攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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灰色の人生に禍々しき色彩を

 お昼になって、取り調べが再開される。モニターの向こうの部屋にはいよいよ、件の男がおまわりさんに連れられて入室していた。

 瀬川聡太。サークル幹部にして組織内における最高戦力だった男。悪魔セーレの権能によるバリアとAMWを振るっていた、けれど最終的には誰よりもすべてを失っていった印象さえ抱かせる男でもある。

 

『それではこれよりサークル幹部、瀬川聡太の取り調べを開始する。いかなる場合でも問われた質問にしっかりと、嘘偽りなく答えるように』

『…………はい…………』

『……まずは来歴から確認する。瀬川聡太、25歳。大学在籍時にカレッジサーチャーズにて探査者研究活動に注力した後、卒業してからは地元関西のスーパーでアルバイトをする傍らサークルに加入。その頃のサークルはすでに現在のテロ組織の形になっていたため、そのまま戦闘要員として活動。何か訂正箇所は?』

『…………ありません。すべて、そのとおりです…………』

 

 さっそく質疑が開始されたわけで、最初に来歴が確認されたんだけど。それよりやはり瀬川の様子がおかしいことが何より目に付く。

 生気がない、という表現がぴったり来る有り様だ。呆けたように脱力して薄ぼんやりしてるし、受け答えにも覇気がない。先二人の藤近や海方は元気すぎなくらいだったけど、こっちはこっちで今にも死にかねないくらいで不安な気持ちにさせられる。

 

 これが、今の瀬川か。心の拠り所をすべて失った末路としてはまあこんなものなのかもしれないが、にしてもなんともはや。

 年齢も先の二人よりはいくらか年下で、だから彼らほどにどこか腹を括った感じでもないのだろうか? アレはアレでちょっとは悪びれろって話ではあるんだけれど、この男ほどなんていうか、投げ遣りにはなってない感じだったものな。

 

「何、なんなのこいつ。嘘でしょ態度悪っ……」

「な、なんか、全部もうどうでも良いみたいな顔してるねアンジェちゃん……あんなに好き放題やっておいて、それでこんな……」

「シンプルに不貞腐れてんな、ガキかよこのあんちゃん。俺より年上なのが信じらんねえし、それで今この態度なのも信じられんぜ、こいつはよ」

『尊敬する藤近が捕まって、愛するセーレにも見限られて自暴自棄なのかな。これが何もしてない人なら可哀想だと思えたけど、瀬川だとちょっとね……』

 

 見ればアンジェさんやランレイさん、神奈川さんやステラといった過去、この男に手こずらされたチームが一番この姿に不信と疑念、何より苛立ちを覚えたような表情をしている。

 さもありなんだ、これまでどれだけ瀬川って男が罪を重ねてきたのかこの人達が一番よく知ってるんだもんな。

 

 特に神奈川さんとステラは単独でサークルと戦い続けた一年ほど、その間にもやつとの因縁を深めてきたから余計に思うところがあるんだろう。

 どこまでいっても悲劇のヒーローみたいに振る舞うテロリスト。借り物の無敵と正義と信念を剥がされた地金のまま、不貞腐れて拗ねるだけの男。

 そう捉えるのも当然の話だった。

 

『まずサークルに入った経緯を聞きたい。大学在籍中にカレチャに在籍していたが、藤近や海方とはその頃から? 資料によればあの二人は元よりOBだったようだが』

『…………ええ、まあ。あの人達が時々、カレチャに来て勧誘してきてたので』

『ふむ……なぜ、サークルに加入しようと思った』

『……功さんの、理想や大義をもってる姿が、カッコいいと思ったから。あと、大学を卒業してからの暮らしが、つまらなかったし……』

「えぇ……?」

 

 ちょっと待って、あまりの薄っぺらさに慄く。

 藤近がカッコよかったのと、大学卒業後の生活に退屈していたから。それだけの理由でこの男、当時すでにテロ屋に変貌していたサークルに入ったのか?

 

 いやまあ、それだって動機としては成立し得るだろうけど。その藤近や海方がそれなりに当人なりの思想を持っていたのに比べ、瀬川の動機はちょっとこう……刹那主義的というか。

 それは別にサークル入らなくても良かったんじゃないの? って気はするよね。それだけ藤近に憧れたところがあったのかもしれないけど、うーん。

 

『つまらなかった……その日暮らしで食いつないで、其の場凌ぎで毎日を生きて。同年代はみんな活躍して、なかには探査者になったりするやつもいて。僕には、何も与えられなかったのに』

『それで社会への鬱屈を募らせたのか。こんな退屈な世界をひっくり返してやりたかった、といったところか』

『……さあ? 最初はそうだったかもしれません。サークルに入って、戦闘訓練をするのは楽しかったし。昔に剣道はしてたんで、そういうのでいつか、目障りな連中を叩きのめしたいとは思ってましたかね……僕より輝いてるやつ、僕より人生を謳歌してるやつ、みんな僕と同じところまで来ればいい。ずっとそう思ってました。すぐに、変わっていきましたけど』

『ふーむ……』

 

 おまわりさんもどこか閉口しがちなのは、やはり瀬川の薄さと勝手さが突出しているからだろう。この男、いやほんと、怖いよここまで来ると。

 境遇については俺から何か言えることじゃないけど、それを受けての思考がもうヤバい。ナチュラルに自分より楽しそうな人なら誰でも不幸になれって思ってたらしいんだものな。

 

 ……ただ、本人も言うようにそれはサークルに入ってから変わっていったみたいだ。

 それは一つの出逢い。瀬川にとっては運命的な出逢いが、彼の灰色の人生を一気に色彩豊かなものに変貌せしめたのだ。

 

『すべてが変わったのは……やっぱり、セーレさんとの出逢いがきっかけでした』

 

 もっともその色彩とは、禍々しく偽りに満ちた毒の彩りだったんだけどもね。




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