攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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第二部開始時点ですでに、目的自体は達成していた男

 能力者にも匹敵する力を持つ非能力者を、生み出すための力の発見と創造、そして伝播。

 それこそが藤近功が思い描いたサークルの本当の目的であるとするならば、その目論見自体はそれなりに成功したと言ってしまえる状況なのだろう。

 

 認定式の日に大々的に起きたテロリズム、そこで力を示した悪魔憑きにスレイブモンスター。

 それらは本質的にステータスがない非能力者であっても手にできる類の力だ。世間一般には関係なくサークルを潰滅させて関係者全員お縄にしたことで一件落着ってなもんだけど、水面下では決してそこでめでたしめでたしハイ終わり! と済まされるものでもないのは、ヴァールが難しい顔でモニターを見据える様子からも明らかだった。

 

『俺達サークルは敗れた。そして俺達は捕まり、今後法の裁きを受ける。それは当然だ、そうなって然るべきことを俺達はした。サークルを打倒したチェーホワ統括理事達は僅かな瑕疵もなく正しいことをしたし、ああ、なんなら幼い日に憧れた永遠の探査者少女の強さと誇り高さ、気高さによって裁かれることを光栄にすら思う──だがな。それでも言うぞ、俺達は、目的を、果たした』

『それは、どういう……』

『サークルの理想は大ダンジョン時代社会の打倒。しかし元よりそのような大事業を一代にて為せるはずもないのは承知の上だ。ゆえに現実的な目標として掲げたのは、ざっくり言うなら"ステータスに代わる人類の武器、その存在と入手法の発見および裏社会への伝達"だ。そしてそのために、俺達は倶楽部とやり取りしていた』

『……スレイブモンスターの売買か!』

『そうとも。俺達サークルがダンジョンコアを倶楽部に流し、そして倶楽部がスレイブモンスターを創りそれを密売する。その流れで世界各地の裏社会マーケットに、人類に制御可能なモンスターが少ない数だが流通した。倶楽部からすれば小遣い稼ぎ程度の活動だったが、俺達にとってはそれこそが肝だ!』

 

 ソフィアさんへの敬意をやはり強く示しながらも、サークルの目的は達せられたと強く告げる藤近。そしてそこに倶楽部さえも関与していたことに、聴取しているおまわりさんも気づくものがあったのか大声をあげる。

 そうだ、倶楽部だ。サークルはそもそもダンジョンコアを調達して倶楽部に流す役割も担っていた。構成員のなかにいる能力者にダンジョン探査を行わせていたんだ。

 

 そしてサークルからコアを得た倶楽部はそこでスレイブコアを精製。モンスターに与えることでスレイブモンスターとし、自分達やサークル、過激派と言った今回の騒動に関与した組織の尖兵とした。

 だが同時に僅かながら、そのスレイブモンスターを国内外に密輸していたこともすでに判明している。他ならぬ能力者犯罪捜査官コンビであるエリスさんと葵さんだってそもそも、その事件を追うなかで日本にやってきたわけだからね。

 

「ハッハッハー、そこで最初の事件に立ち返るかあ……そうだよ、今回の騒動の発端はそもそも裏社会に人力制御可能なモンスターが密輸されているって事件だからねえ」

「私や師匠はじめ、何人もの捜査官が虱潰しに密輸ルートを追うなかで浮かび上がったのが倶楽部……そしてそこの幹部だった青樹佐知でしたからねー。だから私達は来日したんですよはっはっはー!」

「……スレイブモンスターの密輸。倶楽部からすればそれは単なる資金調達に過ぎなかったが、サークルはそこに言外の意図を含めていたのだな」

 

 つながる犯罪の思惑。スレイブモンスター密輸事件はここに至るまでの事件における、前日譚というか端緒に過ぎない扱いに近かったが……実際倶楽部自体は軽い資金調達作業としてしか見ていなかったが、サークルにとってはそれこそが本懐を遂げるための一手だった。

 スレイブモンスターがあれば、非能力者でも能力者と肩を並べることができる。裏社会に向けて、そういったモノがあるというのと有用性を示すメッセージとしたんだな。

 

 言ってしまえば、スレイブモンスター密輸事件の時点でサークルの目的は半ば、達成していたと言えるのかもしれない。そう考えると以後のテロリズムやら俺達への反抗などにも、また別の見方ができてしまえる気はするな。

 同じ考えに至ったらしい、シャルロットさんがぽつりと見解を述べた。

 

「非能力者であっても入手できる、ステータスにも匹敵する人類の武器……スレイブモンスターをそう位置付けて、裏社会にその存在を示した。悪魔憑きについてもそうですが、認定式のあの大規模テロはいわば裏社会へのデモンストレーションだったのかもしれませんね」

「なるほどなァ? ウーロゴスはともかくAMWを温存していたのもそれなら分かるぜ。非能力者でもここまでやれるってのを見せつけてェための戦いに、スキルブーストジェネレータなんざ搭載してる能力者専用武装なんざ邪魔っけだろォしな」

「もしかしたらウーロゴスさえも非能力者が手にできる力の一種として見ていた可能性もありますねー。アレも結局概念存在の権能ですしー、利用の方向性としては悪魔憑きと大差ないでしょうしねー」

 

 認定式におけるテロリズムも、つまるところサークルによる悪魔憑きやスレイブモンスターのデモンストレーションだった。その可能性は大いにあり得るだろうし、シャーリヒッタやリーベも続けて同意している。

 あれだけの大事件、大混乱だ。当然裏社会だって注視していただろうし、そんな場面なら手にした力を見せつける絶好の機会と捉えるのはある種必然と言えるか。

 

 もし本当にそうした目的でやったというのなら、サークルは決して赦せないながらも、目的自体はきっちりと達成した形になる。

 全国どころか世界的にもニュースになるような騒動だったからね。そんな場面で探査者と渡り合う非能力者の存在が目立ったのなら……それをもって悪魔憑きやスレイブモンスターのデモンストレーションは成功したと言えるんだろうし、な。




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