攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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因縁、対面、そして召喚

 さっきまで仲間達といた、モニタールームから少し離れた部屋。そこにアレクサンドラと神谷さんはいる。

 その扉の前に俺とシャルロットさんは横並んで、しばしその場に立ったままだった。

 

 シャルロットさんにとっては不倶戴天の、因縁深い相手との再会になるだろう。

 気丈に振る舞う彼女だけれど、やはり思うところはあるのか少しばかり身体が強張っているように見える。

 

「シャルロットさん、俺も神谷さんも側にいます」

「……ありがとうございます。ですが大丈夫、私はきっと、アレクサンドラを乗り越えてみせます」

 

 顔を見合わせてうなずきあう。俺とそう変わらない女の子、小さく華奢な身体に誰よりも強い心を持つこの人ならきっと、暗い翳りともなっているかつての師匠だって超えていける。

 新しい人生を、生きていける。

 

 緊張の一瞬。

 軽く息を吐いて、俺はドアをノックして入室した。

 

「失礼します。ダンジョン聖教七代目聖女、シャルロット・モリガナさんをお連れしました」

「山形さん? ……それに、シャルロット様!」

「失礼いたします。取り調べもそろそろ終わりかと存じますので、我々は我々の成すべきことを成しに来ました」

「あなた方は……」

 

 突然入ってきた俺達に驚く神谷さん。おまわりさん達も同様だけど、こちらは軽く目を見開くに留まっている。

 元より予定としてあった俺達の取調室への訪問だが、タイミングについては頃合いを見計らってくらいの打ち合わせしかしてなかったもんな。

 

 とはいえシャルロットさんの言うように取り調べも終わりに近いようで、どことなくくたびれた雰囲気が室内には漂っていた。

 何より神谷さんの対面、車椅子に座っておまわりさん達に取り押さえられながらもこちらを見る女が、もはやうんざりしたような顔で出迎えてくれたからね。

 

「シャイニング山形……シャルロット……! 何を、しに」

「六代目聖女アンドヴァリ……アレクサンドラ・ハイネン。あるいは」

「火野アレクサンドラ。あなたに奪われていたものを、取り返しに来ました」

 

 いくつかの名があるけれど、やはりアレクサンドラと呼ぶべきなんだろう。ハイネンであれ火野であれ、この女を聖女としてでなく指し示す名はそれが一番分かりやすくしっくり来る。

 モニター越しにも見えた弱々しい姿。下半身は完全に魂の欠落が影響しているようで、これでは力も入らなければ感覚さえありはしないだろうことが俺の目から見てよく分かる。

 

 しかして気性はやはり健在のようだ。俺達を見るなり、苦々しくも憎々しげに睨みつけてくる。少なくとも反省はしてないよな、やっぱり。

 もはやなんの力も持たない以上、どうあがいても俺達を睨むしかできない女は、そしてさらに吐き捨てた。

 

「私が奪っていたもの? ……何を言い出すのやら。私が何を奪ったと? むしろ奪われた側ですよ私は。大ダンジョン時代によって、私の幸せはすべて奪われたんです」

「《聖女》。あなたが持ち逃げしたかの称号。どんな意図があれど私に七代目聖女を譲った時点でもはやその本来の持ち主はこの私、シャルロット・モリガナになります。返してもらいましょう」

「ああ……それですか。要ります? あんなの。聖女とは名ばかり、ボロボロの身体に鞭打ってどうにか私に逆らってみせただけの出来損ない人形風情が聖女だなんて。烏滸がましいんですよ、弁えなさい」

「その出来損ないの人形を始末しきれずに敗れた女が何を言うやら。憐れですよ、こうしてあなたは地べたから立ち上がれず、私は鳥籠を壊し蒼空へと舞い上がったのが今なのに、あなたは未だに気づかない。自分が地獄に落ちたことに、気付けない」

「翼を折るどころか引き千切ってやった。そんな飛べない鳥でしかないあなたに、どこまで羽ばたけるというのやら。うふふ……どうせすぐに墜落しますよ出来損ない。しょせん人形でしかない木偶が、喋らないでください」

 

 

 皮肉や嫌み、言葉の応酬。もはや師弟関係など表面上のことですらない完全なる罵り合いだ。

 怖ぁ……これバッチリモニターされてるの忘れてないか、どっちも? このままエスカレートしちゃって、いよいよどっちかがライン超えの発言でもしちゃったらそれはそれで大変だぞう。

 

 やんわりとシャルロットさんを押し留め、代わりに俺が受け答えることにする。

 まさかの開口一番にこれとは思わなかったが、こうなるとさっさと終わらせるに限るな。

 

「久しぶりだなアレクサンドラ。悪いんだけどあなたの主張を、最後まで聞いてやるつもりはこちらにはないよ。それは法廷とかでやってほしい」

「シャイニング山形……あなたがわざわざ出てきたということは、また何かわけの分からない権能を使うつもりですか? 懲りないですね。この世を掻き乱すことになんの躊躇いも罪悪感もないわけですか、エセカルトの自称救世主の分際で」

「さすがにあなたにだけは言われたくないよ、テロリスト──さっさと済ませるから、少しだけ我慢してくれ。《風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING》」

 

 俺に対しても変わらず悪態を吐くアレクサンドラ。けれどもう相手をする気にもなれないもんで、俺はさっそくスキルを使用した。

 精霊知能召喚スキル《風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING》。その効果でもって、称号担当の精霊知能を今、この場にて召喚する──!




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