攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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第四の取り調べ─ダンジョン聖教過激派首魁、六代目聖女─

 そして、取調室にその女は現れた。これまでの三人以上におまわりさんに取り囲まれているのは、スキルキャンセルの手錠をされていてもなお恐るべき戦闘力が予想されるS級探査者だったからなのだろう。

 アレクサンドラ・ハイネン。真の名を火野アレクサンドラ……ダンジョン聖教過激派の首魁にして事実上、今回の騒動における元凶とも言うべき女が、車椅子に乗ってやってきたのだ。

 

「アレクサンドラ……車椅子に乗っているのですね。救助された後、下半身が動かなくなったとは聞いていましたが」

「両足の不随。ならびに腰部から股間部にかけても感覚が鈍いようだ。上半身も往年の身体能力は失われており、S級としての戦闘力はもうないものと見て良い。また、手錠は一応しているがシャーリヒッタによる《異分子処断権限》でのステータス凍結は完全に機能している」

「つまり今、彼女は実質的に非能力者ってことだな。肉体の感覚の欠如については……やはりウーロゴスに魂をいくらか乗っ取られたまま剥がされたがゆえのものだろう。他はともかく両脚についてはおそらく、絶望的だ」

 

 心配そうに名を呼ぶ神谷さんに、ヴァールがアレクサンドラの容態を細かく説明していく。

 身体能力の著しい喪失。これは最終局面にてウーロゴスを過剰摂取した結果逆に権能に魂を一部乗っ取られ、そこから無事な部分だけを切り離したためだ。

 

 つまり魂レベルで肉体とのリンクが失われたことになるな。

 こうなると、断言するのも酷ではあるが……多少リンクが残っている他の部位はともかく、両脚についてはもう、いくら治療を施したりリハビリをしたとしても難しいと思われる。

 

 また、ウーロゴスが失われたことに伴いシャーリヒッタが彼女に施した《異分子処断権限》によるステータスの凍結封印も本来の形で発動している。

 彼女からこの世の因果を失わせる形で完全封印を回避させていたモノが取り除かれたんだ。これにより今のアレクサンドラはもう、身体の自由が一部利かない非能力者でしかない。

 見ていて心苦しさを禁じ得ない姿だけれど、これこそが彼女のやらかしたことに対する、ペナルティということだった。

 

『……………………取り調べ、さっさと始めないのですか? 早く終わらせて、私はもう眠りたいのですが』

『少し待っていただこう、六代目聖女アンドヴァリ。今回のあなたへの取り調べに際し、参加される方がもうじき来られる』

『どうせ別室でモニターしている何者かどもの一人でしょうに。チェーホワですか、それともシャイニング山形? ああ、エリス・モリガナという線もありますが……神谷先生の可能性もありえますね。さすがにシャルロットを私の前に出すのはあり得ないでしょう。私の命が危ないですし』

『……黙って、その方が来るのを待っているように』

 

 モニターの向こう、かつては聖女だったということでおまわりさんもそれなりに敬意を払い対応されているようだけど、だからこそ反面にアレクサンドラの態度の拙さが目につく。

 予想はしていたが自暴自棄といった様子だ。暗い顔、死んだ瞳で皮肉げに嗤う姿は自虐的にすら映る。

 

 手にした力、夢、理想をすべて否定され奪われては、やはりこうなってしまうのか。戦いのなかで見せていた力強さや自信、あるいは誇り高さなどはすっかり消え失せた卑屈な姿がそこに見えた。

 同情にも憐れみにも値しない姿だけれど、どうも調子を狂わされそうな光景ではある。車椅子に座って身体も不自由な様子からも、視覚的な面で痛々しさが印象に残るし。

 シャルロットさんが彼女を見て、静かにつぶやいた。

 

「油断と哀れみを誘う擬態か、はたまた本心から燃え尽きているのか。判別は現状つきませんが、いずれにしてもこの状態でも警戒だけは怠らないようにおねがいします、みなさま。ここからでも何かしら縋れるものがあるならば、この女は即座に本性を剥き出しにするでしょう」

「シャルロット……」

「であるならば、私がこれより赴くことで彼女の真意、内心をたしかめて参ります。そしてそれをもって彼女にまだ、一縷でも心に光があるのかどうかも。改心し贖罪の道を歩むことができる、余地があるのかどうかも。私がこの目で直接、調べたいと思います」

 

 これまでを思えば当たり前だけど、シャルロットさんは他の誰より何よりアレクサンドラを警戒している。

 今見せている弱々しさすら擬態であり演技であり、何か希望を見出せばすぐさま反抗しかねない危険さは健在だと断言しているのだ。

 

 正直、シャルロットさんだからこそのある意味での理解の深さだ。アレクサンドラによる虐待を受け続けてきた、明確な被害者だからこその説得力を伴っている。

 ゆえに何も言わず、俺達はモニターの女を見据える。そして神谷さんもまた立ち上がり、取り調べ室へと向かうべく足取りを進めた。

 

 師匠として見極めるために。罪を犯した弟子がまだ、更生し改心できる余地があるのかどうか。その心にまだ、欠片でも善性が残っているのかどうか。

 それをたしかめるためにも、彼女は直接出撃したのである。




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