攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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独り善がりに終わった男と、二人で一つから始める男

 本性というべきか、根底にある無責任さや他責性を露呈した瀬川に、俺ももちろんのこと仲間の誰もが呆れや怒りを隠さずにいる。

 ましてやこれまで面と向き合って戦ってきたアンジェさんやランレイさん、神奈川さんの三人は見るからに憤っているね。曲がりなりにも雌雄を決した相手が、まさか今さらになってここまで程度の低いことしか言わないとも思わなかったのかもしれない。

 

「元から敵だし、しょーもない輩だってのは念頭にあったけどね。それでもこれはひどいわよ。こんなふざけたバカに振り回されてたのね、私ら」

「蹴るにも値しなかった……元から。悪魔に取り憑かれてああなったわけでもなく、そもそも最初から瀬川聡太は、敵意を持つにもあたらなかったのだな……」

「情けねえ。この一年、死に物狂いで渡り合ってきた瀬川がこんな野郎だなんて。俺は、手前勝手な話だがこいつのことを超えるべき壁だとさえ思っていたんだ」

 

 嘆く御三方の、失望というか落胆が見ていても辛い。

 敵としてでもそれ相応に、筋の通った相手として瀬川と対峙していたのは明らかなこの人達だからこそ。モニター越しにひたすら自分は悪くない、自分は被害者だと言い張るような今の彼の姿は、まさに見るに堪えないという表現がピッタリと当て嵌まるんだろう。

 

 そんな落ち込む三人に、それぞれ身内や近しい仲間が慰めの言葉をかける。

 アンジェさんにはマリーさんが、ランレイさんにはリンちゃんが。そして神奈川さんには、同じ精霊知能としてリーベやシャーリヒッタが。

 それぞれ労いの声をかけたのだ。

 

「モンスターならともかく人間相手にしてりゃ、たまにゃこういう下らないやつの相手もするこたぁあるさね、アンジェ。かと思えばどっちが正義なんだか分かりゃしないような、一本気の通ったやつもいたりする。大事なのは相手に依らず、自分のスタンスを貫くことさ」

「お婆ちゃん……」

「姉ちゃん! 姉ちゃんは、ああいう人を蹴ることでその後ろにいる巨悪をも蹴り裂いた! シェンの本懐、まさしくそこにあり! 自信を持って、胸を張って! 蹴るべき相手、いつでも決めるのは自分自身ッ!!」

「リン……謝謝。そうだな、そのとおりだ」

 

 似たような経験をされたことも、長い探査者人生のなかであったりしたのだろう。経験則から来るアドバイスを孫に送るマリーさん。

 一方でリンちゃんもまた、星界拳としての同士であり正当継承者としての矜持をもって、誇り高い言葉で姉を励ましている。自分に誇りを持って前に進めと、二人とも異口同音にそう背中を押してくれている。

 

 そうだね……アンジェさん達はどんな相手であれ、自分達の使命を果たすべく動き果たしきった。

 今回の瀬川のような相手でも、逆に敵として相対するのが悔しく思うほどの立派な人物だったとしても。背負った使命を果たすべく邁進するなら、俺も、それが能力者犯罪捜査官として一番の正解だと思う。

 この人達は正しい道を歩んだんだ。

 

「敵がどうであれ、自分達の抱えた立場や事情によって私達は動いていくべきなんですよー神奈川くん。超えるべきと感じたのならそれがあなたにとっての真実で、それを超えられたのならそれがあなたにとっての正解なんですー」

「リーベさん……ですけど、俺はなんだか情けなくて。こんなつまらないやつをライバル視してた自分が、なんともはや」

「相手がつまらねーやつだからって、そいつを相手にしてた自分までつまらねーやつってことにゃならねえと思うぜ、神奈川。時にゃ相手する価値なんかねえ野郎にも、手を焼く必要があるのはオレらにだってあったことだ。瀬川の億倍くだらねー理由ですべてを食い散らかした餓鬼とかな」

「……シャーリヒッタさん」

『誰のこと言ってんだこの羽虫? は? なんかもしかして僕のこと指して舐めたこと吐かしてないか? はあ?』

 

 そしてリーベにシャーリヒッタもまた、神奈川さんを慰め励ましている。脳内アルマさんがなんかピキッてるけどそこは間違いなくお前のことなので黙っていてもろて。

 神奈川さんは特にこの一年、ステラとともにサークルを食い止め瀬川と戦ってきていた。だから余計に瀬川を高く見積もっていたところはあるんだろう。

 そんな相手の本性がこれでは、やるせなさを感じるのも無理からぬ話だ。

 

 けれど、やはり神奈川さんも立派に戦い抜いてくれて、その結果として今現在があるからね。そこはどうか誇ってほしいよ。

 今や彼と一つになった、ステラもまた……彼に寄り添う半透明の姿で、彼に抱きつき慰める。

 

『大切なのは誰を相手にしたかじゃなくて、何を成し遂げたかだよ、千尋。千尋は私と出逢い、偶然にも手にした聖剣でもって現世が荒らされるのを瀬戸際で食い止めた。それこそが千尋のすごさで素敵さで立派さなの。私は、そんな千尋と寄り添い一つになれたことをこの世のどんなことより自慢にできる』

「ステラ……」

『元気を出して、前を向いて。そうして一緒に歩いていくの。この世のどんな美しさも醜さも、受け止めていけるだけの強さがきっと私達にはあるから』

 

 最愛の、その言葉に込められた願いと祈り。いついつまでもともに、この世界のどんなものでも一緒に見て感じて生きたいという心。

 ステラはいつでも神奈川さん一筋で、だからこそその言葉と想いには説得力があるように思う。一途な気持ちを向けられた神奈川さんも、それに応えるように彼女を見つめる。

 

 瀬川には、独り善がりなあの男では決して至れなかった二人の姿だ。

 取り調べを終えて去っていくモニターの向こうの男に、俺だけはそっと──哀れみの視線を向けていた。




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