攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
濃厚な香り。なんならこの匂いだけでもご飯一杯くらいはいけそうなほどに暴力的なまでの旨味を感じさせる芳醇なタレがたっぷりと塗りたくられたうなぎの蒲焼。
もはや視覚的にもこれ以上ないほどに極上なそれを、一切れ白米とともに頬張る。瞬間、口に広がるのは分かりきった至福の甘辛さとコク、そしてうなぎ特有の弾力ある歯ごたえと染み出る旨味だ。
たまらん。ただもうひたすらにたまらん。
言葉も出ないほどに美味しい鰻重に、わずか一口だけで目が覚めるような感動を覚える俺に、脳内のアルマもまた、満ち足りたと言わんばかりの声音で語りかけてきた。
『素晴らしい……ああ、素晴らしい味と香りと食感だ、このハーモニーは完璧と言うに相応しい。いや完璧という言葉さえ表現するには足りないだろう。美食に触れる度、僕の心は感動に打ち震えるけれど今回のこれもまた別格だ。料理とは、ここまでの力を秘めているんだなあ……!』
何やら大仰なこと言ってるんだけど、まあ要するにすげえ美味しいマジ感動ってことで俺の抱いた感覚とそう大差はないだろう。
いや美味い、マジで美味しい。うなぎの蒲焼と白米ってなんでこんな合うんだろうな、マリアージュって言葉がピッタリだよ。出会うべくして出会った運命のうなぎとご飯だよ、もはや。
ともに食事をしている仲間のみなさんも、この味このクオリティには大満足のようで夢中になって鰻重を味わっている。
直前まで身勝手な人達の独自理論によるテロ正当化を延々聞かされていたもんだから、その落差もあって余計に感動しているんじゃないかな。
やっぱ疲れた時には美味いもん食ってぐっすり寝るのが一番だね! いや寝ないけども。
ここまで美味しいものいただいたら余韻混じりに昼寝すらしたくなるほどではあるけども、一応午後からもアレコレ取り調べはあるからね。
「美味しいですね……実家でも時折、うなぎをいただく機会は年に数回はありますがそれにも匹敵するお味です」
「香苗の家、相変わらずブルジョアよねー。うちもやろうと思えばやれるんだろうけど、なんでか割と慎ましやかな生活だったのよね。お婆ちゃんなんかもっと豪遊してても良いんでしょうに」
同じく鰻重を、品よく優雅に丁寧に食されている香苗さんが、お茶で喉を潤しナプキンで口元を軽く拭いつつつぶやいた。
この人の実家である御堂家はお隣の県においては名家さんってやつで、豪華な屋敷には何度かお邪魔させてもらったこともある。
パンピー山形くんの世界観とはまるで桁の違う裕福さだったもんで、そりゃそんないいとこの家なら年一と言わず年何回でも、食べたい時に気軽に鰻重だって食べられるんだろう。
そこにアンジェさんがこちらも、言動のラフさとは裏腹に綺麗な所作で鰻重を食べながらも反応していた。
元々香苗さんのひいおじいさんである御堂将太さんと、アンジェさんのおばあさんであるマリーさんが親交深い間柄だったようで、家ぐるみの付き合いを昔からされていたんだとか。
それもあってこちらのお二人もいわゆる幼馴染的な関係性らしく、大人として社会人として一定の距離を保ちつつもけれど時折、昔からの仲を伺わせるやり取りをしていたりするね。
さてそんなアンジェさんだけど、御実家のフランソワ家では御堂家ほどブルジョアな感じでもないみたいだ。
むしろS級探査者でWSO特別理事のマリーさん一族なんだから、こちらのほうがよっぽど裕福でもおかしくないんだけどな? と話を聞いていて思う。
するとそうした孫の疑問に、他ならぬマリーさん御本人が笑って答えてくれた。
「ファファファ! 若いねえアンジェは。香苗ちゃん家は親戚も大勢いる一族の本家だからね、格式ってやつにこだわる必要があるから余計に盛大にやってるんさね。うちはそんな必要ないから普通に暮らしてるんだよ、昔っから」
「そうなの? お母さんからは、うちも元々貴族の家だって聞いてるけど」
「ああ、まあね。今でもフランソワ家の本流ははちゃんと続いとるだろ? でも私ゃ末っ子だったし、何より探査者として世界各地を好き放題うろついとったからね。そんなことしてるうちに実家とも距離が離れて、まあ今じゃ付き合いも薄いんさね。たまーに、それこそ親戚の葬式とかで会うくらいかね」
「ふーん。ま、私も今のが気軽で良いわ。世界を股にかける能力者犯罪捜査官なんてのは、地元のお貴族様だとできやしないものね」
ほへー。いろいろあるんだな、マリーさんのお家も。
やはりパンピー山形くんにとってはなかなか貴重というか、馴染みのない話に興味を惹かれるよ。お貴族様ですって、日本じゃ今やあんまり聞かないし接しない階級の方々だよなあ。
元々、イギリスの貴族階級だったフランソワ家の末っ子。それがマリーさんなのか。それが探査者になって独立して、傍流的にアンジェさんまで続く"探査者フランソワ一族"につながっていったと。
そっちはそっちで初代はS級、三代目はA級なんだからこれまた名門だ。
人に歴史ありと言うけど、御堂家にしてもフランソワ家にしても一族とまで呼べる規模のお家は本当に歴史そのものみたいなもんだな。
こういうところ、俺ちゃんとしてはロマンを感じさせるよ。鰻重を頬張りつつも時の流れとかに想いを馳せちゃうよね。
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