攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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お試し負けイベント

 おぞましい嘲笑。未だ、俺にも三界機構とやらの詳細も、世界を食らったとかの事情も分かりやしないが。

 それでも端末が何か、恐ろしいことをした末の結果が、目の前にいる三体の化物であることくらいは推測できた。

 

「はははは──! ははは──は〜あ。まったく面白いね、君らは。ここまで諦めが悪いのも初めてだから、正直ね、好きだよ」

「貴様……っ」

「それに免じてってわけじゃないけどさ、ちょっと遊んであげようか」

 

 気分良くニコニコと笑う端末が、そんなことを言う。

 何だ? と、思う間もなく、やつは手をこちらに向けた。同時に、動き出す絶望的な化物、三つ。

 三体の三界機構が、こちらに向けて前進してきていた。

 

「た、戦うのか! 今、ここで!!」

「遊びだよ。殺しは、まあしないかも? 僕からのお試しバトルさ、あははは」

「お試し!?」

「君らがそんなに倒したがっている僕の本体はね、こいつらを越えていかないとお目にかかれないようになっている。だからさ、こいつらがどんなのか、試させてあげようってわけ」

 

 心底から楽しそうに言いやがって、こいつ、本気でどうかしているぞ!

 慌てて構える俺、香苗さん、ベナウィさん。リンちゃんも構えはするものの、覇気は薄い。さきほどの戦いで、文字通り力尽きたのだろう。

 というかヴァールもだけど、そもそも動いちゃいけないくらいの重傷だ。だから下がれと言うと、リンちゃん自身も自覚があったのか悔しげに、糸が切れたように片膝を突いた。

 

「くっ……はぁ、はぁ、ぐ、ぅ」

「んー? そこの威勢の良いお嬢さんは良いのかな? ここで何やらしてたのも、僕を倒すための何かだろ? そらそら、目の前にいるよ? 倒すべき僕が」

「っ」

「ノッてはいけませんよレディ。目の前の、あー、ボスモンスターが何を言おうと、あなたはもう戦闘不能です」

 

 煽ってくる端末に一瞬、憤怒の形相を浮かべるリンちゃんだけど。即座にベナウィさんに止められ、やはり悔しそうに俯いた。

 それで良い。こちらも悔しいけど今、この時は決戦の時じゃないはずだ。

 

 あまりに突然すぎるし、何よりマリーさんも、残る決戦スキルの持ち主だっていない。

 この状態では、勝てないんだな? リーベ。

 

『絶対に……無理ですね。やつに、できる限り情報を与えず、どうにかこの場から逃げるしかありません。やつはリーベの声は聞こえても公平さんの思考までは読めない。だから、リーベはここからは何も言いません』

 

 固く緊張しきった声音。リーベにとってもこの状況、極めてマズいものなんだなと分かる。このお喋りが沈黙する他ないなんて、普通なら槍でも降りそうなもんだよ。

 しかし、できる限り情報を与えずにこの場から逃げる、か。無理くね? 入口塞がれてるし、怪我人二人抱えてるし、何より向こうさんはもう、戦闘態勢だし。

 どうしたもんかと考えあぐねる。そんな俺に、端末は微笑んできた。

 

「精霊知能も匙を投げたね。可哀想なアドミニストレータ、君たちはいつでも切り捨てられる」

「……哀れに思うなら、帰ってもらえないもんかね」

「ふふ、それはイヤ。面白くないし。それにもしかしたら、ここで絶対的な力の差を見せたら、君が僕の元に来るかもしれないだろう? 我ながらグッドアイデアだね」

「バッドアイデアだよ。俺は、何があってもお前には付かない」

 

 きっぱりと言い切る俺に、やつはどうしてか酷く、傷付いたようだった。悲しげに眉を下げ、愁いの顔を見せる。

 ……どうしてこんなに気に入られている? そこがよく分からん。俺はやつにとって敵の尖兵、アドミニストレータなはずだ。

 優しくされただけで、ここまで執着するものなのか?

 

「強情だね、哀しいよ……君となら僕は、永遠を貪ることにも絶望を抱かずに済むのに。ひどい人」

「…………」

「だけど諦めないよ。僕は必ず君を手に入れる。そのためにもまずはここで、その心を折って絶望に浸そう──あは、躾けてあげる」

 

 花開くような可憐な笑みで、とんでもないことを言って。

 いよいよ端末は、こちらに向けて三界機構を差し向けてきた。

 にじり寄る三体の化物。ゆっくりだが確実に、今の俺では太刀打ちできなさそうな力の怪物たちが迫る。

 だが、諦めるわけには行かない!

 

「どうにか、道を開きます!」

「先攻は私が! 《光魔導》、プリズムコール・ジャベリンスロー!」

「では私も乗りかかりましょう。《極限極光魔法》、ライトレイ・アサルトスマッシャー」

 

 俺の号令と共に、絶望的な戦いが幕を開けた。

 香苗さんとベナウィがそれぞれ、自前の技を繰り出していく。香苗さんは虹を架けてそこからの槍射出、ベナウィさんは何の前触れもなく、掲げた右腕から極太のビームを放つ。

 

「ならば俺も! でりゃあぁぁぁっ!!」

 

 加えて俺も、衝撃波を放った。ソロ戦闘ではないが邪悪なる思念特攻が発動していて、かつそれを右手に集中させての一発だ。燃え上がる白熱が、火炎放射のように三界機構を直撃する。

 それぞれが必殺級の威力、たとえ倒せずとも少なくともダメージくらいは受けるだろう。

 そう、思っていたのだが。

 

「無駄だね……三界機構は、いやこの僕に纏わるすべては、何人たりとも傷付けられない」

 

 三界機構を傷付けるどころか、当たることさえ適わない。

 すべての攻撃が直前で、まさしく雲散霧消してしまっていた。

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