攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
ウメーウメー! と騒ぐ以上にただひたすら美味しい……としみじみつぶやくようなお味の鰻重をいただいた俺ちゃん達。
なんなら俺も含めて少なくない数の仲間達がおかわりしちゃって、てんこ盛りあったお重もすっかりなくなっちゃったほどだ。マジで美味かったからね、仕方ないね。
「ごちそうさまでした! ……ハッハッハー、いやあ堪らない味だったねえ。来歴柄、世界各地津々浦々を延々と巡っちゃってるエリスさんとしても、日本だけは来る度まずグルメに思いを馳せるくらい食レベルが高いねー。ちなみに次点は温泉について」
「俺も毎年、盆と正月には東北にある母方の実家・風間家を訪ねていますが似たような感じです。他国や太平洋の食事とてもちろん美味しくありがたい恵みですが、さりとて食事や料理というものへの日本人のこだわりは他の追随を許さない」
「太平洋経済都市でも日本食ブームは長いこと続いてますしね。豪華客船まるまる一隻使った、ジャパンコンテンツ専用エリアもあるくらいですし」
「そんなに」
エリスさんやサウダーデさん、ロナルドさんも大変ご満悦のようで良かった、しきりに日本食の素晴らしさについて語ってくださるのが、この国に生まれた人間としては嬉しいやら誇らしいやらだよね。
特にロナルドさんが仰るには太平洋ダンジョン周辺に造られた太平洋経済都市においては、日本食ブームとかそもそも日本発のコンテンツブームとかが起きているようで……なんと豪華客船を一つまるごと、それ専用のエリアとしているそうなのだからスケールが違う。
太平洋のとある地点にぽっかり空いたダンジョンの大穴を囲うようにして、豪華客船が数百数千と連なり陸地めいた土地を人造した都市圏って話だから、そういう無茶もできちゃうんだろうか?
俺からすれば遠い海の向こうで、正直行く機会があるかって言われるとそんなにないんじゃないかな? ってなるんだけれど、こう話を聞くと興味は湧くよねえ。
「太平洋経済圏も、半世紀ほどの間にずいぶんと発展してみせた……山形公平、今すぐでなくともそのうちあなたにも一度、訪問してみてほしい場所の一つだな。特に太平洋ダンジョンはあなたが見れば、我々には未だ見えていない何かしら重大な発見があるかもしれない」
「たしかとんでもなくデケェ、エラーダンジョンって話だったなァ? 半世紀ほど前から探査してんのに、少しも底が見えてねえってことらしいがよォ」
「うむ。1000人近い探査者が100以上のパーティを組み、さらにそれが寄り集まっていくつかのクランまで形成して日夜探査に乗り出してくれているのだがどうにもな。ワタシ自身も経験したが発生モンスターも級の区別なくピンキリに出てきており、しかもごく短いサイクルでのリポップさえする。階層ごとにスケールも極めて大きい、あれこそは言うなればS級ダンジョンと言ったところだろうな」
話の流れで俺に向け、太平洋いいとこ一度はおいでと手招きするかのようにアピールをしてくるヴァールちゃん。そこに、何やら興味を惹かれたのかシャーリヒッタも話に混ざってきた。
通常のダンジョンとは規模も内容も仕様さえもまるで異なる超弩級巨大ダンジョン──発見されてから半世紀以上経つのに未だ踏破の目処も立たないそのダンジョンの最奥目掛けて、日夜サウダーデさんやロナルドさんのような腕利き達が大勢集い挑戦していると言う。
それほど大掛かりでかつ、特殊極まりないダンジョンなんだから一度、コマンドプロンプトたる私の目を通して因果周りを見てほしい。そんなところだろうな、ヴァールの真意は。
私で力になれるのならばもちろん喜んで協力するが、何であれ海外のことだから準備や段取りは要る。さすがに今年中にという話にはならないだろう、よくて高校卒業後なり成人後くらいだろうか?
そのくらいの頃で良ければ一度、赴かせていただきたい。
そんな感じのことを俺がハッキリ明言すると、ヴァールは無表情を軽い微笑みに変え、助かると会釈するのだった。
「あなたが来てくれるのならば非常に助かる……だが、その前にまずは目の前のことからだな、やはり。そろそろ取り調べ再開の時間だ」
「瀬川の野郎、ですね。次は」
そう言って室内の壁掛け時計を指差す。13時。ぼちぼち休憩も明けて本日3度目の取り調べが行われる頃合いだ。
3回目もサークル幹部だ……瀬川聡太。因縁深い神奈川さんがつぶやいたその男は、俺にとってもいろいろ思うところのある輩だ。
藤近功に感化され、悪魔セーレに魅了され、ひたすらにサークル最高戦力として暴れまわった男。しかしそこに、やつ自身の信念や正義から来るものがどれほどあったのか。
先に取り調べを行った二人が曲がりなりにも自身の信じるものに殉じていた印象があるなか、瀬川だけは明確に特にそんなものもなくただ、ただ何かに縋りついて寄りかかっていただけだった。
その結果がセーレからも見放される形になったのは、正味セーレのほうにも問題はあるけど……
総じて言うなら自分のない、借り物の思想で他者に迷惑をかけ続けた男。そう言うしかない者ではあった。
シャルロットさんがヴァールに問いかける。
「次でサークルからは最後になりますね。瀬川聡太……精神的に衰弱しているようですが、そもそも受け答えできるのですか?」
「そこについては問題ないと聞いている。衰弱というよりは軽い虚脱状態というか、自らの夢や理想を断たれて呆然としている状態に近いようだ。これは、アレクサンドラも同様だな」
肩をすくめて答える、その言葉には呆れも混じっているように俺には聞こえた。
やりたい放題やって、それが当たり前のように頓挫したら夢と理想を失ったと自失に陥っているのだ。
ヴァールからしてみればそりゃ、何をやってるんだこいつは? って感じだろうな瀬川にしてもアレクサンドラにしても。
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