攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ワルとしても期待外れだったライバル(最悪)

 自分達さえ満足できるなら、それで良いだけの集団。改めてそうした本質本音を露呈させたサークルの幹部、瀬川はしかし、そこで改めて表情を変えた。

 暗く、陰鬱な、虚無にも近しい死んだ瞳を浮かべたものへと変じさせたのだ。そして胸の内を語る。

 

『……けれどセーレさんには、結局見限られてしまいました。神奈川千尋とその背後霊、ステラとの最後の戦いのなかで、彼女の期待を裏切ってしまったんです』

『期待とは……なんだ?』

『僕が僕として、最期まで駆け抜けること、だったんじゃないかなと。たぶん、あの人は僕が敗れて死んだとしても、掲げた理想と大義に殉ずることを求めていた。僕は、それを裏切った。神奈川とステラの、不幸を望んで道連れにしようとした。アンドヴァリ様にまで頼み込んで、臨んだ最終決戦だったのに』

 

 あの決戦の、最終局面を語る。瀬川にとってそれは、セーレとの綺羅びやかで甘やかな日々の終わりでもあった。

 いやまあ、そんなもん最初から幻想でしかなかったのはもう明らかなんだけどね。最初からこいつに力を与えて、そして好き放題やって負けて死ぬところまでを期待してたのが悪魔セーレだもの。

 

 それが悪魔ってものなんだから俺としてはまあ、それはそうの一言なんだけど……ただ最後の場面、神奈川さんとステラをせめて不幸にしてやると叫んだ瀬川を速攻で見限ったムーヴはさすがにないわーって思うよ。

 とやかく言わんからさっさと概念領域に帰って、二度とその面見せるな! くらいは思っちゃったもの。なので直後に織田がやって来てあいつを捕らえたのも、実のところそこまで同情する気にはなれなかったりしてるよね。

 

 ただ、瀬川はそれでもセーレに対しては未練を引きずっているようだった。

 勝手に玩具にされて、勝手に飽きたからポイってされて、それでもまだあいつを想い。あまつさえ期待を裏切った自分が悪いと言っているのだ。

 

『セーレさんに報いるべきだった……! たとえ勝てなくても、僕だけが不幸で地獄だったとしても、それでも最期まで理想のために戦い果てるべきだった! ……裏切ったのは僕だ。だから彼女はそんな僕を見捨てた。これはそんな話でしかないんです。彼女は悪くない。悪いのはぜんぶ僕なんです。だから僕だけが不幸だし、僕だけが地獄に堕ちたんだ』

『……本当に不幸で地獄に陥ったのは、お前達の行いによって被害を被った人達だろう。そうは思えないのか、少しでも』

『重ねて言いますけど知りませんよ。僕らは僕らの進むべき道を進もうとしただけです。不幸になったのはその人の責任であって、僕らの行いの結果じゃない』

『勝手なことを……!』

『道を歩いていて、踏みつけるかもしれない蟻のことまで考えられません。被害者面しないでほしいですね、迷惑です』

 

 反省の弁……ただし、セーレを裏切ったことについてのみ。

 あくまでも根本的なところで自分達は正しい、間違っていないとする姿勢はなんら変化はないし、とりわけ自分こそがこの世の誰より不幸で地獄なのだと訴えたいのが丸分かりだ。

 これには取り調べを行っているおまわりさんも、思わず冷静だったのが嫌悪と怒りを口にしている。それにさえ最低な物言いで反論する瀬川は、俺の目から見ても醜悪で身勝手な生き物でしかない。

 

 つまるところエゴの塊だ。常に自己憐憫と自己正当化を図っているのがこの男の正体というところだろう。

 しかもこいつの場合、そこまでして保ちたい自分というものさえ藤近とセーレに依存しているのが余計に質が悪い。

 

 おそらくだけどこいつ、本当に都合が悪くなったら藤近もセーレさえも悪者にして一人、自分だけ可哀想なのだと言い出すはずだ。

 聞いていて都度、感じるんだよねそういうの。いかにも誰かのことを大事に思っているようでその実、本当に大事なのは"そんなふうに誰かを大事に思えている自分自身"なんだってさ。

 

「クズね。というか、ここまでのゲスだとも思ってなかったわ。千尋、あんた的にはどうなのこのへん?」

「俺に聞かれてもな。正直ビックリしてるぜ、理想と愛のためにだけは真摯な野郎かと思っていたんだけどな。これじゃ藤近はおろか、あの海方にすら遠く及ばねえんじゃねえか」

「小物のワルによくあるタイプですよこれ、はっはっはー! こんなのがあそこまで暴れてみせたんですから、なんともやるせないですねえ」

「本質的には自分のことしか考えていない男、か。藤近にしろ海方にしろそうした節はあったが、この瀬川聡太はまさに別格だな。事実上、何もかもを人のせいにして逃げているだけだぞ、これは」

 

 アンジェさん、神奈川さん、葵さんがそれぞれ呆れと怒りを顕に話すのを、ヴァールが総括して瀬川を評する。

 何もかもを人のせいにして逃げている──そうだな。そういう男なんだろう。物言いから嫌と言うほど、それは察せられる。

 

 今だって結局、訴えたいのは自分がいかに可哀想で不幸なのかってことだものな。セーレを裏切った云々なんて反省の弁さえ、逆説的に自分を憐れむための材料にしている始末。

 サークル構成員にもいろいろアレな連中はいたけど、それでもこいつに比べればまだまともだったかもしれない。

 そう思ってしまうよ。




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