攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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一々言葉選びだけは綺麗で高潔なんだよね、すごくない?

『認定式における戦い。マスコミも大勢いるなかで悪魔憑きとスレイブモンスターは、探査者達を相手に互角の戦いをしてみせた……十分だ。あまりにも十分な成果だ。これをもって表はともかく裏社会の、特定の連中は俺達のメッセージを正しく受け取ったことだろう』

『特定の連中? 誰のことを言っている』

『俺達と同じ、能力者中心社会を厭うている者達だよ。もっともそいつらの場合、単なる妬み嫉みで大ダンジョン時代を嫌うような連中が大半だろうが、まあ、サークルの構成員も割合そんなのが多かったしな。背に腹は代えられん』

 

 やり切った、成し遂げたと言わんばかりの満足げな面持ちでサークルの成果を語る藤近。

 実際問題、この男の真意や想定していた目的を聞いた今なら、それがあながち強がりでもないというのは嫌でも分かる話だ。

 

 悪魔憑きやスレイブモンスター。非能力者でも、能力者とある程度戦うことのできる力を能動的に得られる可能性そのもの。

 それを世界に向けて示唆したあの認定式の戦いは、もう一人の首謀者であるアレクサンドラの思惑とは別に、たしかに達せられてしまったと言えるのだろう。

 少なくとも裏社会には、サークルのメッセージを受け取った者もいると考えておいたほうが良さそうではある。

 

 さらに質が悪いのは、藤近自身はその力を手にする者がどのような思想であれ意に介してなさそうだということだ。

 誰彼構わず、危険思想を実現出来うる武力の存在をサークルは示してしまったんだ。だってのにこいつは、背に腹は代えられないの一言であっさりと流してしまっている。

 ロナルドさんが顔をしかめて、呆れた声色で反応していた。

 

「悪魔憑きだスレイブモンスターだってのはいまいちピンとこないけど……要は力さえあれば暴れてやりたいって思ってるような危ない連中に、手にしやすい力の存在を広めたってわけか。ふざけてるなこいつ、本当に質が悪い」

「呉越同舟、と言うのかな。たとえ思うところは別でありあるいは真逆であっても、目指すところが同じく大ダンジョン時代社会の打倒にあるというのならば構わないようだ。目的のためなら手段を選ばないとは、この男はあまりに危険過ぎる……!」

 

 サウダーデさんも続けて強い憤りと危機感を口にしている。それだけ藤近率いるサークルがやってしまったことは恐ろしいことで、つまりは裏社会に潜む危険思想の持ち主に希望を示してしまったということだ。

 特に、手にする者がいかなる思想の持ち主であれ、非能力者が能力者と肩を並べられるならそれで良いというのがあまりに厄介だな。

 

 これは本当に、サークルと言う組織が大ダンジョン時代を打倒するための先駆けの一矢となってしまったのかもしれない。

 組織そのものの志や掲げる大義はともかく、行動が招いた結果は今後も長く後を引く──ばかりか、大ダンジョン時代が終わった後の人類の在り方にまで大きな一石を投じてしまった可能性さえある。

 

 とはいえ、救いはある。サークルが広めた悪魔憑きやスレイブモンスターの存在については、その根幹にどうしても概念存在が絡んでいるということだ。

 それはすなわち現状、非能力者が力を得るにはどうにかして概念存在と接触して交渉を持ちかける必要があるわけだね。

 

 言い換えれば"神様や悪魔、妖精や妖怪を自分達の手で見つけ出せ"という話なわけで、大抵の者ではそんな空想、メルヘンやファンタジーじゃないんだからと鼻で笑うことが考えられる。

 藤近自身もその点は認識しているようで、一転して苦々しい表情を浮かべておまわりさんに自供しているのが見えた。

 

『……ま、惜しむらくは悪魔憑きにしろスレイブモンスターにしろ、肝心要の入手方法が概念存在頼りらしいということだがな。悪魔との契約により力を得ることも、スレイブコアの精製も概念存在の権能あってこそだ。非能力者が真に自力でスーパーパワーに到達するには、まだまだ道のりは険しいだろう』

『概念存在……神や悪魔といった超常存在か。そういった存在との接触法までは、裏社会に伝播していないと?』

『さすがになあ。俺達とてアドラメレクとやつが呼び寄せた悪魔達の協力がなければことは起こせていなかった。つまり受動的な、選ばれた者でなければ力を得られないという点ではそれこそステータスと変わらんのだ。ここについては今後、メッセージを受け継いだ者達が独自に概念存在と接触する方法を模索していくしかない。まあこれは後世への宿題、未来への遺産ってやつだな。ふはははははっ!!』

「ふざけたことを、こいつ……!」

 

 勝手なことをして、勝手な期待を後世に寄せて声を上げて笑う藤近に、愛知さんが激昂して立ち上がった。

 召喚スキル持ちのオペレータとして、誰よりも概念存在に触れてきた彼女ゆえに憤らざるを得ないのだろう。彼らを用いて秩序を乱すことに未来への希望とやらを見出したこの男を、彼女は本気で嫌悪しているように見えた。

 

 まあ、こちらとしては少しばかり助かる話だ。概念存在との接触法など、そうそう見つかるもんじゃないし。

 それこそ召喚スキル持ちに頼めばショートカットはできるかもだけど、概念存在的にはそんなことに手を貸してWSOや北欧神話圏に睨まれるのも現状、避けたいところだろうしな。

 

 うーむ、そう考えるとこないだのソフィアさんと織田との会談と俺を介した協力体制の構築は、ベストに近いものだったのかもしれない。

 裏社会が概念存在を利用しようと動く可能性が出てきた今、現世はもちろん概念領域にも網を張れるようになったからね。ことが起きる前に阻止するのに、非常に動きやすい形を偶然にも整えられたのは大きいはずだよ。




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