだったし。

 脳内のアルマさんもそれ相応に満足するのもおかしい話じゃないほどには、俺も大変満足させていただきました。

 

「はひー、お腹満腹です、ごちそうさまでした~……さて、そろそろですかねヴァールさん」

「そうだな」

「ん……もう行くのか。ってまあ、ご近所さんには変わりないけど」

「はい! 諸々準備もできてますし、あとは帰るだけってなもんですけどねえ」

 

 そんな夕食も終わり、少ししたところでいよいよミュトスが旅立つ時だ。

 なんでもすでにヴァール同伴での下見やら家具の手配とかも終わっているから、本当に帰って風呂入って寝るだけみたいな感じらしい。

 

 そのうちマジで俺も一度、拝見させてほしい気がするなあミュトスの新居。ほら、今はまだでもそのうち一人暮らしとかすることもあるだろうから参考としてね。

 同じマンションの同じ階層、つまりほぼお隣さんが香苗さんのお家なこともあり、まあ確定で行く時はそちらにもお伺いすることになるんだろう。そちらも含め、俺の将来的な独立に向けてのお勉強といきたいところだ。

 

「ミュトスさん、いよいよ出立かあ」

「いろいろお世話になったわね、ミュトスちゃん。特に優子がホント、あなたには懐いて懐いて今も寂しそうにして」

「ミュトスお姉ちゃん……本当に行っちゃうんだ……」

 

 話を聞きつけて俺達同様、リビングでのんびりしてた両親と妹ちゃんがやってくる。その顔はいずれもひどく、寂しそうだ。

 なんだかんだと数カ月。元より住まいと身分が準備できるまでの居候って話ではあったんだけれど、すごく馴染んでいたからねミュトスは、この家に。

 リーベやシャーリヒッタ同様、この子ももはや山形家の一員なんだ。それは彼女が独立したって変わらない、揺るぎない絆の関係性だ。

 

 それでも別れは別れ、ということでセンチメンタルになるのももちろん理解するけどね。

 特に最近やってきた新しい家族達にもよく懐いていた──なんなら実兄よりはるかに懐いている。うらやましい──優子ちゃんなんて、目に涙すら貯めて名残惜しんでいるね。

 これにはミュトスもたまらず、困ったように笑いながらもその頭を撫で、言うのだった。

 

「たはは……名残惜しくはござんすが、さりとて近場にお引っ越すだけですから。また、いつでも会いに行きますよみなさん。こちらのほうこそ、本当に山形家のみなさまには大変お世話になりました。心の底から、感謝しています」

「それはこちらの台詞よ……ありがとう。向こうに行っても元気にしてね、何かあったら遠慮なくうちに帰ってきてちょうだい」

「相変わらず狭い我が家で恐縮だけど、いつでも帰ってきてくれて良いからな! ……それと外でもさ。うちの息子のこと、これからもよろしく頼むよ」

「…………はい。こちらこそ山形様にはお世話になりっぱなしですが、たしかに承りました。そしてありがとうございます、私のことをこんなにあたたかく迎え入れてくださって、そして送り出してくださって」

 

 言いながらミュトスの声も少し、震えている。彼女にとっても俺達山形家のみんなが家族同然の仲であったのなら、それはとても嬉しいし幸福なことだろう。

 お互い思い合い、けれど旅立ちの時だ。ヴァールが軽くその肩を叩けば、ミュトスもうなずき目尻に浮かんだ涙を拭った。

 次の瞬間にはもう、いつも通り太陽に向かう向日葵のような笑顔でもって、彼女は持ち前の明るさで宣言していた。

 

「それじゃあみなさま、不肖ミュトスめは行ってまいります! この数ヶ月、みなさまから受けたご恩情けっして忘れることはありやせん! 現世における私の家族、またすぐにお会いすることになりますがそれでも今、この時ばかりは旅立ちといたします!」

「ミュトス……」

「──そして。かつて調和と協調、水と豊穣を司る神だったモノとして、善き人々に祝福を。あなた方の人生が実り豊かでかつ潤い、平和と平穏そして愛に満ちたものでありますよう、ここに祈ります」

 

 精霊知能として。かつての異世界の神として。そして何よりも、この家に暮らした家族として。

 微笑みとともにそう言ってミュトスは、穏やかな微笑みとともに祈った。正真正銘、神の祝福ってやつだね。

 

 そうして彼女は去っていく。ヴァールに連れられ新天地へと。それを見送る俺達も笑顔だ。またいつでも会えるし、巣立ちは尊ぶべきものだ。

 お互いに笑い合って、俺達とミュトスはひとまずの別れの挨拶を交わしたのであった。

 

「──行ってきます!」

「──行ってらっしゃい!」




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