攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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(聖女の称号)そろそろ狩るか……♠

 過去、大ダンジョン時代を脅かしてきたワル達のそれぞれの在り方とかについてはさておいて。今この時、未だワルの取り調べは残っている。

 というか、ある意味こちらが本命だろう──言ってしまえば利用された側であるサークル三幹部に比べれば、こちらは明確に利用した側の二人なんだから。

 

 ダンジョン聖教過激派首魁、アレクサンドラ・ハイネン。あるいは火野アレクサンドラ。

 そして委員会に属している悪魔、アドラメレクのアバター体である新目玲玖。

 いよいよこの者達に事情を聞く段を迎えていた。

 

「まずはアレクサンドラからだな。新目……いやアドラメレクについては山形公平、ワタシ、後釜、そしてシャーリヒッタとミュトスが直接聞き出すとして、こちらについては」

「不肖ながら私が……アレクサンドラの師であるこの私、神谷美穂が取り調べに直接立ち会わせていただきます。師として、どうしてもそうしたいのです」

 

 ヴァールの確認に立ち上がり、意欲を見せる神谷さん。

 俺達システム領域側のモノがアドラメレクから直接事情を聞き出すつもりでいるのと同じで、アレクサンドラについては神谷さんが直接、取り調べ室に同席することは最初からの予定だったようだ。

 

 事実上、今回の騒動における黒幕に近い立ち位置だったアレクサンドラ。彼女の六代目聖女としての側面を語る上で、やはり師匠の神谷さんは切っても切れない因縁の仲だ。

 委員会側として悪辣に振る舞い、シャルロットさんに地獄を見せ続けた悪魔よりも悪魔のような女だけど、それでも神谷さんに対しては一定の敬意を見せていたのはこれまでの言動からも明らかだからね。

 そこを切り口にいろいろと聞き出せることがあるのならと、神谷さん御自身が率先して動いてくださったみたいだった。

 

「今度こそ彼女と向き合いたいのです。そして彼女にこれから待ち受ける罪償いの人生を、少しでも寄り添いながら見守っていきたい。誰もいない、どこにも行けないと嘆くあの子はそれでも大罪人ですが……私一人くらいは、そうしてあげたいのです。シャルロット様には、申しわけない話ですが……」

「……私のことはどうかお気になさらず、五代目様。私とアレクサンドラの因縁、私が抱くアレクサンドラへの憎悪は余人に関わるべきでないことです。御身は御身のことをお考えくださいませ」

「まことに、ありがたいお言葉です。やはりあなた様こそ、七代目聖女たるに相応しき御方」

 

 複雑な心境を語りつつ、誰よりもアレクサンドラの犠牲者となったシャルロットさんをも慮る。

 師としてアレクサンドラに寄り添いたいけれど、それをするにもやらかしたことがあまりに邪悪すぎて、しかもその対象がまさに今ここにいる七代目聖女なんだ。気にしないはずもない。

 

 しかしシャルロットさんは、凛とした眼差しでありながら柔らかく、温かな声で神谷さんを慰め励ました。地獄の苦痛から癒やされてから見せるようになった、どこまでも透き通る青空のような澄み渡る表情。

 艱難辛苦を乗り越えた者の顔と言うべきなんだろう。ひどく達観した大人の顔だ。いや大人だってこんな表情を浮かべる人はそう多くないと思う、そのくらい成熟した、悟りを開いたかのような透明な穏やかさ。

 

 ……この人こそやはり、ダンジョン聖教七代目聖女だ。自然とそう認識できる、表現しがたくも尊い振る舞いをしている。

 神谷さんも心からの賛辞を彼女に送り、だからこそと続けた。そう、だからこそアレクサンドラからは、あと一つだけやらねばならないことがあるのだ。

 俺は彼女に告げた。

 

「《聖女》称号の回収は取り調べの終わり間際か終了後、速やかに俺が出向いて直接行います。その際だけはシャルロットさんにも御足労いただきたいのですが、大丈夫でしょうか」

「もちろんです、山形さん」

 

 すぐさまうなずくシャルロットさん。そう、残る問題はあと一つ、アレクサンドラが持ち逃げしたままの《聖女》の称号だ。

 決戦後、すぐにあの女が連行されていったことで今に至るまでタイミングを逃していたけれど、そろそろ本来の持ち主、正当な継承権を持つ者に返していただかなければならない。

 

 そしてそれを仲介する役目は俺、山形公平が行うことにした。

 いや、厳密には精霊知能を召喚するスキル《風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING》の効果で喚び出す、称号担当の精霊知能に行ってもらうのだ。

 

 シャーリヒッタの《異分子処断権限》でもできないことはないんだけど、基本的にあの子のあのスキルは剥奪するのがメインだからね。

 付与するとなるとちょっと複雑なプロセスを経なければならないので、だったら正規の役割として称号管理を行う精霊知能に最初からおまかせするほうが良いとなったのである。

 

 このへんの話は予めヴァールから説明を受けていたんだろう、シャルロットさんはむしろ、俺に気遣わしげな視線を向けてきた。

 本当に優しい人だな……アレクサンドラにつけ狙われていた俺を、案じてくださっているのか。

 

「奪われたままのかの称号を取り戻すため、あなたのお手を煩わせることを申しわけなく思います。アレクサンドラにあれだけ敵視されていたあなたを、またあの女に関わらせることも」

「俺のことはなんだって良いんですよ。それより面と向かってまた、アレクサンドラと相対することになる、あなたのほうが心配です」

「それこそ問題ありません。これをもって私とアレクサンドラの、因縁の終着としてみせましょう。何より私とダンジョン聖教が、今一度前に進むために」

 

 力強く宣言するシャルロットさん。その言葉の通り、まさに今日これからの時をもってダンジョン聖教は訣別する。

 六代目アンドヴァリから七代目シャルロットへと、奪われた称号を取り返して改めてリスタートするんだ。

 そのための取り調べが、まもなく行われようとしていた。




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